2023年9月10日号
秋のお彼岸
中道の教えを尊び
「かたよらない」
「こだわらない」生き方を
「ヒガンバナは赤い花ですか」
「白いヒガンバナもありますよ」
「どちらがきれいですか」
「赤には赤の美しさが、白には白の美しさがありますよ。厳密にいえば1つひとつの花でも、少しずつ色が違って、どれもみんなそれぞれきれいなんですよ」
ヒガンバナは漢字にすれば「彼岸花」です。地域差はありますが、秋のお彼岸の頃に花の盛りを迎えます。「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉があります。お彼岸のお中日は、太陽が真東から昇り、昼と夜の時間がほぼ同じになります。昼と夜が等分になる日、秋彼岸のお中日を境に夜の方が長くなっていきます。ですからお中日(秋分の日)はちょうど真ん中の日だともいえます。こういったことが、お釈迦さまが説かれた「中道」の教えと結びついて、日本で定着したのが「お彼岸」という仏教行事です。
「中道」とは「極端にならず、かたよった考えを持たず、相手の立場や思いに想像を巡らせ、冷静に判断しよう」ということです。世の中のすべてを知っている人などどこにもいません。どんな博学の人でも、知らないことはたくさんあります。人間はすべてかたよった知識の持ち主なのです。
ですから知らず知らずのうちに、かたよった価値観や論理からものごとの善悪などを決めつけてしまうところがあります。それを戒め、相反する双方の真ん中に立って、ものごとを判断するのが「中道」です。
中道とは一方にかたよらない柔軟な発想という立ち位置を指します。「かたよらない」は「こだわらない」と言い換えてみてもいいでしょう。例えば、LGBTQに向けてや、さまざまな差別がある社会において、「誰がどう」などとこだわらずに他の生き方を認めることが大事なことの1つです。私たちがいま立つべき位置は中道にあるのです。
秋のお彼岸は盛りを迎えたヒガンバナを愛でながら、かたよらない・こだわらない自分を磨いていきましょう。