日蓮宗新聞

2007年2月1日号

インド洋津波犠牲者3回忌慰霊祭

日蓮宗 全日仏を代表し法要団

 日本人42人を含む22万人以上の死者・行方不明者を出したスマトラ沖大地震・インド洋大津波から2年。日蓮宗は全日本仏教会(=全日仏、安原晃理事長)を代表して法要団を結成し、昨年12月26日、タイ南部のプーケット島カマラビーチで「インド洋津波犠牲者3回忌慰霊祭」を営んだ。
復興が進み観光客も戻りつつあるプーケットの活気に反し、癒えることのない大切な人を失った悲しみは、日本人遺族のほとんどが名前の公表を避けていることに表れている。プーケット日本人会の建立による「慰霊之碑」を大勢の参列者が囲み、日蓮宗僧侶による追悼の読経が多くの命をのみこんだ青い海に染み渡った。

3回忌慰霊祭は、全日仏が昨年6月にプーケット日本人会(宮下和司会長)から依頼を受けたもので、全日仏では、平成17年5月に井上瑞雄総本山身延山久遠寺総務を団長にタイで慰霊法要と唱題行脚を行い、現地との関係を深めていた日蓮宗に法要への出仕を要請。これを受けて日蓮宗では、伊東隆司日蓮宗伝道局長を団長に、身延山久遠寺の杉浦則雄法務部長、国際開教対策委員会の辻村行遵師と熊沢海樹師、全国日蓮宗青年会の河崎俊宏会長はじめ青年会のメンバーら計14人が法要団として、12月25日から28日までの日程で現地に赴いた。
全日仏から委嘱辞令の伝達を受けた一団は25日、全日仏の壽山良光国際部長の見送りを受け成田空港を出発。現地で先入りした全日仏社会人権部部長の奈良慈徹師(台東区妙義教会担任)と合流し打ち合わせを重ねた。
35度を超す猛暑となった26日、法要は午後1時半からプーケット日本人会の山田満副会長の司会で開始。29人の日本人遺族をはじめ現地や各国からの遺族、日本人会のメンバーら約300人が参列し、曼荼羅御本尊を掲げ祭壇を設けた慰霊之碑を多くの記者やカメラマンが囲んだ。
被災者の御霊に全員で黙祷を捧げた後、挨拶に立った宮下会長は、参列者に深い哀悼の意を表し、少しでも早く被災以前のにぎやかなプーケットに戻ることを祈った。引き続き、トゥリー・アカラデシャー・プーケット県副知事、小林秀明日本国特命全権大使、坂野哲司盤谷商工会議所会頭、パロップ・タイアリー世界仏教徒連盟事務総長(代理)が式辞。続いて慰霊之碑を囲むように僧侶が登壇し、伊東団長を導師に法要が営まれた。杉浦部長が慰霊之碑正面に進み開眼の修法を行うと、木剣の音が南国の空に響き渡り、力強い読経の中、献香・献花を行う参列者が慰霊之碑前に列をなした。
法要後のレセプションでは、伊東団長が全日本仏教会会長の名代として挨拶。伊東団長は、全日本仏教会の代表として出仕できたことを「藤井日光猊下のご遺志を、日蓮宗としてこのプーケットに届けることができたものと確信し、ありがたく感謝の意を添える次第です」とし、さらに「吾祖日蓮聖人のお言葉に『此れ偏へに国土の恩を報ぜんが為也』と、人々の在るべき正しき道は恩に報いることであると示されており、仏教では『知恩報恩』との言葉の如く、私たち生きとし生けるものは、自然より様々な恩恵を授かっていることを認識し、恩に報いなければならないと存じます。当法要において、被災者の霊位に追善の誠を捧げ、ご参集の皆さま方に“環境・平和・いのち”の誓いと祈りを込め、み仏の慈悲が垂れんことを切願します」と語った。
鷲尾悦也元連合会長の発声で献杯、プーケット日本人会に日蓮宗宗務院、総本山身延山久遠寺、全日本仏教会それぞれから浄財と、盤谷日本人商工会議所からは補習授業校児童送迎用車両が贈られた。
一人娘の由美さん(当時32)をピピ島で亡くした埼玉県の田中章さん(64)は、「読経を聞いて胸にこみ上げるものがあった。忘れることはできないが、3回忌という節目をつけたい。仏さまになったのだから喜んであげた方が幸せなのだと考え方を切り替え、これからは前向きに生きていきたい」と、複雑な思いを涙ながらに語った。
南国の花々で美しく飾られた慰霊碑には、研修で現地を訪れていた神奈川県立西湘高等学校の生徒が前日徹夜をして折ったという千羽鶴が掲げられ、水着姿の観光客も次々と参拝に訪れていた。

◇   ◇

世界平和国土安穏を祈り奉る
慰霊之碑 故藤井日蓮宗管長の追悼の言葉

法要が行われたのは、カマラビーチホテルの敷地内に立つ「インド洋津波被災者慰霊之碑」。自然災害の恐ろしさを銘記し、被災者への追悼の意と世界の平和を願ってプーケット日本人会によって平成17年12月に除幕された。
正面に金字で刻まれた“久遠の凪を願う”の7文字に、国籍・宗教を問わず全犠牲者に対する追悼と世界平和を願う強い想いが込められている。
裏面には、当時全日仏会長を務めていた故・藤井日光日蓮宗管長が寄せた追悼の言葉が、日本語、タイ語、英語でそれぞれ刻まれており、「冀くば仏陀世尊随喜の諸尊 無量の慈雨を施して 常寂の滅相を示し給え 加えて今生の衆生 黒雲より光徳の相を現じて世相の眼と為し 厳かに浄国土を再建し給え 我等同塵の和を整えて 皆共に菩薩の道を行じ 世界平和国土安穏を祈り奉る 願わくば此の功徳を以て普く一切に及ぼし 我等と衆生と皆共に仏道を成ぜん」と結ばれている。

プーケットに明るい未来 「もう大丈夫」日本人会長

 タイ南部プーケット島の面積は534平方kmで、淡路島とほぼ同じ大きさ。プーケット日本人会の大野肇副会長によると、メンバーは現在約250人で、プーケットにはメンバーを含め推定500人の日本人が住んでいる。幸いメンバーに津波犠牲者はなかった。
プーケットの風習では、亡くなった人に対する慰霊祭は一度だけで、日本の年回法要のような考えはないという。今回の3回忌は日本人会のメンバーが中心となって準備が進められ、式辞を述べたプーケット県副知事は、「亡くなった人々に長い間慰霊の心を持ち続ける日本人に頭が下がります」と語っていた。
観光で成り立つプーケット。街並みの復興は進み、穏やかに波打つ浜辺には被災前と変わらない賑わいが戻りつつある。観光客の減少という“二次災害”の復興は、諸国の観光客がほぼ戻っている中で日本人が特に遅く、被災前の60%程度だという。
「プーケットはもう大丈夫です」。宮下和司プーケット日本人会会長はじめ地元の人々は、より多くの人に訪れてもらうことを強く願っている。
慰霊之碑の背後から上る朝陽は、プーケットのたくましさと、明るい未来を感じさせた。

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