日蓮宗新聞
2004年10月10日号
新たに「日蓮宗龍音寺」建立
埼玉県さいたま市に「日蓮宗龍音寺」が新たに建立され、9月8日、住職に就任した大澤妙温師に辞令が伝達された。
大澤師は昭和63年、悩みや苦しみを抱える人たちを救いながら法華経信仰へ導こうと出家得度。平成3年に日蓮宗龍温結社を設立し、信仰に縁のない多くの人を教化してきた。
常に視点を信徒の立場に置いて法を説くことに心を砕き、「縁のあった人が真実の教えに触れた悦びを得られるように」と願いを込めて、信行会を毎週土、日、月、火曜日の4日間実践。毎週のべ100人以上の信徒が参列し、信行会の後には朝がゆのおもてなしをしている。また信徒の信仰心が深まるようにと、日蓮聖人のご遺文を現代語に訳して分かりやすく法話。毎月発行している「説法」の配布は、今年で13年を迎える。
9月8日、東京・池上の日蓮宗宗務院で行われた辞令伝達式では岩間湛正宗務総長が「新寺建立が正式に承認され、法城が1ヵ寺増えたことは誠にありがたい。大変なご苦労をなされたと思いますが、ますます発展せしめるようご努力ご精進いただけることをお祈り申し上げます」と、大澤師に新寺建立承認書と住職承認書を手渡した。
念願の寺院建立を成就した大澤法尼は「一般の人がお寺に何を求めているのか、そして、それにどう答えていけるのか考え、“いらっしゃい”と手を広げて受け入れてあげられる、心のよりどころとなる現代のオアシスを目指したい」と抱負を語った。
2004年10月1日号
日蓮宗米国別院(ロサンゼルス)開創90周年慶讃大法要から
金井勝海師、次期北米開教区長へ
金井師は米国別院の第10代主任として1994年に就任以来、別院の護持丹精と現地での布教活動に専心してきた。法華経と日蓮聖人の教えを日本語と英語の二クラスで講義し、会報「蓮華」の発行、世界中に向けたインターネット布教などの信徒教化により、別院を支えるメンバーとサポーターの数は年々増加している。
金井師にとって今年は開教師生活40年の節目でもあり、米国別院90周年を記念した記録写真集と「説教集その四」を自費出版で刊行し、28日の晩餐会で配布した。
五十嵐顕城北米開教区長も談話を寄せる
90年前、ロサンゼルスに蒔かれたお題目の種が、私たちの先輩上人と信徒の皆さまによって育てられ、伝えられてきましたが、その間には、想像を絶する苦難があったと思います。この北米で法華経が未来永劫に布教されていくには、これからも人材作りが大切だと思われます。そういった中で金井先生を中心にして法燈を灯し続けていかれますことをお祈り申し上げます。
別院の存在、私たちに欠かせぬ
…信徒の声…
遠藤さん一家(ロス別院・4世代にわたる外護活動)
いつも家族一緒に来ます。一世の頃からカーネーションなどの栽培を家業としてきました。別院の存在は私たちには欠かせないもので、これからも金井先生をお助けしていきたいです
。
西原菊男さん(ロス別院・83歳)
アメリカ生まれです。石原慈禎上人(7代主任)の頃にサンデースクールと青年会の設立に携わりましたが、その頃は日米開戦直前で、信徒は皆、生活に追われていましたので、日系児童の教育と日系青年の楽しみの場を作りたいと考えました。外国にいるとなおさらに日本のことを思うものですが、昔は日本人街だった別院周辺も今はほとんど日系人は住んでいません。アメリカの日系人の精神文化が受け継がれていけばいいと願っています。
藤原鶴江さん(カナダ・トロント日蓮仏教会信徒・90歳)
バンクーバーの生まれです。昭和初期の荒川要博上人(トロント教会初代主任)の頃からの信徒で、昨年は身延山にお参りし、荒川上人の墓参もしてきました。最近の若い信徒さんは白人が多くなり、日系が減っているように感じます。
ドン・ロスさん(サンノゼ妙覚寺別院信徒)
家から五百マイル走ってサンノゼ別院の集会に参加しています。お寺では仲間に会える楽しさと精神的な落ち着きをいただけます。今日の法要はとてもすばらしく、伝統と正法を感じました。
本社主催「聞香安居」の集い
大堂(祖師堂)で早水日秀池上本門寺執事長を導師に法味言上のあと、講演、香席が開かれました。
「聞香安居」の香席は、日蓮聖人波木井の御影が奉安されている松涛の間で開かれました。
床の間には、秋の七草ススキやオミナエシ等をはじめ、うっすらと紅葉しはじめた灯台(どうだん)つつじが生けられ、慎ましやかに香筵が彩られました。
香木の選定は宗家自ら行い、香元の丸山堯雪師匠がお手前を披露。麻布十番・香雅堂のご主人、山田真裕氏が香席の説明をされました。
今回、選ばれた組香は、「白河香」。参会者のみなさまは聞香のため精神を集中し、真剣なまなざし。お宗家は、香席が和やかなムードになるよう気遣いをされていました。
それぞれの香を聞き、該当すると思われる香木の種類、銘を記入した後、お香元によって、それぞれ披露されます。
すべて聞き当てることができた方には聞香の記録「香の記」が記念にプレゼントされますが、今回は参加者のみなさまに贈られます。
良い香りが、松濤の間を包み、皆さまの心を満たした頃「香満ちました」との香元の声が静かに響き渡り、席入りされた皆さまの総礼で香席は終了しました。
最後に早水執事長からは、次のような謝辞を頂きました。「嗅覚だけでなく五感総てを動員してかすかな香りを聞き取る、豊かな時間を過ごすことが出来ました。これは人の心も同じこと。聞香安居の集いでは、粗雑になりながちな我々の日常を見直す良い機会を得られました」。
慌ただしく日々過ぎていく私たちの日常。自然によって生み出された香の不思議を聞き分けながら、皆さまの胸にはさまざまな思いが去来されたことでしょう。早水執事長の言葉は薫陶の言葉として響いてきました。
初の試みとなった聞香安居でしたが、参加者の皆さまにご好評をいただき、「次はいつ開催されるのですか」との質問も相次ぎました。日蓮宗新聞社では、来年、平成17年9月に開催を予定しております。
「お香」と「香道」の歴史説明 三條西堯水師
講演は香道の始祖御家流の第23代宗家、三條西堯水師が「お香」と「香道」の歴史や種類などを説明。
香の伝来としては、仏への供え香として鑑真和上が仏教の経典と共に日本にもたらした練り香をはじめ、『日本書紀』に推古三年に淡路島に漂着した香木を漁師が発見したとあります。
御家流にもつながる平安貴族の香を焚きしめる習慣から始まった香文化を解説されました。
参加者の関心を惹いていたのは、戦国の武将が権力と共に魅了された香木、黄熟香「蘭奢待(らんじゃたい)」の逸話。東大寺所蔵であった蘭奢待には、蘭は東、奢には大、待には寺の漢字が隠されているとの話も披露されました。
質疑応答では、入寺や落慶等の寺院慶事に贈答されることの多い「香木」の保管方法や、産出国の政情不安による今後の香木の入手の難易などが寄せられ、保管については高価だが「鉛の缶が適している」ことや、今後、良い香木は「入手しにいくくなるであろう」と話されました。