2005年8月20日号
終戦60周年、世界立正平和を祈願
本年、終戦60周年という節目を迎え、此千鳥ヶ淵墓苑に於いて、今次大戦にて殉難せる諸霊位に追善供養の誠を捧げ、世界立正平和を祈願したことにより、教主釈尊が示された不殺生、アヒンサーの教えに基づいた、不戦の誓いを新たにした次第であります。
今日の世相に鑑みますと、政治・経済・社会・教育・環境の変化が、人々の意識に大きな変革を与え、毎日のように生命を軽視する殺傷事件を引き起こす時代となってしまいました。一方、国外に目を転じますと、民族・宗教の衝突による紛争・テロリズムが世界各地で頻発し、今、私たちは人類存亡の危機に至る分岐点に立っているといっても過言ではないのであります。
日蓮聖人は『立正安国論』に「徴前ニ顕レ、災後ニ致ス」と示され、人心の乱れにより、社会に、世の中に災いが起こると明かされました。この諌言を私たちは直視し、今の世にこそ正法である法華経に立脚した人類全体の安寧、「心の平和・社会の平和・世界の平和」を希求しなければならないと実感するものであります。
日蓮宗では、本年より平成21(2009)年の『立正安国論』奏進750年、平成33(2021)年のご降誕800年の慶年に向け、宗門運動「立正安国・お題目結縁運動」を提唱致しました。
この宗門運動は、日蓮聖人が生涯の基底とされた「立正安国」の精神と、法華経に説かれる「生命の絶対尊重」を基本理念とした信仰運動であり、社会の目線に合わせ現代が抱える諸問題にアプローチし、個人から社会・国土の安穏をもたらそうとするものであります。爰に、私たちは「立正安国・お題目結縁運動」を通じて立正安国・仏国土の顕現へと邁進することを誓う次第であります。
結びに、今次大戦で犠牲となりました全ての霊に供養を捧げ、お題目の種が下され、明るい未来が開かれんことを祈念し挨拶といたします。
平成17年8月15日
日蓮宗宗務総長 岩間 湛正
