2004年11月10日号
いのりの祭典「いのりんぴっく柴又」
「環境・平和・いのち」について、お寺の境内で楽しみながら考えを深める“いのりんぴっく”が10月7・8日、東京・柴又の帝釈天(題経寺・望月是晃住職)で開催された。いのりんぴっく柴又実行委員会(東京東部宗務所)主催、日蓮宗・題経寺・ニッポン放送後援で行われた。特に8日は帝釈天の縁日“庚申”でもあることから柴又の町は賑わいを見せ、仏教国の参加者による国際色豊かなステージが奏でる音につられて足を伸ばす人の姿も。唱題行や法要に加え、文化に根づく仏教精神が、心にも染み入るイベントとなった。
立正安国の精神を掲げ「環境・平和・いのち」運動を推進
7日の前夜祭は、午後5時からの祈願唱題行でスタート。東京東部管区の檀信徒を中心に、平和への思いを込めた100人の祈りの唱題が題経寺祖師堂に響き渡った。
ライトアップされた境内の前夜祭会場は伽藍が神秘的に浮かび上がり、足元には参加者の名前が書かれた色とりどりの紙灯籠が灯される中、特設ステージでオープニングセレモニーが挙行された。
法要は山田流の琴演奏の音色にのせて、草ヶ谷秀人東京東部宗務所長が“いのりんぴっく柴又宣言”を発声。会場の約200人全員が「緑の地球を取り戻そう/戦争のない世界を作ろう/いのちを大事にしよう」と声高らかに読み上げた。
また、アジア音楽の夕べでは、3人の音楽家によるインド音楽に続いて、世界的に活躍する二胡奏者のジャー・パンファン氏が中国音楽を披露し、ゆるやかな秋の夜のひとときを演出した。
雨の中、さまざまな催し
翌日はあいにくの雨模様だったが、“庚申の日”に訪れた人々も「いのりの時間」のほか、さまざまな催しに参加していた。
「いのりの時間」では岩間総長を導師に全員で黙祷を捧げた後、ルンビニー女声コーラスによる宗歌と仏教讃歌「ありがとうの歌」「ささぐみあかし」が奉納され、ルンビニー幼稚園の園児六人による献華、題経寺代表の秋家英子さんらによる献灯が行われた。
読経が行われて境内が静まり返る中、岩間総長がこの催しの主旨と今後の指針を示した、いのりのメッセージを読み上げた(別項)。
スリランカ僧侶のパニャラーマ師も挨拶に立ち、「スリランカでは老眼鏡を買えずに困っている人がいますが、もらった人はすごく喜んで使っています。ありがとうございます」とメッセージを発した。
スリランカでは平均月収の半分という老眼鏡は、全国各地の寺院で集められ、贈られているが、東京東部宗務所の活動は特に盛ん。関係者は定期的に現地に赴き、手渡しているという。
境内隅にはさまざまな形で「環境・平和・いのち」に携わる団体のブースがあり、老眼鏡を贈る運動も紹介され、関心を集めていた。
さらに、帝釈天付属のルンビニー幼稚園の園児もステージに立って大活躍。大きな声で一生懸命に「いのりんぴっく宣言」を発表し、仏讃歌を歌って、参加者の笑顔を誘っていた。
最後に全員がうちわ太鼓を手に唱題し、法要を締めくくった。
法要の前後には江戸太神楽、ミャンマー・ラオスの民族舞踊が披露され、仏教国間の親しみ深い交流がなされた。
また、鳳翔会館では終日、小山内功静師(東京都江戸川区要法寺)らによる庚申布教が行われた。
山門では、ラオスに小中学校校舎を建てるための募金活動が行われた。集まった浄財は、BAC仏教救援センターの手で今後、活かされる。
ブースでラオスを紹介していたアーユス仏教国際協力ネットワークの関係者は、ラオスは来年、建国35周年を迎え、日本との国交50周年という意義深い年でもあることを挙げ、「“忘れられたものを感じることができる国”と言うように、一度行くと二度、三度と訪れる人が多い国。国家財政が厳しいということもあり、皆さんのお越しをお待ちしています」と話していた。
平和メッセージ
いのりのことば
私たちは願い、祈っています。私たちを取りまく地球環境を人類の手で壊さないことを。
私たちは願い、祈っています。私たち一人ひとりのいのちが尊いことを、世界の人々が自覚することを。
そして、私たちは願い、祈っています。「平和」という言葉を叫ばなくてもよい世界になることを。
世界各地で戦争や紛争が広がり、環境破壊が進み、理由もなくいのちが失われる悲惨な事件が絶え間なく引き起こされています。自分の身に降り掛からない災難には目を向けず、自己の利益・欲望のみを求める。そうした社会の悪化は留まる気配すらありません。今まさにその現実を受け止め、新たな道を切り開いていかなければならない時が来ています。
国家・民族・思想・宗教・文化の違いで争い、己の平和・幸せのみを勝ち取るのであっては、決して真の平和・幸せは訪れません。私たち一人ひとりが理解し学び合い、融和・協力し、人類の未来のために、全ての人が共に祈り、共に行動しようではありませんか。
ここに、いのりの祭典「いのりんぴっく柴又」を、柴又帝釈天 題経寺において開催するに際し、立正安国の精神を掲げ、世界中の人々と手を携え、「環境・平和・いのち」を尊ぶ運動を推進していくことを宣言します。
平成十六年十月八日
日蓮宗宗務総長 岩間 湛正
