日蓮宗新聞

2013年8月1日号

お盆法話・ 被災地のお盆と卒塔婆供養    芝﨑惠應師

ご先祖さん迷わないだろうか?

大震災から丸2年、3回目の月遅れお盆がまいりました。
平成23年8月のことです。最後に当山の避難所を巣立つ避難者からその前日に尋ねられました。
「和尚さん、もうすぐお盆だね。昔からお盆には地獄の釜の蓋も開き、故郷にご先祖が帰ってくるって言うんだけど、今年は俺の先祖はどこに帰ってくるんだろう? ご先祖さん迷わないだろうか?」
「なんでそんなことを言うの?」と尋ねると
「だってほら、俺たちの住む所は仮設住宅だよ。住む俺たちだって家がよくわからないのに、来たこともないご先祖さんわかんないじゃない。大体地獄の釜の蓋 が開いてったって、今居る故郷が地獄の様相だよ。あれ、間違えたって思って、ご先祖さん帰っちゃったらどうしよう? 仮設じゃ盆棚も飾れないし…」。
話を聞いてこの人はお盆を先祖を迎える大事な行事と理解している様子に、なるほどと感心いたしました。
お盆という行事は、お釈迦さまのお弟子・目連さんが、地獄で苦しむ我が母を救いたいと、お釈迦さまの教えに従って行った法会が始まりです。この目連さん の孝行の真心が今日まで続いてお盆となり、報恩感謝のともし火となり、そしてご先祖さまや、亡き父母に対する報恩の日として私たちに受け継がれているので す。
各家には盆棚を飾り、迎え火・送り火・お墓参りをします。お寺では特別に施餓鬼壇を作り古来は四方に笹竹を立て、仏さまの五色の旗に経文を書き、壇上に は四生六道あらゆる万霊を祀り、浄水・飯食・菓子果物等供物を供え、法会を営みます。上は仏さまから下は何も食べることができずに苦しんでいる精霊に至る まで供養いたします。
本来、盂蘭盆会と施餓鬼会は違いますが、私たちの先祖の苦しみを思うと盂蘭盆に施餓鬼会を行うようになったのは当然のことと思われます。
その盂蘭盆の供養に、先祖や知人友人等亡くなった方々に「お塔婆」を書いてご回向するのを「付施餓鬼または付回向」と言って、普段のご回向の功徳よりも数倍も優れているとされています。
お盆の施餓鬼会は、なにもご先祖さまだけとは限らないのです。施餓鬼自体、先祖は元より、多くの無縁の精霊が安らかなることを念じて行われ、その功徳が有縁の精霊に及ぶという意味がありますから、お盆のご供養をするなら、できるだけ多くの精霊に供養したいものです。
日蓮聖人は『中興入道御消息』というお手紙に塔婆供養の功徳を教えておられます。
「過去の父母も彼の卒塔婆の功徳に依りて天の日月の如く浄土を照らし、孝養の人並びに妻子は現世には壽を百二十年持ちて後生には父母と共に霊山浄土に参り給はん事、水澄めば月うつり鼓を打てば響きのあるが如し…」
と説かれて、塔婆供養を勧められているのです。その卒塔婆供養も、日常だけではなく、お盆の施餓鬼会のような時は尚更功徳が大きいと示されています。
ともすれば私たちは、日常自分の気に入ったことのみ追い求め、心の欲望の趣くままに貪り際限の無い欲望にのみ心を奪われ、他を顧みない生活をしてしまいます。
正に生きながら餓鬼道に堕ちたも同然と言えましょう。そのような欲望の絆を断ち切り信仰者として正しい生活を営む前提として、法界万霊に施すお施餓鬼こそ大切なのではないでしょうか。
大震災を機会に「絆(きずな)」という言葉が多く使われました。人と人・心と心が例え遠くても、見ず知らずであっても、国や人種が違っても、思いが一緒 なら我が家族のようにつながっているという意味で「絆」という言葉を使ったはずです。その絆は生きている者だけでしょうか。先祖も有縁無縁の多くの万霊に も絆はあるのです。
今年のお盆には、先祖のみならず多くの有縁無縁にも、そして少しの真心を震災犠牲者にも分け与える思いやり持ってみませんか。それこそお釈迦さまや日蓮聖人仰せの功徳が顕われるのではないでしょうか。
ところで冒頭の避難者には、
「住所が変っても、ご先祖さまとは心がいつも繋がっているから大丈夫ですよ」と話しました。
「じゃぁ安心した。」と笑顔で仮設住宅に向かわれました。

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新年のご挨拶。

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