日蓮宗新聞
2024年1月20日号
能登半島地震で日蓮宗寺院数ヵ寺が倒壊
1月1日に能登半島で発生した地震により石川県珠洲市や輪島市を中心とした広い範囲で寺院檀信徒も甚大な被害を受けた。珠洲市妙珠寺では、前住職夫人の吉田満智子さんが倒壊した本堂の瓦礫の下から心肺停止の状態で発見された。同市本住寺は本堂庫裡のほか山門、水屋などすべてが倒壊。さらに輪島市妙相寺も本堂の屋根が堂内に落ちるなどの被害を受け、復旧が厳しい状態となった。珠洲市と輪島市の両市長の話から両市全域で被害が出ているといい、地元僧侶は「檀信徒の被害・犠牲が相当出ているのではないか」と心を痛めた。
石川県第2部管内での寺院被害は相当数報告されているが、詳細な全容は11日現在まだわかっていない。僧侶全員の無事は確認している。ほか主な被害は七尾市長壽寺の鐘楼倒壊をはじめ、多くの寺院での仏像仏具位牌の転倒、本堂庫裡の一部壁の崩落、墓石や石灯籠倒壊など。北陸教区の各管区からも被害の報告が届いている。
日蓮宗宗務院は、甚大かつ多数の被害の報告を受け、11日に大規模災害に指定し、あわせて「災害義援金」の勧募を決定した。災害義援金は全国宗務所内に置かれる各災害対策支部で各寺院教会結社と檀信徒の浄財をまとめた上で、宗務院が設定した口座への振り込みとなる。(※個別送金の場合【郵便振替】口座名=日蓮宗義援金、口座番号=00130―0―427422 ※振替手数料は本人負担)。
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東京都東部宗務所防災部は7、8日に七尾市の日蓮宗寺院に飲料水やブルーシートなどとともに東京都南部宗務所社会活動部からの毛布を届けた。
全国日蓮宗青年会も9日、宝達志水町妙法輪寺に簡易トイレなどの支援物資を運び入れた。全日青では今後の被災地での活動で使用する支援金の寄付の受付も始めた。復旧活動のみならず被災者のニーズを確認しながら、傾聴ボランティアなど心のケアも計画しているという。(支援金寄付についての問い合わせは35zennissei@gmai
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2024年1月1日号
すべてにいのちがある。慈しみの眼を
あけましておめでとうございます。
私たちが今こうしてお正月を迎えることができたのは、「いのち」があるからです。それは「私」の「いのち」があるからだけではありません。万物の「いのち」があるからこそ、「私」の「いのち」があり、今を迎えられるのです。
お正月にはおせち料理を食べます。私たちは「いただきます」といって野菜や肉、魚のいのちをいただいて新年を祝います。さらに、その野菜は農業に従事する人(いのち)が作ったいのちです。魚は漁業者が獲ってきたいのち。肉は畜産業者が育てたいのち。それらを運ぶ人、売る人、最後は料理する人。その人たちも同じように「いのち」の恩恵を受けて生きています。もちろん野菜や魚などもそうです。そしてその営みは祖先から続いています。そう考えると、数えきれないたくさんのいのちが関係して私がいることがわかります。
いのちは動植物など生き物に限ったものではありません。針供養や人形供養などがあるように、無機質なもののなかにも私たちはいのちを見出し、役目を終えた「物」に対しても畏敬の念をもって接してきました。箸や皿などすべてのものにもいのちがあるのです。私たちは「いのち」に対し、もっともっと関心を持たなくてはなりません。そして「私のいのち」だけではなく、「すべてのいのち」に慈しみの眼差しを向けていきましょう。
お釈迦さまは万物にいのちがあり、そのいのちのなかにある本質を私たちに伝えるために法華経を説かれました。法華経はいのちの教えでもあるのです。そのいのちの教えを弘めるご生涯を送られたのが日聖人です。日蓮聖人が建長5年(1253)に清澄山旭が森で昇る太陽に向かって唱えられた「南無妙法華経」。以来、多くのいのちによって伝えつながれ、そのバトンは今、私たちのいのちのなかにあります。
「南無妙法華経」に込められた日蓮聖人の思いの一部を意訳するならば、現在、日蓮宗が掲げている「いのちに合掌」となります。このすばらしい言葉を体現し、さらに誰かがまた体現してくれるように、伝え弘めていきましょう。