日蓮宗新聞
2025年6月20日号
第30回法華経読誦施餓鬼法要
全国声明師会連合会は5月20日、第30回法華経読誦施餓鬼法要(併修=終戦80年追悼法要)を広島県廿日市市厳島・豊国神社千畳閣で営んだ。声明導師の上田尚教師や全国からの僧侶檀信徒約400人のほか、邦人・外国人のべ800人が参列するなか、導師の濱田壽教連合会長とともに出仕した声明師約110人が、声明の調べや法華経・お題目で平安からのさまざまな時代の戦没者や現代にいたるまでの諸精霊を供養した。
豊国神社は嚴島神社の末社。畳857枚分の広さであることから本殿は「千畳閣」と呼ばれている。豊臣秀吉が1587年、朝鮮出兵に関わる戦没将士を供養するために千部経を読誦しようと建立を発願したが、途中で没したため千畳閣は完成されずにいる。同連合会は1996年5月に千畳閣で初めての法要を行った。嚴島神社には一門の平安を祈った平清盛による法華経28品を含む、写経33巻が納経されていることや、秀吉の千僧供養が叶わず、法華経が読まれた記録が見られなかったことから、幾百万の精霊を供養するために同法要を始めたという。嚴島神社は同年12月に世界文化遺産に登録されている。
当日は、多くの観光客からスマートフォンのカメラを向けられるなか、雅楽の音を先頭に石鳥居から声明師の行道が出発。海に浮かぶ大鳥居を背景に千畳閣へ登った。檀信徒の和讃が響いた後、式衆が仏祖三宝と諸精霊を尊重する態度で入堂。厳粛な立ち振る舞いで営まれた法要では、堂内を行道しながら法華経読誦とともに散華供養すると、壁のない千畳閣のなかを吹き抜けていく風とともに華葩(散華)と音声も通り過ぎていった。
声明「対揚」では、対揚師の河﨑俊宏副会長とともに式衆が、より旋律的な調べを輪唱風に唱えると荘厳さが増し、参列者は日蓮宗の声明世界に浸った。
表白では濱田連合会長がご宝前に立ち、「三界は火宅のごとく、諸々の苦しみ充満し、瞬時止むことなし」とはじめ、人生における四苦八苦や三毒から仏道を成ずる難しさを説き、平安から現代までの諸精霊や太平洋戦争の戦没者に寄り添った。そして法華経を唱えることで「仏身を成就すること疑いなし」と語りかけた。
舞楽では下宮弘聖師(東京都延命院住職)が『胡飲酒』を披露。『胡飲酒』は胡国の人が酒で酔いながら舞った様子を表す舞で、諸精霊に奉納するとともに参列者も楽しませた。
法要は2時間におよんだが、誰一人として尊重と厳粛の態度を崩さず、荘厳な雰囲気のまま修了した。外国人を含む観光客には最初から最後まで法要を見守る人が多かった。たくさんの人を魅了したことは、より感応的な諸精霊への供養にもつながる法要だったことをうかがわせた。




















