日蓮宗新聞

2013年2月1日号

阪神・淡路大震災から18年

復興と今なお残るつめ痕

6,434人の尊い命が失われた阪神・淡路大震災から18年。神戸市中央区東遊園地で1月17日に行われた「阪神淡路大震災1・17のつどい」には、復興を遂げた神戸から「頑張れ東北」「一日も早く復興できるように」などと書かれた東日本大震災の被災地へ向けての応援メッセージが数多く記されていた。「これが本当にあの大震災が起こった町なのか」と思うほど神戸の町は美しく整備され、復興した様子を見せる。しかし、神戸を訪れ、被災した人たちに話を聞くと、時間が経過してもいまだに「心」の復興ができていない被災者のいることがわかる。

◇あと5分あれば…
同つどいに4年前から参加している兵庫区妙法華院(新間智孝住職)檀徒のAさん(65)さんは「あと5分あれば母を助けることができたかもしれない」と長い月日が経った今もあの日のできごとを悔いていると語った。
震災時、明石市の自宅で大きな揺れを感じたAさんは車に飛び乗り、神戸市長田区に住む両親と妹さんの家に向かった。到着すると妹さんは倒壊した家から救出されていたが、両親ががれきの下敷きとなり生き埋めの状態になっていた。父親は近くにいた若い男性の力を借り、懸命な救助でどうにか助けられた。そして次に母親を助けようとした時、隣家の炎が両親の家に燃え移り、残念なことに救助することができなかった。「母が目の前で苦しんでいるのにどうすることもできなかった。悔しい気持ちは18年経った今も変わらない」。Aさんは遠くを見つめるようにそう語った。
現在、Aさんは毎朝4時に起き、仏壇を整えた後、「助けられなくてごめんね」と母への供養を18年間捧げ続けている。そしてAさんは「東日本大震災が起こったが、災害によってある日突然、肉親を失う気持ちはよく分かる。亡くなった人たちを供養し、必死に生きて欲しい」と語った。

◇町づくりは成功したのか
木造の長屋や住宅が数多く建てられていたために、火災の被害が最も大きかったとされる長田区にある北公園では日蓮宗青年会(川添泰寛会長)の読経供養が毎年、行われている。供養に参列するBさん(72)は「今は鉄筋の住宅が建ち並び、防災されているが、長屋などで当たり前に行われていた隣近所の住民の交流が失われた。震災はハード(建物や物)だけでなくソフト(心)をも奪ったのではないか。町づくりが本当に成功したのか疑問」と語る。

◇震災の影響残す寺院
震災時、多くの檀信徒の家屋が倒壊し、火災で全焼するなどしたが、同じように日蓮宗寺院も全壊などの被害があった。それらの寺院の現状を確認するため数ヵ寺を訪問すると、立派なお堂と庫裏が建てられており、復興のようすが見てとれた。その一方では、いまだに震災の影響を受けている寺院があるようにも感じた。灘区法隆寺(森安貞仁住職)の本堂は本震での倒壊を免れたが、余震などでの二次災害の恐れもあることから解体された。現在は一見すると一般の住宅のような本堂が建立されている。森安住職によると本堂建立の資金は義援金や宗門の助成金、貯蓄で全て賄えたという。森安住職は迎えた1・17について「まだまだ立ち直れない被災者はたくさんいる。東日本大震災ももうすぐ三回忌を迎えるが、希望を持って生きて欲しい」と述べた。
「まだ取材を受ける気にはとてもなれない」「忘れられるのが恐い」。前者は18年経った阪神淡路大震災、後者はもうすぐ2年を迎える東日本大震災の被災者の言葉だ。この言葉が私たちに教えることはあまりにも大きい。

 

兵庫東・日蓮宗青年会 神戸各地で慰霊法要
たくさんの人とともに合掌

兵庫県東部日蓮宗青年会(川添泰寛会長)の会員僧侶15人は1月17日の早朝、18年前の阪神淡路大震災発生時刻に合わせて神戸市内の各地で回向を捧げた。当時、小・中学生だった会員たちは、給水車からの水汲みなどを手伝ったり、学校の体育館が避難所となっていたための卒業式の中止など、子どもの立場で震災を体験した世代だ。会員の一人は「誰の責任でもない。ただ私たちにできるのは、お題目を唱え、犠牲者のご冥福をお祈りすることだけ」と語った。
中央区東遊園地で行われた「阪神淡路大震災1・17のつどい」では、会員たちが参加者とともに地震発生時刻の午前5時46分に黙祷。その後、青年会が会場隅で読経をはじめると言葉をかけずとも、参加者たちは会員を取り囲むように集まり合掌し、改めて犠牲者の冥福を祈った。
続いて長田区新湊川公園と同区北公園で読経、唱題、回向を捧げた。最後に兵庫区妙法華院(新間智孝住職)で慰霊法要が営まれ、川添会長は「18年前、“神戸の町は本当に復興できるのか”と誰もが思った。被災者の心情を考えれば、まだまだ復興とは言えない。しかし、阪神淡路大震災を経験した私たちは、昨日より今日は少しよくなっているというちょっとした変化を認識しながら、一歩一歩進んできた。東日本大震災の復興への道のりはまだまだ遠いが、同じように一日一日の変化を希望に変えてほしい」と語った。
また当日、宗務所(清水教信所長)主催の慰霊法要が、明石市本松寺(釋孝修住職)で武田隆遠布教師会長を導師に営まれた。

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