日蓮宗新聞

2013年7月20日号

月例金曜講話 日蓮聖人近畿御遊学12年に学ぶ 藤井照源師

 日蓮聖人は安房小湊でお生まれになって、鎌倉で辻説法、伊豆や佐渡への流罪、身延山、池上などさまざまな場所で足跡を残しておられます。
では皆さん、日蓮聖人のご生涯の中で一番長く勉学された場所はどこかご存じですか? 身延山や鎌倉、清澄といろいろとお思いになるでしょうが、実は12年間過ごされた比叡山横川定光院なのです。
清澄寺で出家された日蓮聖人は、お釈迦さまの本当のみ教えを勉強するために智慧の菩薩である虚空蔵菩薩に願を掛け、当時の仏教の最高学府であった比叡山 へと向かわれました。比叡山には延暦寺総本堂の根本中堂を中心とした“東塔”、そこから北へ1キロ下った“西塔”、さらにそこから4キロ離れた“横川”の 3つの地名があります。日蓮聖人をはじめ法然上人・道元上人・親鸞聖人ら、後に鎌倉新仏教と呼ばれる宗派の開祖のほとんどが横川で仏教を学びました。比叡 山はその特徴である論議、高湿度、寒冷、清貧を「論・湿・寒・貧」という言葉で表現しています。特に横川の冬の寒さは厳しく、日照時間が短いため雪が溶け る前にまた新しい雪が降り積もるような環境です。
では東塔・西塔・横川の3つから日蓮聖人はなぜ横川定光院を拠点とされたのでしょうか。
当時は身分などによって学ぶ場所が決まっていたようで、簡単に言うと東塔はエリート、西塔はそれに次ぐ人、横川は一般の人のための道場であったようで す。日蓮聖人はお釈迦さまの本当のみ教えを知るためには、より厳しい環境でなくてはならないという信念を持たれ、乗り越えられたのでしょう。
ところで日蓮聖人は横川で12年を過ごされましたが、なぜ12年間だったのでしょうか。いろいろな説がありますが、延暦寺を開創した最澄上人が自らの仏 教理念を示した『山家学生式』の中に、真の仏教者になるためには山中に籠もって修行する期間を12年とするべき、と書かれていることが理由かと思われま す。さらに最澄上人は12年間の最初の6年はその道場に腰を据えてさまざまな仏教教学を勉強しなければならないと定めています。きっと日蓮聖人は定光院か ら毎日東塔の根本中堂に通われながら天台教学などを熱心に勉強されたのでしょう。
後半の6年間は京都や奈良の都へ下り、当時の仏教8宗派の教義を学ぶ“八宗兼学”を修めました。真言宗醍醐派のお寺で血脈を相承するほどに各宗派を勉強 されていたのです。日蓮聖人の「真言亡国、禅天魔、念仏無間、律国賊」の四箇格言は他の宗派を完全否定し責めているように思われていますが、念仏なども自 分の中では認められ、教えを勉強した上での批判であったと私は思います。
さらに日蓮聖人は仏教の経典を集成した一切経(大蔵経)約6千巻を5回ほど読破されたと言われています。私たちは一生かかってもなかなか読み切れない量 で、法華経だけでも69,384文字あるといわれ、これをゆっくり読むだけでも1日以上かかります。日蓮聖人が一切経を読まれ、教学の確立に辿り着かれた のは定光院で過ごされた12年の間だったと思います。そして迎えた最後の年にお釈迦さまの出世の本懐は妙法蓮華経であるということを覚られたのです。これ を諦得といいます。定光院は法華経諦得の道場になるわけです。言い換えれば横川での修行がなければ、南無妙法蓮華経という世界は無かったのかもしれませ ん。
皆さんは、身延や池上、伊豆などには多く足を運ばれますが、定光院に参拝される人はまだまだ少ないようです。交通機関が発達していますが比叡山に登らないといけないですし、不便なことが多いからだと思います。
私は立教開宗以後、法華経の行者として歩まれた日蓮聖人のご活躍は、近畿ご遊学の12年間があればこそだと信じております。定光院の霊場に立っていると 日蓮聖人がそこにいつもいらっしゃるような気がし、私たちを含めて日本という国を救うために勉学に励まれたお姿を思い浮かべます。
日蓮聖人がひろく仏教を学び、そしてお釈迦さまの出世の本懐である法華経に出値った定光院にぜひお越しいただければと思います。

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