日蓮宗新聞
2008年3月1日号
日蓮宗加行所成満会
人々を苦しみから救う加持祈祷の秘法を授かるため、百日間にわたり厳しい修行を行っていた平成19年度日蓮宗加行所が成満を迎え、2月10日、千葉県市川市の大本山中山法華経寺(新井日湛貫首)で加行所成満会が営まれた。関東は前日夜から雪に見舞われ厳しい冷え込みとなったが、境内には午前2時過ぎから全国の寺族・檀信徒が続々と到着し、修行を終えた僧侶を出迎えた。
1日2時間の睡眠とおかゆにみそ汁だけという朝夕二回の食事。あとはひたすら法華経6万9384字の読経と写経に打ち込む荒行を終えた148師は、10日午前6時、昨年11月1日の入行以来初めて開かれた「瑞門」をくぐり、寺族・檀信徒の前に姿を現した。「おかえりなさい!」「おつかれさま!」。寺族・檀信徒は、人だかりのなかから背を伸ばし、菩提寺の住職やお世話になっている僧侶の顔を見つけると、白い息を吐きながら歓声を上げていた。
成満会は午前8時、法華経寺祖師堂で新井日湛伝主を導師に営まれ、100日間の苦行を締めくくる読経の大音声がお堂の内外に轟いだ。
法要中、新井伝主から許証、佐野前暁伝師から感賞状、小松浄慎宗務総長から修法師辞令と修法師範允許、伝師相承允許、沖縄修法布教団辞令が授与された。
小松総長は挨拶の中で、修行僧を労い「宗門では昨年より宗門運動『立正安国・お題目結縁運動』が実動致しました。その基本目標と致しまして。“敬いの心で安穏な人づくり社会づくり”を掲げており、本宗独自の布教手段であります修法により檀信徒のみならず未信徒の方々への教化活動、更には、日蓮大聖人の大誓願であります『一天四海皆帰妙法』に向けご活躍なされますことを切望する次第であります」と語った。
また修行僧の訓育に当たり加行所を総括した佐野伝師が「昨年11月1日結界に入り、仏から答えをもらうことを目的に、行堂清規の遵守を徹底的に指導してきました。皆本当によくやってくれました。ただ今、皆さんの社会的地位と名誉をお返しします」と力強く宣言。全堂代表の爪田栄成師(静岡県法華寺住職)が謝辞を述べた。
この日は日曜と重なり、多くの寺族檀信徒が出迎えに訪れた。加行所2回目の池田弁佑師(長崎県島原市光伝寺内)の檀徒は前日、空路で上京。当日は午前4時に起床し、心待ちに法華経寺を参詣した。「本当にありがたい。心が清まります。修行は自分でするもので、人に頼るものではないことがわかりました」「読経の迫力にびっくりしました」。こけた頬に鬚を蓄えすり切れた清浄衣姿の弁佑師に、檀徒はまぶしそうな表情で微笑み手を合わせていた。