日蓮宗新聞

2004年11月1日号

不登校とひきこもりの現状と対応

家族の危機、子どもたちの危機に対して、地域に密着する伝統仏教の立場から、何か有効な救済の手だてが打ち出せないか―と発足された、全国家庭児童相談室連絡協議会(楠山泰道会長)の総会と研修会が9月14日、東京品川区のゆうぽうとで行われ、全国各地から僧侶約40人が参加。昨年、組織改編がなされ日蓮宗社会教化事業協会の傘下になって初めての開催となった。
総会では社会的アピールと相談員同士の提携のためのホームページ立ち上げや、規約改正に伴う会費の徴収の仕方などが検討された。
研修会はNPO法人・東京シューレ代表の奥地圭子氏が自身の体験をもとに「不登校とひきこもりの現状と対応」と題して講演した。
不登校の原因は自分と学校との間にマイナスの要因(人間関係・いじめなど)があり、自分を守るための心理規制が働き、学校に行けなくなるケースが多いという。朝にお腹や頭が痛くなるなどの症状は心からのSOSで、親は“頑張って学校に行こうね”と言いがちだが、それが子どもにとって負担となっている。その子どもを受けとめるには、まず親が変わらなければならず、学校教育が全てではないことを理解し、子どもの心を尊重し、成長への援助をしていくべきだとした。
また、ひきこもりについては様々な症状があり、“安心”だと思える所には出て行けることが多いが、その心理を理解されないことが恐怖で、苦しいことだと述べた。周囲もこのような形で生を受け、生きていることを認め、理解しなければならないと話した。
奥地氏はフリースクール・東京シューレで子どもたちに対し「自由」「自治」「個の尊重」を掲げており、「子どもの声を聞きながら、何がその子にとって一番なのかを考えていくことが大切」と講義を結んだ。
その後の質疑応答で「家族への理解と支援をし、悩んでいるのは一人じゃない、間違っていないと教えていくべき」と話し、終了となった。
また前日に平成16年度社会福祉法人立正福祉会の全国基幹相談室室長会議が行われ、23人が出席。各相談室の現況報告では、運営上の問題点が上げられ、相談員として社会福祉法人格、または僧侶として宗教法人格で行うかが難しいとの意見が出された。また若い僧侶の育成と全管区開設への推進を図ることを決め、相談事業推進のため、全国家庭児童相談室連絡協議会への業務委託することが報告された。

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余震に恐怖と緊張の日々

新潟県中越地方を震源に23日発生した地震による被害者は死者23人、負傷者2千200人に達した(26日現在)。強い余震が続き、地元の住民は恐怖と緊張の日々を送っている。震度6強を連続して観測した同県小千谷市に1ヵ寺、震度五弱を観測した長岡市、柏崎市に合わせて20ヵ寺の日蓮宗寺院があり、各寺院で本堂に亀裂が入ったり、壁が剥落するなどの損壊、また、墓石倒壊や瓔珞落下、仏具散乱などの被害が相次いだ。

 小千谷市にある松涼寺(平山要秀代務住職)では墓石がすべて倒壊。本堂内の仏具や庫裡の家財道具が倒壊し、床一面に散乱した。
長岡市真成寺(武見潮裕住職)が激震に襲われた当時、留守を守っていた寺族が本堂を向いて一心にお題目をあげ揺れに耐えた。檀徒宅でお経をあげていた武見住職も自我偈をあげている途中だったが、最後までお経を読み続けた。夜は車中で朝になるのを待ったという。真成寺では開山・歴代の墓石や檀信徒の墓石のほとんどが落下やずれるなどした。また、本堂前と庭の灯籠が倒壊。壁が一部剥落した。
柏崎市実蔵寺(吉田存祐住職)では地震発生当時、夕食の支度に取りかかるところだった。当時住職は留守で、本堂のきしむ音を聞いた夫人が院首とともに外へ飛び出すと境内にそびえる松の大木が揺れていた。近所の住民とともに駐車場のまん中に毛布、座布団、段ボールを持ち込んで暖をとり、余震の恐怖に耐えた。
7月の新潟・福井豪雨で庫裡の2、3階部分と日蓮聖人銅像以外の建物をすべて流失した南蒲原郡妙栄寺(望月是範住職)では、23日午後6時3分の地震で震度五弱を観測。豪雨の際決壊した刈谷田川河川工事に伴う寺院移転について話し合いをする前日だった。「皆もう疲れきっています。何から始めてよいのか…」。望月住職はショックを隠しきれない様子で力なく語っていた。

被災状況の報告豪雨災害へ義援金
池浦新潟西部宗務所長

地震発生から2日後には、新潟県西部の池浦泰樹宗務所長が宗務院を訪れ、現地の被災状況を報告した。また所長自身も新潟での対応に追われる中、管内28ヵ寺から寄せられた7月の新潟・福井豪雨災害への義援金を寄託した。

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本宗関係・甚大な被害 台風23号

日本各地で悲鳴が上がっている。夏から秋にかけて発生した数々の大型台風は、各地に甚大な被害をもたらした。特に10月20日、高知県に上陸した23号は、全国で死者80人、行方不明者12人(23日現在)を出す平成で最悪の台風災害となった。「何から手を付けていいのか…」。足早に過ぎていった自然の猛威は、市民生活に驚愕と恐怖だけを置き去りにした。 日蓮宗の檀信徒・寺院における被害報告も各宗務所から東京の宗務院へ届けられ、宗務当局では、詳細な現状把握と今後の復旧についての迅速な対応を求められている。以下は各宗務所、日蓮宗新聞支局長・通信員からの情報をもとに構成した。

【山梨一】

南巨摩郡中富町 妙沢寺(代務住職・橋爪秀法円光寺住職談)
 裏山崖崩れにより、本堂全壊。20日夜9時頃、妙沢寺の近所の方が崩れる音を聞いた。翌朝駆けつけると、本堂の屋根だけが目の前にあった。庫裡には土砂が押し寄せいつ倒れてもおかしくない状況。お墓一基が土砂とともに押し流された。毎月行っている信行会開催の場所がなくなり困っている。近くの集会場を借りる予定だが、檀信徒の方のためにも出来る限りのことは尽くしていきたい。同様の被害が起こらないように対策を考えている。諸尊や仏具などが少しでも無事だと良いが…。
【京都一】
福知山市 妙福寺
(代務住職・伊東栄乘宗門史跡常照寺住職)
裏山からの土石流が山門から境内を埋めている状態。昨年完成した塀のお陰で一部の崩壊ですんだが、業者が手が一杯で作業はこれから。雨が降らなければいいのだが…。

【京都二】
舞鶴市西地区 妙法寺
(木村泰雅住職談)
お寺は高台に位置しているため、本堂の瓦が飛ばされ民家に被害を与えないか心配であった。いち早く動いた地元の消防団のお陰で、土石流に関しては民家には影響を与えずに済んだが、崖崩れの土砂が墓地に流出し、7基のお墓が崩壊した。長さ20mの杉の大木が墓地に倒れ、墓石が壊れるなどの被害があった。断水・停電したが、復旧した。テレビ報道の影響は大きく、静岡や山梨の方面から食料が届くなどのご支援を得た。
宮津市 本妙寺
(山口光生住職談)
檀徒さん2人(80代女性・30代女性)が亡くなった。80代女性は、土石流に家が流され死亡。30代女性は車で走行、帰宅途中に土石流に押されて、川へ転落。行方不明となっていたが、24日に釣り人に発見された。生後六ヵ月のお子さんを残しての出来事で、残されたご家族の心中を察するに余りある。これからお葬式を執り行うため出かけるところでした。床上浸水など檀信徒の被害は大きい。まだまだ心配なことばかりです。
【香川】
高松市妙法寺
(田中義正住職談)
新潟の地震の方が心配です…。近くを流れる春日川の決壊の影響で平屋の庫裡が床上浸水。本堂の瓦が20枚ほど剥落。23日午後に香川青年会の会員5人が手伝いに来てくれた。ゆっくりと作業を進めたい。大変なことも多いけれど命があれば何でもできます。

住職、泥水浸かりながら非難 日高町立光寺

 【兵庫北】宗務所管内では、10月22日の夕方から翌日未明にかけて多大な被害を受けた。特に豊岡市・出石町・日高町は円山川水系の河川の氾濫による水害が深刻で、日高町立光寺(堂前貫良住職)では、本堂・庫裡などが床上浸水し、境内の地面から約2m近くまで、反乱した川の泥水が押し寄せた。
堂前住職は、庫裡から檀信徒会館の2階へ避難する途中、本堂内で浮き上がった畳の上を泥水に浸かりながら避難した。
台風が通過して翌日には水が引いたため、各寺院の檀信徒をはじめ他寺院の僧侶もかけつけて、境内や建物の中にたまった泥やゴミの除去、水浸しになった家財道具や畳の運び出し、汚れた仏具などを水で洗い流すなど、後かたづけに追われた。
なお、管内の他の寺院や檀信徒の被害状況は次の通り。
豊岡市勝妙寺(河村瑞栄住職)本堂の建物の一部が損壊▽日高町妙光寺(清瀬一能住職)本堂の屋根瓦が一部損壊・庫裡の床下浸水▽出石町経王寺(三好能生住職)・和田山町覚性寺(清水隆城住職)墓地の一部が土砂崩れ▽和田山町妙法寺(五太子貫晃住職)檀家2軒が土砂崩れで住宅全壊、家屋損壊も1軒▽その他、豊岡市・出石町・日高町に在住の檀信徒の家屋の床上・床下浸水の被害は多数に及び、復旧作業に追われている。(三好通信員)

重文の本堂損傷 石川県妙成寺
台風16・18・22号のツメ跡

その他多くの寺院で、過去の台風による被害が報告されている。
台風16号では、石川県羽咋市の本山妙成寺(藤井日恵貫首)で重文の本堂の茅葺き屋根が一部破損した。さらに23号でも被害が増大し、宗門内にショックが広がっている。岡山や香川、大分、宮崎でも強風のため建物の屋根の瓦が飛ぶなどした。
多大な農作物被害をもたらした18号では、長崎で山門屋根が三分の一落下、聖人像の倒壊や倒木があり、大分県内の13ヵ寺や宮崎で雨漏りや瓦、ガラス破損などの被害が出た。北海道でも本堂の屋根が破損し、内部の壁が剥落、庫裡の屋根飛散など11ヵ寺で被害が出ている。
都心部を直撃した22号では、千葉県大本山清澄寺の研修会館地下が浸水し、静岡県の伊豆地方を中心に36ヵ寺で本堂・庫裡の瓦飛散、雨漏り、倒木、墓石倒壊、境内への土砂流入などが起きた。
日蓮宗寺院の被害状況が集約される、宗務院の総務部(垣本孝精部長)福祉共済課では現在、近年類を見ない慌ただしさにある。
今秋の台風は、7月に起きた新潟・福井での集中豪雨を受け、広く勧募を行い、自然災害について宗門としての対応策を煮詰めている最中に起きた。宗門では引き続き現状を見極め、人的支援など対応に追われることになる。
ここに日蓮宗寺院における主な被害状況を挙げたが、日本全国、一人ひとりが受けた心の痛みまで鑑みると、この被害も氷山の一角に過ぎない。日蓮宗の僧侶、檀信徒としていかに受け止め、どう行動すべきかが問われる事態と言えそうだ。

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