日蓮宗新聞
2008年12月20日号
本山本土寺貫首に沖鳳亨師
四季折々の花々が参拝者の心を和ませる本山本土寺(千葉県松戸市)の貫首に、沖鳳亨師(東京都台東区本覚寺前住職)の就任が決まり、11月19日、東京・池上の日蓮宗宗務院で小松浄慎宗務総長から辞令交付が行われた。
沖師は昭和6年生まれの77歳。立正大学仏教学部を卒業し、昭和48年から35年にわたり本覚寺の住職を務めた。
「あじさい寺」と親しまれ、約一万坪の寺域に春は桜、初夏はあじさい、菖蒲、秋は紅葉が咲き誇る本土寺は、年間を通して参拝者でにぎわい、テレビ中継でも取り上げられている花の名勝。天文学や写真撮影など幅広い知識を持つ沖貫首は、花への造詣も深く、特にスイセンに関しては多くの品種を有している。幼い頃に通った思い入れのある本土寺の貫首に就任し、「手探りのお勤めとなりますが、檀信徒が心からくつろげる寺院を目指したい」と抱負を語っている。
2008年12月10日号
「輪母の会」設立総会開く
女性の力で“いきいき生きる”社会をつくろう!――母の愛は、み仏の慈悲にも似た無償の愛。その慈悲心をもって輪となって安穏な社会づくりに行動を起こそうと、寺庭婦人を中心に女性が集い「輪母の会(古沢昭子代表)」が設立された。10月28日、東京都大田区の大本山池上本門寺(酒井日慈貫首=日蓮宗管長)で設立総会が開かれ、会の名付け親で総裁に就任した酒井貫首は「生まれながらに授けられておられる母親の無限な愛情をもって、世界の女性が手をつなぎ立ち上がったならば、必ず明るい明日がもどってくれるものに違いないと思います」と語った。
同会は、古沢代表をはじめ現代社会に不安を抱く女性が一年にわたって話し合いを重ね、設立に向け準備・呼びかけを進めてきた。
活動の基本は、仲間を増やして女性の生き方や考え方を学び、発信していくこと。特に、いじめや引きこもり、幼児虐待など、子どもを取り巻く社会環境が悪化の一途をたどる中、子どもたちが健全に安心して育っていける社会をつくるために、広い視点から家庭や家族のあり方、学校や社会のあり方に、提言や子育て支援の発信をしていきたいとしている。
設立総会には呼びかけに賛同した約40人が出席。会則が決議され、古沢代表をはじめ準備を進めてきた有志9人が運営委員として承認された。
古沢代表は「講演会やシンポジウム、相談事業などの活動を通して得た情報を、皆さまがそれぞれの活動分野、生活地域で情報のアンテナショップとなって発信していただきたい」と挨拶。初めて発信するテーマとして「命を大切に」を挙げ、子どもたちに“生まれてきてくれてありがとう”と出会えた喜びを伝える機会として、お釈迦さまの誕生日である花まつりに一輪の花を贈るプロジェクトを進めていくとを語った。
酒井貫首は「日蓮聖人も機会あるごとに女性の素晴らしさに触れておられます。『女人は男を財(たから)とし、男は女人をいのちとす』『矢の走る事は弓の力。雲の行くことは龍の力。男の仕業は女の力なり』『女人となる事は物に随って物を随える身なり』。その底知れぬ力を十分に発揮してください。会の発足に心の底から拍手を贈ります」と激励の言葉を述べた。
総会後、元衆議院議員の小野清子氏が「子育て、命の大切さ。今思うこと」と題して記念講演。自らの子育て体験とこれまでの社会活動を交え、女性の特性を生かした活動に助言を行った。
「輪母の会」への参加資格は女性であること。国籍・人種・政治・宗教・さらに既婚、未婚、年齢を問わず、共に活動する仲間を広く呼びかけている。
大本山清澄寺「檀信徒研修道場」
「旭が森から昇る朝日を見たときは感無量でした。日蓮聖人の御心に近づいたような気がします」――千葉県鴨川市の大本山清澄寺(中條令紹別当)の信育道場で「平成20年度第2回中央檀信徒研修道場」が10月28日から30日までの2泊3日で開催され、61歳から81歳までの男女7人が参加した。これは日蓮宗檀信徒研修道場、または教区檀信徒研修道場を修了した人が参加する道場で、年2回開催され、檀信徒が講師陣の細やかなサポートを受けながら先達修行に励む場となっている。
今回は第1回に続いて平野譲山師(静岡県法蔵寺住職)を主任講師、渡邊義俊師(熊本県妙國寺住職)を講師に法華経講義やご遺文講義、仏前作法や読誦行、書写行、唱題行などの行学の二道に励んだ。また2日目には旭が森からのご来光を拝し、「日蓮聖人がご覧になった日輪と同じ」と参加者一同、聖人の熱い思いに触れ、忘れられない思い出となったようだった。
講義では平野主任講師が三離れ(寺・葬式・墓)が進みつつある今、僧侶檀信徒共に危機感を持って取り組んで行くべきだと話し、「法華経の教えで世の中を安穏に、すべての人々を幸せにするお題目を弘めようというのが宗門運動。“私はどうするか”と考える人が増えていかなければならない」と、道場生に各々の信仰を伝えていく気概を持つよう呼びかけた。
また渡邊講師は慈・悲・喜・捨の四無量心をあげ、「仏さまは私たちの仏心が目覚めるよう四無量心の心で手を差し伸べています。それに気づくかは私たち次第」と述べ、お題目を唱えることで仏さまの心持ちを受けとめることができ、私たちも優しい気持ちとなって、仏性を目覚めさせることができると話した。
最終日の座談会では研修を振り返り、「若い人が増えて来ない、信仰の継承は大きな課題」「平日は休めない人が多いので土日を含めた開催を」と宗門や道場に対し問題提起する他、「何も分からなくて参加したが、この研修では先生方がマンツーマンで教えてくれ、一日一日、自分が変わっていったのを実感した」、「先生の指導のもとで勉強させて頂き良い経験をした。若い人に勧めていくのが私たちの責任」と、実りある道場であったことが伺われ、道場を支える講師陣の深い思いが反映された研修となった。
閉講式で平野主任講師は清澄という日蓮聖人の御報恩がこもった場所で修行ができたことは意義深いと話すと共に、道場生一人ひとりに言葉を贈り、渡邊講師が「地元に帰ってこの研修で刻まれたことを周りの人に熱く伝えていくことが、日蓮聖人のお心持ちに適う皆さんの使命です」と話し終了した。参加者は各々の場所で規範となるよう自覚を持って精進することを誓い、それぞれの地元へ帰っていた。