2013年7月10日号
全国檀信徒協議会新会長 池上幸保氏インタビュー
寺院はいま生きる人が元気をもらう場
5月18日に開催された日蓮宗全国檀信徒協議会の総会で新会長に東京都大本山池上本門寺総代の池上幸保さんが選出されました。日蓮聖人の檀越、池上宗仲公の子孫である池上新会長に檀信徒協議会の目標など話を聞きました。
【会長就任にあったって抱負などお聞かせください】
会長といえども法華経を信仰する者の一人であることに変わりはありません。宗門と連動してこの教えを弘め、次代に繋いでいくことが第一の使命だと感じて います。江守幹男前会長の「檀信協は宗門の応援団」という立場を継承し、その上でお坊さんではなかなか出てこないアイデアを提言してみたり、あるいは檀信 徒の本音みたいなものを代表して宗門に伝える。そんな檀信協を目指したいと考えています。僧侶と檀信徒がそれぞれの立場で知恵を出しあえばさらによい宗門 が実現できると思います。同時に信仰を同じくする者同士の親睦を深めることにも力を入れていきたいですね。先日の全国檀信協の総会後に有志で千葉・鴨川の 鏡忍寺と誕生寺の参拝旅行をしたのですが、このような企画もどんどん推進していければと思います。
【檀信協からのアイデア提言というのはおもしろそうですね】
世の中には「業界の常識は世間の非常識」という言葉があります。どうしても自分の業界の常識にとらわれてしまいがちです。お坊さんの業界の常識がおかし いとは申しませんが、檀信協にはさまざまな業界で活躍された方がいます。そうした人たちの知恵を活用しない手はないと思います。特に「葬儀」「墓」「寺」 の三離れの問題は、僧侶檀信徒一体となって取り組まなくてはならない共通の宿題だと感じています。臭いものにはフタで問題を先送りにしたり、目をそむけて 逃げてしまえば伝統仏教の将来は暗いと思います。
【望ましい寺院像みたいなものはありますか?】
三離れの話の続きみたいになりますが、いま世の中から寺院の公共性、社会性が問われているのではと感じます。たとえば共稼ぎ世帯が増えるなか寺院を利用 した託児システムはできないか。お年寄りが時間つぶしに病院のロビーに行くのではなく、お寺に行って囲碁をしたり体操をしたりできるようにするとか、さま ざまな形での寺院活用法が考えられると思うんですよ。わたしにとってお寺は「いま生きている人が元気をいただきに行く場」なんです。「極楽を保証されても 娑婆がいい」「生きているいまが大切だ」というのが日蓮宗の教えですから、是非その観点での寺院活用を考えていただきたいですね。日蓮宗には法華経という すばらしいソフト、寺というハードの両方があるんですから。
【宗門運動について考えを伺わせてください】
現代の世相を見てみますと「オレオレ詐欺」だとか「生活保護費不正受給」だとか嘆かわしい事件が目立ちます。これは、生かされている自分という考えの欠 如だったり、目に見えないものを敬うという心の欠如に原因があると思います。神仏を畏れる気持ちをなくすと、人間はどんどん傲慢になり身勝手になります。 その結果がこの世相。わかりやすく例えるなら、「お天道さまが見てるよ」だとか「ご先祖さまに会わす顔がない」とか「ウソつくと閻魔さまに舌抜かれる」だ とか、そんな風に感じて生きる人が少なくなったということです。そんな時代に、日蓮宗が法華経を弘めて敬いの心で安穏な社会づくりを目指す運動を展開する ことは極めて意義深いことだと思っています。檀信協としても精一杯協力していく覚悟でいます。
【ご降誕800年に向けて思うことは?】
あと8年ですよね。現在、お寺の行事に参加する方は高齢の方が中心です。8年後を見据えてその方たちの次世代がちゃんと育っているのか? それに向けて 真剣に努力しているのだろうか? これをきちんと検証する必要があると思います。8年なんてあっという間です。今からやらないと手遅れになります。いつや るの? 今でしょ! ですね(笑)。