鬼面仏心
2013年4月1日号
徳川慶喜ゆかりの高級料亭で会合と食事をする機会があった。通されたのは大きな池のある見事な庭に面した離れだった。玄関には初老の下足番の男性がいて脱いだ履物を手際よく片付けている。食事の途中で、京都から来ていた客の一人が早めに席を立ったので、玄関まで送りに行ったところ、その客の履物だけがきちんと揃えて沓脱ぎ石の上に置いてあった▼客の足下を数秒見ただけでその客が履いて来た靴がわかるのだと下足番の男性は言った。一見の客であっても脱いだときに確認しているのだそうだ▼玄人とはこういう人を言うのだろう。私たち僧侶にこれだけの意識があるだろうかと、我が身を振り返ってしまった。読経や所作を間違えてしまうことは時にはあるのではないか▼在京の本宗寺院でのことだ。某有名女優が施主となって法要を営んだとき、出仕した僧侶の一人が間違いをおかしたが法要は進められた。終わって控え室で休んでいると女優が抗議に来た。「私たちは毎回の舞台を真剣勝負でやっているんです。お坊さんは気楽でいいですね」▼恥ずかしい限りだ。人間のすることに間違いはつきものだが、仏事に携わる玄人としての自覚が足りていたかなと今更ながら自省する。(寮)

道に生きる「名」
神奈川県三部布教師会長
上谷 泰雅
「親からもらった名前があるんだから戒名なんかいらないよな」街中で葬儀の帰りらしき人たちからこんな会話が聞こえてきました。
今年一月、元横綱大鵬の納谷幸喜さんが亡くなりました。相撲史上最多となる32回の幕内優勝を成し遂げ「昭和の大横綱」とまで呼ばれました。師匠の二所ノ関からつけてもらった大鵬という四股名は納谷さんにとっては相撲力士としての戒名・法号だったのではないでしょうか。
土俵の中でも外でも昭和の大横綱として振舞った納谷さん。道を極めようとするなら覚悟が必要です。その道に生きる者にとって名前は覚悟の証、おおきな拠り所になります。
私たちは「お題目を身と心で唱え、成仏をめざし精進します」と覚悟し日蓮さまと約束したのです。手を合わせている時だけが仏弟子ではありません。「所作仏事」そのことを忘れないためにも今日も心からのお題目を唱えましょう。

植樹式
東京都大田区馬込に完成した立正大学付属立正中学校・高等学校(中原健次校長)で3月5日、内野日総総本山身延山久遠寺法主猊下による「しだれ桜植樹式」が営まれ、僧侶や関係者ら14人が参加した。
この桜は、身延山久遠寺境内にある樹齢四百年と伝わるしだれ桜の種子から育てられたもの。式では古河良●立正大学学園理事長が謝辞を述べ「この桜が毎年花開き、キャンパスを美しく彩ることを楽しみにしています」と挨拶。続いて内野法主猊下が植樹され「誠におめでとうございます。末長く、桜を可愛がってください」と話された。
式を終えた一行は、屋上へ案内され新校舎からの眺めを堪能した。発育途上にある生徒がのびのびと学習できるような環境の整備として建設された馬込キャンパスからは、北側に東京タワー、南側に同区大本山池上本門寺五重塔を望むことができる。内野法主猊下らは、広大な土地と生徒重視に設計された施設を視察した。最後に多目的ホールとして使用される「行学ホール」へと場所を移し、お題目を三唱した。充実した教育が期待できる真新しい校舎に、みな終始笑顔で完成を喜んだ。
今回植樹された桜は二本。新校舎で学ぶ生徒たちの成長を見守る。




















