日蓮宗新聞
2022年11月20日号
加行所開設
令和2年からコロナ禍で休堂していた日蓮宗加行所が3年ぶりに千葉県市川市大本山法華経寺に開設され、11月1日に入行会が営まれた。加行所は、僧侶が日蓮宗の相伝の秘法「修法」の行儀を授かるための機関で、同日から2月10日までの寒壱百日間、水行・読経三昧を行う。今年度は6回以上の入行となる「参籠」から初めて入行する「初行」までの計116人が厳しい修行の門をくぐった。
例年、境内や入行会が営まれる祖師堂は見送りにきた寺族・檀信徒であふれる。今年度は新型コロナウイルス感染症対策のため、入行僧が10月30日から加行所に入ることや入行会の寺族・檀信徒の参列を不可にするなど対応を徹底したため、例年にない静かな同日となったが、入行会では入行僧が例年と同じく、100日間の決意を示す大音声の読経を響かせた。
挨拶で田中恵紳宗務総長は「一日千秋の思いで待っている寺族檀信徒がいることを忘れずに壱百日間の修行を乗り越え身心ともに成長してほしい」と述べ、「全員無事の成満」を心から願った。加行所伝主の新井日湛貫首は2月10日に再び全員に会うことを期待した。伝師の松宏泉師は入行僧に向けて「仏さまの遣いとして人びとを救う法師であるという自覚を持ち、仏さまの大きな慈悲と智慧をいただき、妙法経力を掴み取っていただきたい」と訓示した。
関係入行僧に会えないにもかかわらず九州から同寺にきたという檀信徒は「外まで聞こえてくる大きなお経を聞けただけで力をもらえた気がします。コロナ禍という大変ななかでの修行ですが、どうか無事に成満してほしい」と語った。

2022年11月1日号
万灯復活
■講中・参詣者待ちわびた東京都大本山池上本門寺お会式
東京都大田区大本山池上本門寺で第741回日蓮聖人お会式が営まれ、お逮夜の10月12日には大型台風の上陸や新型コロナウイルス感染予防の観点から3年間途絶えていた万灯練供養が行われた。境内は、復活した風物詩・万灯練供養を一目見ようと約3万人の人出で賑わった。日蓮聖人は弘安5年(1282)10月13日に池上の地でご入滅された。
池上の街中を練り歩くことは控えられたが、日が暮れるとともに総門から此経難持坂の石段を経て大堂(祖師堂)までを約60講中が次々と練供養して参拝した。威勢良く振りさばかれる纏と打ち鳴らすうちわ太鼓や鉦に先導された色とりどりの万灯を、たくさんの参拝者が見守った。
練供養に参加した講中の1人は「この日を待ちに待っていました。感無量です。日蓮聖人へのご報恩とともに、万灯練供養の復活のために心砕いてくれた池上本門寺や警備の人に感謝です。こんなにたくさん見守ってくれる人たちがいて、この日を待っていたのだと思うと、纏を振るのに力がこもりました」と笑顔を見せた。
木内隆志同寺執事長は「お会式に寄せる多くの人の思いを改めて感じました。皆さんの心を受け止め、来年は旧来の規模での万灯練供養を復活させたい」と話した。
前夜の賑やかな境内と打って変わった静けさで迎えた翌13日の午前7時。大堂は厳かな雰囲気に包まれた。福井清周師(石川県立像寺住職)が説教師として登壇し、日蓮聖人のご誕生からご入滅までのご一代記を語った後、菅野日彰貫首猊下を大導師に臨滅度時法要が営まれた。懇ろな法華経の読経の響きから再び静寂に戻り、ご入滅時刻と伝わる8時頃に菅野猊下が740年前の故事に倣い「臨滅度時の鐘」を打ち鳴らした。悲しみと報恩感謝が交じる鐘の音色を感じながら、参列者と出仕僧侶は頭を垂れた。
