2004年2月20日号
木立随学師が外務大臣表彰
米国オレゴン州ポートランド市在住の日蓮宗開教布教師、木立随学師(みのり会主任)が昨年七月、外務大臣表彰を受賞した。外務大臣表彰は、外務省が日本と諸外国間の友好親善関係の増進や国際協力の推進等に顕著な功績を納めた功労者に対して行っているもので、平成15年度は個人34人と十団体が受賞している。木立師の今回の受賞は、未知の土地で四十数年にわたり日蓮宗海外布教の最前線に立ち艱難辛苦してきたこれまでの苦労と活動が、地元住民に根付き浸透している証となった。
表彰は、木立師が日本語教育の普及、日米間の地域間交流の促進に大きく貢献したことに対して贈られたもので、昨年7月29日、長井忠ポートランド在駐日本国総領事から表彰状と記念の銀杯が木立師に伝達された。
青森県板柳町出身の木立師は昭和32年、23歳で単身14日間の貨物船で渡米。ポートランドで布教に務める傍ら、昭和38年、ルイス・アンド・クラーク大学に日本語講座を創設し主任教授に就任。また、ポートランドの他の三大学(ウィラメット大学・リンフィールド大学・ポートランド・コミュニティ大学)にも日本語講座を創設し、高等教育レベルでの日本語教育の普及、促進に努めた。平成8年にはルイス・アンド・クラーク大学の名誉教授号を授与されている。
また、木立師の出身地である青森県内の三町と米国オレゴン州・ワシントン州内の三市(板柳町とワシントン州ヤマキ市・鶴田町とオレゴン州フッドリバー市・岩木町とオレゴン州ミルウォーキー市)との姉妹都市交流の締結・発展に尽力。平成8年には青森県褒賞を受賞するとともに、青森県内三町からも褒賞が授与されている。
また、ポートランド美術館やオレゴン日本庭園、佳子夫人が設立し今年で34周年を迎える生け花草月流支部のアドバイザーを務め、それら諸機関の活動に適切な助言を与えるとともに、ルイス・アンド・クラーク大学で行われた人間国宝の狂言師野村万蔵・万作一行のポートランド公演の企画実現による日本文化の紹介・日本人学校補習校での日米比較文化論の講演など日米間の相互理解促進に貢献した。
宗内でも木立師の発案で昭和56年、日米青少年交流研修をスタートさせて以来、毎年夏期に日本と北米・ハワイを会場に中学生から20歳前後の宗門青少年が参加し、国際交流を深めている。
この度の受賞に際し、岩間湛正宗務総長から栄誉を称えるお祝いの電報が送られた。木立師の外務大臣表彰受賞は、ポートランド市では初で、他にオレゴン州ユージン市在住で夏目漱石の孫にあたる松岡陽子マックレイン・オレゴン大学名誉教授も受賞された。
木立師は受賞について、宮沢賢治の詩「まづもろともに、輝く宇宙の微塵となりて、無方の空に散らばろう」を掲げ、「外務省発表の平成15年7月8日はペリー浦賀来航150年の記念すべき年月日であり、不思議な歴史の邂逅を覚え、宗門海外布教師として四十数年前の渡米当初に思いをはせながら、過ぎたる受賞を慎んでお受けいたしました」と語っている。また、海外開教について「法華経は国際交流の社会を基盤として編纂成立しました。二処三会という法華経の壮大なビジョンは世界は一つである人類の展望に他なりません。日持上人の開教のロマンを教えてくれた津軽に生を受けた幸せをしみじみと感じ、もったいない感慨と法悦に咽びつつますます法華経のアメリカ的展開に精進をと覚悟を新たにいたしております」と語っている。
