2003年12月1日号
“江古田のお会式”報恩音楽法要
全身で奏でる僧侶の声明。奏者に抱え込まれ、その体の延長となって繊細かつ重厚な音色生み出す弦楽器。己を開放して全身で受け止め、思いのままに堪能する聴聞客。同じ空間で調和を保ちながら個々のスタイルを確立させるとともに、参加者すべてが弦楽・声明・読経を通し、雑ぱくな日常から離れて自分を見つめ直す「智慧」を養ってもらえたら―。そんな思いで、ある音楽法要が行われた。
東京・中野区蓮華寺(金子光秀住職)で11月8日、お会式に伴う報恩音楽法要が営まれた。同法要は蓮華寺で11年間続いている仏前コンサート。今年は「智慧」をテーマに、コントラバス奏者の藤原清登氏、ヴァイオリン奏者の加藤知子氏を迎えて行われた。檀信徒や音楽ファンの若年層約60人が足を運んだ。
午後5時頃、ほんのり淡い光に包まれた本堂に粛々と聴聞客が着席。はじめに、檀家総代の深野良之助さんが「檀信徒にとっても大事な意味を持つお会式。工夫を凝らし、有意義なお会式にしようと今年も企画しました」と挨拶。続いてヴァイオリン演奏、洒水散華、声明が行われた。
寿量品の読誦では両弦楽器がバック演奏として登場。ヴァイオリンの繊細な響き、コントラバス特有の長い余韻がテンポ良く流れる寿量品との見事な調和を見せていた。
終盤には聴聞客がうちわ太鼓を叩きながら唱題。全員で“音曼荼羅”の世界を演出しようと企画されたもので、太鼓の音、力強い唱題の声が堂内にこだました。
金子住職は「音楽と芸術が行き着く所には宗教があると思う。仏の教えをただ学ぶのではなく、生活そのものとして求めていきたい」と語っていた。