日蓮宗新聞
2012年10月20日号
宗務院で災害対策支部連絡会議
寺院は地域社会へ安心を与えることができるのか
災害時はもちろん、平常時にも寺院が社会に向けて安心を与えていける存在となりえるのか--東京都大田区の日蓮宗宗務院で10月9日、災害対策支部連絡会議が開かれた。全国74管区から災害対策支部長らが集まり、災害に対する備えなどが話し合われた。災害対策本部長を務める渡邊照敏宗務総長は「天災は忘れた頃にやってくるもの。大災害が起こった場合に備え、支部の強化を測り、日蓮宗の寺院が地域にあってよかったと思わせるような組織づくりをしなければならない」と述べた。
宗務院の橋本浩久福祉共済課長の災害対策実施要綱についての説明は、寺院の公益性の観点からも「まず地域住民への救援と支援を」との呼びかけから始まった。橋本課長によると東日本大震災前の平成22年の時点では45の管区で災害対策支部が結成されていなかったことを報告し、支部の有無が災害発生時の素早い情報収集活動や支援拠点の確保につながると述べた。また円滑な救援と支援のために支部独自の規程や規約の整備、地域性に応じた防災研修や講習の開催が必要との認識を示した。さらに事前対策として教区や近隣支部との協定や協力態勢の構築も不可欠とした。
他に大災害時に予想される帰宅困難者の支援や受け入れのために水、トイレの提供や一時滞在施設として客殿を開放できるように準備して社会に示すことが地域への安心を与えることになるのではと語った。
日蓮宗では各支部や寺院などでまとまった数の食料や水の備蓄を推進している。大規模災害発生時には、発生時から本格的な救援活動が始まるとされる4日目まで寺院などに避難してきた住民や檀信徒の食料や水3日分を隣接支部から被災当該支部に迅速に搬送する。4日目にはその他の支部からの救援物資が届く仕組みを想定している。東日本大震災でも寺院は多くの避難者を受け入れ、数十日をしのいだ。避難者をいかに早く飢えや寒さから守るのか。そのシステムを構築し、地域の住民に安心を与えることが、寺院の役割の一つと考えられる。
教区で相互支援の仕組みづくり
簡易無線の活用を推進
災害対策支部連絡会議では、被災地対策支部の緊急連絡対応なども紹介された。
現在、近畿教区は教区内の管区同士で阪神淡路大震災での経験や今後起こりうる可能性がある南海地震を想定し、どの災害でも対応しうる仕組みを話し合っている。報告を行った兵庫西部の大岩淸人所長は「相互支援の仕組みづくりは防災意識の向上にも繋がる」と述べ、連絡体制の強化を提案した。
また東京西部では、デジタル簡易無線を使っての通信手段の確保を目標に研究を行っている。東日本大震災発生時、電話回線がパンク状態となったことを受け簡易無線を導入。通信距離が短い等の問題もあるが、有線電話・携帯電話の補助としての役割に期待を寄せている。

2012年10月10日号
震災遺児支援へ募金活動を開始 同心会が協力呼びかけ
日蓮宗の宗政会派・同心会(小林順光会長)は東日本大震災支援事業として、震災遺児・孤児支援のための募金活動を開始、全国の寺院・教会・結社などに協力を呼びかけている。
同心会では東日本大震災で船を失った漁業者に対して行った船舶贈呈支援に続き、養育里親制度への支援を決定。公益法人・全国里親会を支援先とする募金活動をスタートさせた。全国の協力寺院・教会・結社に募金箱を設置し、本年末を1回目、来年3月末を2回目の締切としている。
あしなが育英会発表によると、被災地には父を亡くし母子家庭569世帯1,034人、母を亡くした父子世帯432世帯690人、両親ともに亡くした孤児241人がいるといわれ、現在も仮設住宅や親戚の家で不自由な生活を余儀なくされている。

何のための僧侶・お寺なのか 社会活動講習会
『地域社会とお寺の活性化コンペティション』からのアイディアを活用し、一般社会のニーズとお寺の現状との相違点を再確認するための「平成二十四年度社会活動講習会」が9月3日、東京・大田区の日蓮宗宗務院で開催され、僧侶寺庭婦人約50人が参加した。
講師に、寺社旅研究家の堀内克彦氏を招き「お寺を盛り上げる7つのアクション」というテーマで講演が行われた。
宿坊研究会の運営者として、これまでに3,000以上の寺社を訪れている堀内氏は「お寺は敷居も高く、行く目的がない」「お坊さんは怖い」など、一般の人が持つイメージを挙げ、それらを払拭させるために“今すべき七つのこと”を提示した。自身が足を運び、実際に見て、触れたものを例にあげ、これからのお寺像・僧侶像を語った。「お坊さんは、良くも悪くも注目される存在。それを上手く利用して欲しい」と語る堀内氏に、参加者の多くが深く頷いていた。
その後、「もっと社会に役立つ僧侶」をテーマに全員参加型のディスカッションが行われた。コーディネーターは高野誠鮮師(石川県妙法寺住職)。パネリストには堀内氏と、池田和嘉子氏(東京都玉川寺寺庭婦人)、小林将大氏(エアロノーツ株式会社社長)が加わった。高野師の質問に、参加者もイエス・ノーのカードを持って答え、会場全体で議論が飛び交った。
高野師の「僧侶に対して思うことは?」という質問に小林氏は、「こんなのんきでいいのかと思う」「世のサラリーマンは、生き残りをかけて働いている」と述べ、一般社会とお寺の意識の差を指摘。堀内氏も「組織の中のお坊さんではなく、それらを逸脱した存在であって欲しい」と社会の声を代弁した。
一般社会から期待される僧侶像を学ぶ好機となった本講習会。参加者からは「どこかに、僧侶としての奢りがあるのではないか。社会の一員であるということを再認識せねば」「何のための僧侶、お寺なのかを改めて考える機会となった」などの感想も寄せられ、これからを考える、有意義なものとなった。
