日蓮宗新聞
2022年6月1日号
中山法華経寺・祖師堂屋根の修復始まる
3月から始められている千葉県市川市大本山法華経寺の国重要文化財祖師堂保存修理事業に関して文化庁の現場視察が5月11日に行われた。今回の修理は杮葺き屋根の葺き替えと耐震工事が主となる。
祖師堂は観応2年(1351)に御影堂として建立されたことが初見だが、現在の建物は延宝6年(1678)に上棟された。比翼入母屋造(屋根上部が前後に2方向への勾配を持ち、下部は前後左右の4方向への勾配を持つ入母屋造の2棟を1棟に結合した建築様式)で3段の錣葺(屋根上部と下部の角度が一続きではない屋根)だが、当初は2段で珍しい形式だった。桁行7間、梁間7間の祖師堂は関東では数少ない大型日蓮宗本堂の典型で、庶民信仰の隆盛により完成した。また特色ある屋根の形状や蟇股に極彩色が施されるなどの内部の構成も江戸時代中期の特徴をよく示していることから昭和60年に重要文化財に指定された。
現在の杮葺き屋根は62年から平成10年にかけての解体修理時に葺き替えられているが、傷みが激しくなっていることから全面の葺き替えが行われる。もともと杮葺きは耐用年数が約40年とされている。工事終了は令和5年11月を予定。
第55代管長に菅野日彰猊下
日蓮宗第55代管長に東京都大本山池上本門寺貫首で第54代管長を務められた菅野日彰猊下の就任が決まり、5月9日に東京都大田区日蓮宗宗務院で就任奉告式が営まれた。式には宗会議員、宗務所長、本山貫首など約100人が参集した。管長は日蓮宗を統理し、宗制の公布、宗務総長や宗務役職員、僧階、住職・担任・教導などの認証を行うことや、ご親教などを通じて全国の僧侶檀信徒に導きを示されるなど、日蓮宗の最重要職。管長推戴委員会の審議を経て推戴される。任期は4年。
式では同委員会の井上瑞雄委員長が「3月29日に開かれた委員会の総意で菅野猊下のご推戴を決定。すぐに池上本門寺に参上しご就任をお願い申し上げたところ、ご快諾をいただき本日にいたりました」と経緯を報告した。あわせて第54代管長として、日蓮聖人降誕800年ご正当法要、各教区の記念大会、宗門運動「立正安国・お題目結縁運動」の結願法要などの大導師を務められ、常に先頭に立たれて宗風宣揚に尽力された菅野猊下のご功績に深い敬意を表した。
井上委員長から推戴書の奉呈を受け、田中恵紳宗務総長から管長印璽が授与された菅野猊下はご挨拶で、全身全霊・不自惜身命で任に当たられる覚悟をお示しになられるとともに、新型コロナウイルスの蔓延やロシアのウクライナ侵攻などの世界の混乱を憂われ、日蓮聖人が天命として遺された立正安国の実現を求め、今こそ宗門が総力をあげなくてはならない時と述べられた。また54代として各地での日蓮聖人降誕800年の記念大会で法要の大導師を務められたり、住職担任認証式などで1人ひとりに認証を手渡されたことで感じられた日蓮宗の未来への手応えなどに触れられた。 祝宴は新型コロナ情勢を鑑み取りやめとし、祝賀之儀では酒を注がない御杯之儀が行われた。祝辞では、菅野猊下が管長就任と同時に総裁に着任される立正大学学園の望月兼雄理事長らが登壇した。望月師は立正大学サッカー部が、5月8日に創部以来初の天皇杯JFA第102回全日本サッカー選手権大会の東京都代表となったことを報告して慶事に花を添えた。また池上幸保全国日蓮宗檀信徒協議会長は昨今の世界情勢に触れ「心の安穏はお題目の教えを弘めること」と話し、菅野猊下のご教導を願った。
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菅野管長猊下は、昭和12年に北方領土を除く日本最北の有人島・礼文島生まれ。現在85歳。26年に小樽市妙龍寺住職の伊藤啓昭上人の元で出家得度。東京都永壽院で修行されながら立正大学仏教学部宗学科を36年に卒業。大本山池上本門寺布教部に奉職後、48年から約30年間にわたり宗立谷中学寮の寮監を務め青年僧侶の育成に尽力された。58年に東京都浄延院住職に就任し、平成5年に東京都北部布教師会長、15年に日蓮宗常任布教師に任命された。多くの著作を執筆されている。平成17年に静岡県本山海長寺、27年に東京都大本山池上本門寺に晋山。30年に第54代日蓮宗管長に就任され、日蓮聖人降誕800年の各教区などでのご親教、龍口法難750年・降誕800年ご正当・宗門運動結願などの宗門法要の大導師を務められた。