日蓮宗新聞

2011年7月1日号

総本山身延山久遠寺 内野日総 法主猊下が被災地を訪問

涙ながらにご回向と祈願 被災者に励ましのお言葉も

総本山身延山久遠寺の内野日総法主猊下は東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手、宮城沿岸地域を訪問された。内野法主猊下は遠野南部家の末裔にあたり、ゆかりのある東北地方が被災されたことに心を痛められ、被災地を直接訪問したいというご意向を早くからお示しになられていた。

6月4日から6日には内野法主猊下は岩手県沿岸の寺院を阿部是秀宗務所長らと共に訪問。大船渡市本増寺から、釜石市仙壽院、同市本行寺、大槌町蓮乗寺、さらに山田町瑞然寺、同町善慶寺の6ヵ寺を歴訪。6日、宮古市の本照寺を訪れた。内野法主猊下が各寺院を訪れると、数十名の檀信徒がお出迎えし、共にお題目を唱え、震災の犠牲となった方々の菩提を弔い、また、被災地の一日も早い復興を祈念された。
7日には、避難所になっている宮城県石巻市法音寺(谷川正明住職)を慰問。同寺では檀信徒の大半が被災、犠牲者の数だけでも50人を超える。
内野法主猊下は、最初に同市の仮埋葬(土葬)が行われる上釡ふれあい広場を訪れた。同地サッカー場には何百体もの遺体が土葬されている。内野法主猊下は自我偈を転読しながらグラウンドを歩き、ご回向を捧げられた。
続いて、釡地区内の墓地の泥掻き出し清掃を行う全国日蓮宗青年会(伊東政浩会長)のボランティア活動の現場を訪問。青年僧の泥や汗にまみれ活動する姿に「災害支援をされることは感激に堪えません。過酷な状況のなか異体同心にお体には気をつけて頑張って下さい」と激励。突然の思いがけない訪問に一同はお言葉にじっと耳を傾けた。
その後、被害の様子を、谷川住職の案内で車窓から視察。法音寺から一望する被災地の光景に内野法主猊下は再び涙ながらに自我偈・お題目でご回向。大いなる恵みを与える美しい顔と、甚大な被害を与え恐怖に陥れた残酷な顔と、正反対の顔を見せる大いなる海を前に、ひたすら祈りを続けられた。
その後、法音寺題目講中が奉詠する、日蓮聖人御一代記和讃に声に迎えられ、本堂へ。そこには被災し不便な避難生活を送っているにもかかわらず、約100人の檀信徒や避難所生活を送る人らが待っていた。
内野法主猊下は涙ながらに殉難者へのご回向と震災復興を祈願された。また参列者に励ましのお言葉をかけられた。
各被災寺院では、震災当初から避難所として地域住民を受け入れてきた。ともに避難生活を送るなかで、檀信徒はもちろん、住職寺族も心に深い傷を負っている。内野法主猊下のお見舞いは被災寺院の復興への活力と繋がった。
(取材協力/三浦惠導師・谷川正明師)写真提供・総本山身延山久遠寺

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