日蓮宗新聞

2023年5月1日号

佐渡ご出立750年法要

 新潟県佐渡市真浦の日蓮堂で日蓮聖人佐渡御出立750年ご正当報恩法要が3月14日、佐渡本山根本寺の竹中日貫首を導師に営まれた。真浦は750年前(文永11年)に佐渡流罪をご赦免となられた日蓮聖人が鎌倉に向けて船で出立された地。「剃ったはずの後ろ髪を引かれ、踏み出した足を戻したい気持ち」(『国府尼御前御書』)という聖人出立のお気持ちに、静岡県東部宗務所の団体参拝をはじめとする全国からの僧侶檀信徒約100人が思いを馳せ、お題目を唱えた。
 令和2年は聖人佐渡入国750年にあたり、根本寺で入三昧堂法要が営まれた。「750年の節目を迎え、改めて聖人を再びお迎えしよう」との旨趣から、「かつて佐渡に聖人がいらっしゃった」という事実を「今、聖人がいらっしゃる」という思いにしてきた。今回の法要はその締めくくりとなる。
■最後の謫居地妙照寺発つ
 真浦での法要に先立ち、聖人が佐渡の最後にいらっしゃった本山一谷妙照寺で鈴木日教貫首を導師に法味言上が行われた。妙照寺は一昨年の火災により数棟残し焼失しており、かつて茅葺きの本堂があった跡地に向かって読経した。1月に貫首に就任した鈴木師は「750年前に日蓮聖人が出発された時と今日、皆さんの前で始めて導師として法味言上できたことは、聖人ご出立後の妙照寺の留守を託されたように感じた」と復興への決意を固めた。また同寺総代長の矢邉政廣さんは「全国から妙照寺に参拝いただき、勇気づけられた。皆さまの協力を得ながら復興を成し遂げたい」と話した。
■渋手から真浦日蓮堂へ
 聖人が佐渡の人びととお別れになられたことを伝える1つ、豊田の渋手霊蹟碑前で一読を行った後、真浦の日蓮堂で法要が営まれた。日蓮堂は聖人が一晩過ごされたという日蓮洞窟の山側に建立されている。堂内や祖師像、厨子などの修復が必要だったことから、今回の750年を機に竹中師や日蓮堂を管理する舟元・永井学さん、静岡県の木内桓道師、山梨県の望月浄教師を中心に日蓮堂復興会を立ち上げ、本山会など多くの協力で整備が終了し、当日を迎えた。聖人ご出立の船頭の子孫と伝えられる永井さんは「昭和11年以来手つかずだった尊像などが身延山で修復されたことは、何ものにも代えがたい」と喜びを噛み締め、「この縁を大切にして護持に努めていきたい」と謝意を表した。竹中師は表敬告白を読み上げる途中、約3年間の給仕に思いを致し、「当時の聖人と人びとの思いを感じたいと多くの人が真浦に集った。鎌倉まで無事に着くことを祈念し続ける」と述べると思わず言葉をつまらせた。
■全員でお見送り
 最後に、真浦の津に建立されている波題目の石碑から聖人ご出立の故事に由来する歌題目「七遍返し」が流れるなか、船から水溶性紙灯籠と玄題旗を立てた佐渡名物たらい舟を洋上に浮かばせた。参加者は海岸から名残り惜しく合掌して見送り、お帰りの順を追ったドラマのような日蓮聖人佐渡ご出立750年が幕を閉じた。竹中師は「静岡東部さんが製作した紙灯籠の供養をはじめ、多くの人たちや仲間の協力を得て無事に日蓮聖人をお見送りすることができた。約3年前に聖人を改めてお迎えし、本日を目標に給仕してきた。しかし、もう聖人がいらっしゃらないということではなく、また心新たに給仕していかなければならない気持ちしかない」と話した。

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