2004年11月10日号
日蓮宗加行所入行会
“瑞門”をくぐる直前、入行僧たちの張りつめた気持ちが辺りの緊張感をいっそう増した。千葉県市川市・大本山中山法華経寺(新井日湛貫首)で11月1日、平成15年度の日蓮宗加行所(大荒行堂)が始まった。入行会が行われたこの日は未明に降ったどしゃぶりの雨もすっかりとやみ、最高気温が22度を記録するほどの陽気だった。今年は昨年より59師多い195師が結界の地で100日間の苦修錬行に励むこととなり、境内には朝早くから大勢の家族や友人、檀信徒らが詰めかけ、さまざまな思いで入行僧を見送った。
檀信徒・家族ら合掌し見送る
午前8時頃、緊張した面持ちで清浄衣に身を包み、剃髪姿の入行僧が徐々に集まり始めた。家族や友人、檀信徒に囲まれ、入行僧はしばしの別れを前に、思い思いの時を過ごした。
午前9時、呼鐘が鳴り響くと入行僧は常修殿へ。見送りの人々は入行僧の背中に向かって大きな声をかけ、姿が見えなくなるまで合掌していた。
入行会は祖師堂で加行所伝主・新井貫首を導師に営まれ、堂内には大音声の読経が響きわたった。
挨拶に立った岩間湛正宗務総長は、「強い意志をもって壱百日の荒行に挑戦するという信仰心に対して深い敬意を表します。行に入るのは自分たちですが、皆さんの後ろには師匠、寺族、檀信徒が大きな期待を寄せています。その期待を裏切ることなく、立派な修行をし、また人間として一段と逞しくなって化導成弁に努めてもらいたいと存じます。全員が無事成満を迎えられるよう勇猛精進、法体健全を心より祈念致します」と述べた。
続いて、新井伝主が加行所清規に則り、一人の落後者も処罰者もなく頑張って頂きたいと入行僧を激励。村山智城伝師は「これより壱百日間の結界、苦修錬行を始めます。195名各聖の全てを只今より預かります」と挨拶した。
また千葉北部の赤羽浩教宗務所長、全国修法師会連合会の工藤堯幸会長が祝辞を述べ、最後に全堂代表の飛鳥宣央師(東京・大正寺住職)が「行堂清規を遵守し、不惜身命の決意を持って苦修錬行に精進することを誓います」と力強く宣誓した。
報恩読誦会の後、入行僧は常師廟、奥之院を参拝し、いよいよ“瑞門”へ。“瑞門”が近づくに連れ、表情をこわばらせる入行僧も多く、見送りの檀信徒らは「行ってらっしゃい」「頑張って」と、涙ながらに声をかけていた。
また幼い子を持つ入行僧も多く、小さな手をあわせて父親を見送るほほえましい姿も。親子の別れを惜しむ姿は毎年見られるが、今年も恩愛のきずなに周囲がほっと表情を緩ませる光景があちこちで見られた。