日蓮宗新聞

2024年9月10日号

秋のお彼岸

今年の秋のお彼岸は9月19日(木)から25日(水)です。秋分の日(9月22日【日】・祝日)を中心に前後3日間を含めた合計7日間がお彼岸期間となります。
この時期になると、彼岸花が咲いているのが見られます。名前の由来は、9月のお彼岸の頃に咲くことからきています。別名は曼珠沙華ともいい、サンスクリット語の音写で「赤い花」を意味するといわれています。『法華経』序品第一には、「是の時に天より曼陀羅華・摩訶曼陀羅華・曼殊沙華・摩訶曼殊沙華を雨らして仏の上、及び諸の大衆に散じ」と書かれています。天から法華経を説かれるお釈迦さまの上に、曼殊沙華など4種類の花が降り注いだと記されています。経文に登場する曼殊沙華は実際にどういう花かはナゾなのですが、昔の人は彼岸花を天上の花として曼珠沙華の名を与えました。咲き誇る「赤い花」に仏の世界を感じ取ったのかもしれません。
ちなみに彼岸花の花言葉は、「悲しい思い出」「情熱」「再会」「また逢う日を楽しみに」などだそうです。これもお彼岸の時期に咲くことから、故人との再会を願い先祖や故人を供養する象徴として親しまれてきたから、そういう花言葉がつけられたかもしれませんね。
彼岸は、サンスクリット語で「悟りの世界」を意味するパーラミター(波羅蜜多)の漢訳語「到彼岸」からきています。あの世(彼岸)とこの世(此岸)がもっとも近づくといわれるこの時期に、お墓参りはもちろん、到彼岸(悟り)を目指して六波羅蜜(布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧)の修行を行うとさらに良いとされます。
「布施」は他者への施し、親切な気持ちをもつこと、「持戒」は決まりを守ること、「忍辱」は困難に耐えること、「精進」は努力を続けること、「禅定」は心を落ち着かせること、「智慧」は物ごとを正しく見ることです。なんだか難しく聞こえますが、実は六波羅蜜は日常生活で少し意識するだけでできることばかりです。本来はお彼岸の時期だけでなく、いつもこれらを実践することが大事なのですが、せっかくのお彼岸という7日間の期間なのですから、とくに意識してみてください。
さて、彼岸花はこの時期に急に土から芽が出て茎を伸ばし花を咲かせます。その後、花が枯れ、細長い葉が現れます。この葉は冬から春にかけて光合成をしっかり行って、球根に栄養を蓄えると4月頃に役目を終えて枯れてしまいます。秋ごろまで地上には何も見られませんが、実は球根が開花に向けて花芽を発達させているのだそうです。私たちも光合成という六波羅蜜とお題目修行をして仏さまになるための栄養を蓄え、しっかりと花を咲かせましょう。

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