2007年2月1日号
日蓮宗の代表的「文化財の寺」 大本山妙顯寺
経典・絵画・法衣 すべて重文指定 2000点に及ぶ古文書群
京都市の大本山妙顯寺(南條孝仁貫首)で文化財調査が実施され、京都弘通を行った日像上人(1269~1342)の持経とみられる鎌倉時代初期の『細字法華経』十巻など、同寺に伝来する多くの名品が確認された。
京都市の大本山妙顯寺に伝わる2000点に及ぶ古文書群は、そのすべてが国の重要文化財に指定され、近年、修理事業が進められている。また同寺には、古文書以外にも多くの文化財が伝来し、身延山久遠寺・中山法華経寺とともに日蓮宗の代表的な「文化財の寺」として注目される。
今回の調査は京都国立博物館と京都府教育委員会によるもので、1月9日から14日までの4日間にわたって実施された。調査に参加したのは、京都国立博物館の赤尾英慶氏はじめ書蹟・絵画・染色の担当者と、京都府教育委員会の田中淳一郎氏。日蓮宗からは、中尾堯立正大学名誉教授と京都日蓮宗青年会の福沢正俊・角道泰昭・鶏内泰寛・今井利幸の各師が調査に加わった。
調査対象は、経典・絵画・法衣などで、その半数の調査を終了。今回の成果をまとめた段階で、次の調査を継続することになった。
【経典】
経典研究の権威である赤尾氏は今回、妙顯寺に伝来するすべての経典を調査。日像上人書写とされる『細字法華経』は他に較べようがないほどの細字であり、鎌倉時代初期の『細字法華経』十巻は実際に日像上人の持経であった可能性が強いことが確認された。このほか、大陸から輸入された七巻本の豪華な『法華経』や、奈良時代の写経『大般若経』一巻などもあり、京都における妙顯寺の存在感の大きさが、はっきりと窺える内容となった。
【絵画】
絵画では中世の仏画と曼荼羅御本尊の装飾が、まず注目された。狩野派をはじめとする絵師が制作した絵画は、京都画壇の動向を反映し、優れた作品が残されている。仏画や屏風絵は美術史の上でも価値があり、取り扱い上の留意点が調査員から指摘された。
【法衣】
法衣では、日像・日耀・日啓上人の袈裟や衣が伝わっている。日蓮宗の法衣の型式を窺うとともに、諸上人の伝道の姿を彷彿させる重要な宝物であり、その生地や文様には京都の優れた繊維工芸技術が偲ばれる。
【後世に伝えるための重要課題】
京都の日蓮宗各本山に伝来する文化財の本格的な調査事業が始まったのは、本法寺(京都市上京区・大塚日行貫首)をはじめ、ごく最近のことである。できるだけ早い機会に各本山の調査を完了し、輝かしい法灯の歴史を後世に伝えなくてはならない。
また、5年後の完成を目指して行われている妙顯寺大本堂の修理事業も、日蓮宗の文化財を後世に伝えようとする文化的な大事業である。それは、伝統教団としての日蓮宗における第一の責務といわなくてはならない。
