日蓮宗新聞

2011年9月10日号

お彼岸法話

ほどこしは我が身のたすけ 仏性を呼び覚まし彼岸への一歩を
静岡市 感應寺住職 元日蓮宗宗務総長 伊藤 通明 師

喜びと悲しみ
 私が生まれた前年の9月1日は関東大震災でした。母のお腹の中で揺れを感じていたようです。
それから89年、東日本大震災の惨状をみて想い出したことは、第2次世界大戦であります。原爆、空襲によって失った街が古里が、そして無

数の人命が瞬時にして消え去った光景が重なってきました。反面、日本中に元気を与え世界を感動させたのは、サッカー第6回女子ワールドカップ(W杯)ドイツ大会でした。「がんばれ東北」が「頑張った東北」になる日を祈ってやみません。
時を同じくして、大関魁皇が史上1位の通算1047勝を挙げ多くのファンに惜しまれつつ土俵を去りました。彼は毎年総本山身延山の節分会に詣でご祈祷を受けている熱心なご信者さんです。
あの悠揚迫らざる風格は信仰している人の姿でしょうか。

信じるということ
「仏法の根本は信をもって源とす」とは宗祖のお言葉であります。信仰するということは、先ず「信じる」ことが肝要であります。
お題目の功徳・神仏のご加護を疑っていたのでは信仰になりません。救いはありません。
例えば、

病人が医師の薬を疑って飲まなければ病は治りません。薬の成分も効能もわからなくても医師を信じて飲むことによって、病が治るようなものです。
谷に落ちて助けを求めている人に綱を降ろして助けようとしたが、引く人の力を疑い綱が途中で切れないか疑って手を出さないようなものであります。先ずは、引く人の力(仏さま)を信じ、綱の強いこと(法華経の教え)を信じて綱に取りつくことで救われるのであります。
信無くして此経を行ぜば手無くして宝の山に入り 足無くして千里の道を企つるが如し。
何れも宗祖のみ教えであります。

迷いから悟りへ
さて、彼の岸とは悟りの世界であります。仏さまは私達の心の住居として十階(界)建ての建物を与えてくれました。然し、教えも道も求めないで生まれっぱなしの人は六階(界)までしか住めません。
腹を立てては地獄界・欲しい欲しいで餓鬼界・愚痴の心で畜生界・喧嘩をしては修羅界、少し落ち着いて人間界・嬉しいことで天上界、これが永続きしないで又地獄界。この六界を毎日登り降りしております。(六道輪廻)
ところが、法を聞き道を求めてゆくとその上の七階(界)

即ち、声聞界・縁覚界・菩薩界、そして最上階であります仏界にまで登ることが約束されております。
その方法として、6つの行をしなさいとお示しであります。その第1が「布施」の行であります。施すということは、自分の欲を捨てて他のために尽くすことであります。
お金や物だけでなくても、人の為に骨折ってやること、助言してあげること、優しい言葉づかい、慈しみ深い顔つき目つき、親切心、人を喜ばせる等々の行いは、その気になれば誰でも、何時でも、何処でもできる施しの行であります。
大事なことは、布施の中には「浄施」と「不浄施」があります。
浄施は、人に施すことが自分の喜びであると思う施しです。一方不浄施は、人に施すことによってその見返りを期待する施しであります。
人に物を施せば我が身のたすけとなる。人の為に火をともせば自分の前も明るくなる。
この行いを続けることで一歩又一歩と彼の岸に近づいてゆくのであります。
私どもの心の中には当然仏になる種と煩悩が同居しております。
盗んだオートバイで河川敷を走っていた少年が、川で溺れている子どもを見て、着衣のまま淵に飛び込んで助けた。混雑する駅の片隅で、うずくまっている人を、横目で見て通り過ぎてゆく人の中、かけ寄って救急車を呼んで助けた。彼は保護観察中の人でした。
2人の行為は、内に持っている仏の種がなせるものであります。
衆生の仏性は雲の中の水、土の中の金、石の中の火、木の中の華の如く隠れて見えずと雖も、仏性の蓮は衆生の身内に納まれり。
宗祖のおことばです。この仏性を呼び出して六道をさ迷うことなく彼の岸を目指して精進を誓いたい彼岸であります。
平成33年、日蓮聖人ご降誕800年を目指して、もう一寸頑張ります。

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