2011年12月10日号
宮城県塩竃市で海施餓鬼会
3000枚の経木塔婆流し
大阪市正蓮寺(奥邨正寛住職)の大阪伝法川施餓鬼奉行会が主催し、東日本大震災殉難犠牲者慰霊と復興を祈願する「海施餓鬼会」が10月19日、宮城県塩竃市で営まれた。この法要には大阪市宗務所管内の僧侶が出仕し、宮城・福島・岩手の被災3県の宗務所長をはじめ有縁の僧侶檀信徒が多数駆け付けた。「正蓮寺の川施餓鬼」は享保年間から280年続くもので、大阪市の無形民俗文化財に指定される伝統行事。今回の「海施餓鬼」は「正蓮寺の川施餓鬼」にならった形で営まれた。
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大震災による津波で多くの尊いいのちが失われ、いまだに海から戻れない不明者が多数。そんな惨状に「正蓮寺の川施餓鬼の伝統を守る者として、被災地の海上で供養をしたい」と発心した奥邨住職。同寺総代会でその思いを語ったところ総代が賛同し全面的協力を快諾した。法要実現のための協力の輪は大阪市宗務所から宮城・福島・岩手の被災地宗務所に広がりこの日を迎えた。
塩釜港近くの料理店の広間に曼荼羅ご本尊を安置し、奥邨住職を導師に「海施餓鬼会」を厳修。終了後は松島観光遊覧船が発着するマリンゲート塩釜まで、大玄題旗を先頭に参列者全員で唱題錬り行列を行った。到着後は全員がチャーターした遊覧船に乗船し沖合の松島方面に向かった。
航行中には奥邨導師が多くの人の祈りが込められた一遍首題を海上に流した。続いて檀信徒がこの日のために大阪市と被災3県から募った約3000枚の経木塔婆流しを行った。多くの檀信徒が涙しながら、震災殉難者への供養や復興祈願などが記された水溶性の経木塔婆を悲しみの海に投じた。
その間、屋上デッキでは奥邨正道師(大阪市正蓮寺内)を修法導師に慰霊と復興祈願がなされた。修法師の力強い読経の声と木剣の響き、檀信徒の唱題の声は約1時間の航行の間、絶えることはなかった。
下船後、奥邨住職と鴻池総代がこの日までの経緯を話し関係者に謝辞を述べた。被災地を代表して宮城県宗務所長の日野教恵師が「海の底は真っ暗。今日のお題目と祈祷が光をもたらし、亡き人を霊山浄土へ導くものと確信します……」と話して声を詰まらせた。