2004年10月1日号
本社主催「聞香安居」の集い
大堂(祖師堂)で早水日秀池上本門寺執事長を導師に法味言上のあと、講演、香席が開かれました。
「聞香安居」の香席は、日蓮聖人波木井の御影が奉安されている松涛の間で開かれました。
床の間には、秋の七草ススキやオミナエシ等をはじめ、うっすらと紅葉しはじめた灯台(どうだん)つつじが生けられ、慎ましやかに香筵が彩られました。
香木の選定は宗家自ら行い、香元の丸山堯雪師匠がお手前を披露。麻布十番・香雅堂のご主人、山田真裕氏が香席の説明をされました。
今回、選ばれた組香は、「白河香」。参会者のみなさまは聞香のため精神を集中し、真剣なまなざし。お宗家は、香席が和やかなムードになるよう気遣いをされていました。
それぞれの香を聞き、該当すると思われる香木の種類、銘を記入した後、お香元によって、それぞれ披露されます。
すべて聞き当てることができた方には聞香の記録「香の記」が記念にプレゼントされますが、今回は参加者のみなさまに贈られます。
良い香りが、松濤の間を包み、皆さまの心を満たした頃「香満ちました」との香元の声が静かに響き渡り、席入りされた皆さまの総礼で香席は終了しました。
最後に早水執事長からは、次のような謝辞を頂きました。「嗅覚だけでなく五感総てを動員してかすかな香りを聞き取る、豊かな時間を過ごすことが出来ました。これは人の心も同じこと。聞香安居の集いでは、粗雑になりながちな我々の日常を見直す良い機会を得られました」。
慌ただしく日々過ぎていく私たちの日常。自然によって生み出された香の不思議を聞き分けながら、皆さまの胸にはさまざまな思いが去来されたことでしょう。早水執事長の言葉は薫陶の言葉として響いてきました。
初の試みとなった聞香安居でしたが、参加者の皆さまにご好評をいただき、「次はいつ開催されるのですか」との質問も相次ぎました。日蓮宗新聞社では、来年、平成17年9月に開催を予定しております。
「お香」と「香道」の歴史説明 三條西堯水師
講演は香道の始祖御家流の第23代宗家、三條西堯水師が「お香」と「香道」の歴史や種類などを説明。
香の伝来としては、仏への供え香として鑑真和上が仏教の経典と共に日本にもたらした練り香をはじめ、『日本書紀』に推古三年に淡路島に漂着した香木を漁師が発見したとあります。
御家流にもつながる平安貴族の香を焚きしめる習慣から始まった香文化を解説されました。
参加者の関心を惹いていたのは、戦国の武将が権力と共に魅了された香木、黄熟香「蘭奢待(らんじゃたい)」の逸話。東大寺所蔵であった蘭奢待には、蘭は東、奢には大、待には寺の漢字が隠されているとの話も披露されました。
質疑応答では、入寺や落慶等の寺院慶事に贈答されることの多い「香木」の保管方法や、産出国の政情不安による今後の香木の入手の難易などが寄せられ、保管については高価だが「鉛の缶が適している」ことや、今後、良い香木は「入手しにいくくなるであろう」と話されました。