2016年3月20日号
3.11被災地で祈りささげる
東日本大震災から5年。大地震が発生した3月11日には、大きな被害を受けた岩手、宮城、福島の3県だけでなく、全国各地の日蓮宗寺院・教会・結社で殉難者への鎮魂のお題目と祈りが捧げられた。
檀信徒164人の命を失った岩手県大槌町の蓮乗寺(木藤養顕住職)には、この日朝から多くの檀信徒が墓参に訪れた。すべてが大槌町に残った人ばかりではない。家を失い盛岡市や仙台市などに仮住まいを余儀なくされている人たちも、この日にあわせて故郷・大槌に戻り、殉難者や先祖の墓に掌を合わせた。
津波で祖母を失ったという檀信徒は震災後に生まれた子どもを連れて墓参に訪れた。「震災がなければ曾孫を抱かせてあげられたのに」と無念の表情で話す。長い時間をかけて合掌した後、「ばあちゃん、向こうで元気にやってっか」と墓石をやさしく撫でた。
同寺では、午後1時から東日本大震災殉難之霊慰霊法要が営まれ、檀信徒100人以上が参列した。この法要には岡山県修法師会(石川正之会長)が呼びかけ県内の有志で結成した東日本大震災慰霊団22人も出仕・参列した。
法要後、岡山からの慰霊団は予定を変更して震災の発生した午後2時46分まで読誦し、その後、蓮乗寺の和讃講中と岡山県和讃会が打ち鳴らすうちわ太鼓に合わせ唱題を行った。参列者は本堂前や親族の眠る墓前など思い思いの場所で掌を合わせてその時を迎えた。
法会を終え、岡山県の慰霊団を乗せたバスが見えなくなるまで手を振り続けた蓮乗寺の檀信徒は「岡山は遠いけど、お題目でつながってるんですね。心の奥の方で温かいものが流れ出すのを感じました」と話した。その温かな何かが、被災地の人の胸に灯った小さな希望であったと信じたい。