日蓮宗新聞

2023年4月1日号

東日本大震災第13回忌迎える

 3月11日に東日本大震災の第13回忌を迎え被災各地で法要などが行われた。檀信徒164人の犠牲者が出た岩手県大槌町蓮乗寺では、同県青年会を中心とした慰霊法要実行委員会が逮夜にあたる10日に慰霊のためのキャンドルナイトを開催した。青年僧侶の東是宏師は、「震災への思いを風化させないために、尊いいのちを落とされたすべての人たちに手を合わせ続けたい」と述べた。1000個用意されたキャンドルは強風で火が消えていったが、青年僧や同寺檀信徒らは東師の言葉を体現するように諦めずに点火し、闇夜に「ガンバレ東北」の文字を浮かび上がらせ続けた。
 同県の釜石仏教会は11日、釜石市大平墓地公園の納骨堂で慰霊法要を営んだ。同納骨堂には、同市仙寿院に5年前まで預けられていた身元不明の遺骨が納められている。月命日に参拝を続ける同院寺族の芝﨑瞳さんは「1日も早く家族の元に戻ってほしい。ここは本当の場所じゃない」と今も寄り添う。
 釜石市長らが焼香した後、導師を務めた同院住職の芝﨑惠應師は挨拶に立ち、「〝亡くなった人の苦しみを忘れず、そして安心して住める町づくりをする人たちへの感謝の心を忘れずに、今生きている人は幸せになってほしい〟。それがここに眠っている身元不明者の気持ちだと思います」と伝えた。
 引き続き、檀信徒約60人の犠牲が出た同院で遺族約100人が参列するなか第13回忌法要が営まれた。法要前にはひさびさに会う親族同士が無事を確認するように笑顔を見せる姿もあった。
 芝﨑師は「人の命は儚くて、夢の如くに過ぎゆきぬ。永遠の別れの悲しみを何によりてか、なぐさめん」と追悼文で犠牲者と遺族に寄り添うと、それを受けるかのように参列者は懇ろに焼香を手向けた。法要後、芝﨑師は「悲しみだけでは亡くなった家族が心配する。元気な姿を見せてあげてほしい。きっと安心してくれる」と悲しみと苦しみを気遣った。
 亡くした妻のために散華を拾っていた男性は「あの時、自宅にいれば助けられたかもしれないと思う頻度は減った。今は、いつも妻から小言を言われていたように、なにかするとまた言われるんだろうなと考えてしまう」と話した。
■蓮乗寺は青年僧が出仕
 蓮乗寺では、慰霊法要実行委員会主催の法要が遺族のほか、総本山身延山久遠寺の浜島典彦副総務や阿部是秀岩手県宗務所長らが参列して営まれた。木藤養顕住職を導師に出仕した東師ら青年僧が同寺犠牲檀信徒含む全犠牲者へ読経と唱題を捧げ、また浜島副総務が内野日総久遠寺法主猊下からの追悼のお言葉を読み上げた。
 法要後、木藤師がともに読経をした僧侶に謝意を表し、「12年前が昨日のように思える。毎日、震災に関したことが頭に思い浮かぶ。今日もご回向で犠牲になった蓮乗寺の檀信徒の顔を思い出したが、本当に言葉につまるものがある。だけれども私たちは生きていかなければならない。そういった悲しみを生きる力に変えていってほしい」と話した。
 大槌町に響く地震が発生した14時46分のサイレンを合図に、参列者は境内から海に向かって自我偈とお題目を犠牲者に捧げた。
 同寺檀信徒の鈴木新一さん(82)は、母と弟、義弟、義妹の4人を亡くした。今も母と義弟が行方不明だという。「諦めたくない。本当は海岸に近寄りたくないが、たまに砂をかき分けて探してしまう。お墓に遺骨がなくやりきれない」と悔しさをにじませた。
■祈りのパークに灯籠
 釜石市鵜住居の市が運営する釜石祈りのパークでは釜石仏教会が同市犠牲者数と同数の1046基の灯籠をともした。子どもたちのバイオリンによる音楽が流れるなか、市民らが「忘れない」と言葉を表した灯籠の前で焼香した。灯籠の準備をした仙寿院檀信徒の1人は「初めて息子の妻と孫が灯籠を設置する手伝いをしてくれた。12年経って、防災意識さえ忘れさられている状況を何とかしたいという想いを持ってくれたからだと思う。それが生き残った者の役割。つなげていきたい」と語った。

 宮城県宗務所は3月6日、東日本大震災第13回忌慰霊法要を石巻市久円寺で行い、導師を務めた日野教恵所長とともに参列した僧侶檀信徒ら約60人が犠牲者へ祈りを捧げた。
 日野所長が「犠牲者の精霊を思い、読誦・唱題で速やかに霊山浄土へ導かん」と回向すると、会場からはすすり泣く声が漏れた。また挨拶に立ち、「経験した震災の教訓は我々の責務として後世へ伝えていく使命があります。震災の記憶を風化させないためにも、供養を続けなければなりません」と述べた。参列した総本山身延山久遠寺の小澤惠修庶務部長は内野日総法主猊下からのお言葉を代読し、「震災を風化させることなく、亡き人を偲ぶため皆さまとともに、祖山身延山から祈りを捧げます」と伝えた。久円寺の谷川海正住職は震災当時、多くの犠牲者を葬儀で送り続けてきたことを思い返し、「悲しいときもうれしいときも、さまざまな場面で供養のために手を合わせ続けていきます」と挨拶した。
 当時、小学4年生だった寺族の瑞華さん(22)は「ほんの数分、母の迎えが遅ければ、避難できくなっていました。命の大切さを知り、感謝の気持ちで毎日を過ごしています。石巻も昔のように元気になって欲しい」と話した。同寺檀徒の阿部利津子さん(76)と鈴木あきこさん(75)は市内でも被害が大きかった上釜地区で震災にあった。阿部さんは、自宅の天井近くまで上がった水から逃れるために押し入れの天袋に入り込み、3日間、救助を待ち続けた。「ありったけの声で助けてと叫び、お題目も唱え続けました」と当時を振り返った。また鈴木さんは、「隣近所に避難するよう声をかけたみんなが津波で亡くなってしまいました。その人たちの携帯番号は未だに消せません」と声を詰まらせた。2人は「今こうして元気でいます。お寺で励まされ、全国の皆さまからの支援のおかげで生かされ、本当にありがたく思います」と口をそろえた。震災時、避難所として被災者を受け入れた同市法音寺の谷川海明師は「供養も生きていないとできません。亡くなった人の分まで元気で健康で人生を生きる気持ちで皆さん頑張っています」と話した。

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