日蓮宗新聞

2010年2月1日号

神戸・希望の鐘初披露 街に鐘の音と慰霊の読経

阪神・淡路大震災から15年を迎えた1月17日午前5時46分、神戸の市街地を一望する中央区諏訪山公園から、澄んだ鐘の音が響き渡った。被災直後から救援活動を行い、毎年、被災者と共に市民追悼のつどいを営んできたNPO法人災害危機管理システムEarth(石原顕正理事長=山梨県立本寺住職)が製作した「神戸・希望の鐘」がこの日初めて披露され、関係者・被災者の手によって打ち鳴らされた。深く伸びる鐘の余韻が周囲を包む中、参列者は悲しみをかみしめるように頭を垂れ手を合わせていた。
アースは17日、地震発生時刻に「早朝追悼のつどい」と、午前10時から神戸市勤労会館で「市民追悼のつどい」を行った。仮設住宅で石原理事長一人の読経による慰霊は、平成12年以降市民追悼式となって現在に至り、アースと被災者ネットワークが実行委員会(安田秋成委員長)を結成し準備にあたっている。昨年アースは「被災の教訓が風化することのないよ、形あるものを後世に残したい」と鐘の鋳造を発願、賛同の浄財が寄せられ完成に至った。
早朝追悼のつどいは、多くの参列者と報道陣に囲まれ営まれた。神戸市街を眼前に、ご宝前と希望の鐘が設置され、参列者が黙祷する中、石原理事長が鐘を3打。続いて安田実行委員長と参列者によって次々と打ち鳴らされる鐘の音が、アースメンバーによる読経とともに、6434人が犠牲となった神戸の地に染みわたった。
 市民追悼式も多くの参列者が会場を埋め尽くした。安田実行委員長は「我々は6400人の犠牲の上に生きていることを忘れてはなりません。生きている限りこのつどいを続けていきます」と挨拶。石原理事長は「事件・事故が多発し、年間30000人が自殺するという現実に追い討ちをかけるように、自然の猛威が大きな被害をもたらしています。犠牲者への鎮魂、平和な社会実現への祈りを捧げることが我々の使命です。多くの人が鐘の響きとともに祈りを捧げ、支え合っていくきっかけとなるよう願っています」と鐘にこめた思いを語った。
続いて僧侶と筑前琵琶奏者・川村旭芳氏による音楽法要が営まれ、ここでも参列者全員で祈りの鐘を打ち鳴らした。
この日ご宝前に、一体の観音像が安置された。持ち主は、毎年つどいの先頭に立っていた植本千恵子さん。植本さんは15年前、倒壊する自宅の中で観音様でできた隙間で助かったという。仮設住宅での慰霊祭も見守った観音さまだった。復興住宅に移ってからも高齢者の世話役として孤独死の見張り番をしていた植本さんは一昨年亡くなった。83歳の孤独死だった。「今年もこのようにつどいを開くことができて植本さんも喜んでいると思います」と安田実行委員長は目を潤ませた。
「鐘の音色に15年の苦しみと悲しみが込められているようで何とも言えず心に響きました」「懺悔の気持ちで鐘をつきました。生き残って多くの人に助けていただいたのに、私は何もできませんでしたから」「被災当時のことを話せるようになったのはここ数年です」「仮設住宅の時からこの法要を毎年心待ちにしています」と語った参列者の声。震災の痛みがいまだ続いていることは明らかだ。犠牲者にとっても残された者にとっても大事な意味を持つ1月17日。「元被災者、遺族の願いである限り続けたい」。これからも石原理事長はこの大事な一日を市民とともに過ごしていくつもりだ。

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