日蓮宗新聞

2009年12月10日号

いのりんぴっくin横浜 妙蓮寺で盛大に開催

 暖かい晩秋の日差しに恵まれた11月21日、神奈川県第一部宗務所(平塚幸光所長)主催の「いのりんぴっくin横浜」が、神奈川県横浜市の妙蓮寺(山本玄征住職)で盛大に開催された。いのりんぴっくは「環境・平和・いのち」を統一テーマに各地で開催されている宗門行事。子どもから大人まで3500人が来場した。たくさんの笑顔が咲き、祈りの火が灯された。

午前10時、小松浄慎宗務総長が東京都大田区の宗務院から運ばれた“祈りの火”を点灯し、玄題三唱を合図に開会セレモニーが開始。たくさんの稚児たちが華やかな衣装に身を包んで行列し、一輪ずつ祖師堂前で花を供えた。平塚所長が導師となり開式法要を営み、修法師が稚児たちの健やかな成長を願って修法を厳修。続いて、小松総長が「私たち一人ひとりがお互いに敬い合い、いのちの尊さに気付くことこそが仏さまの教えの根元です。みんなで安穏な社会を作っていきましょう」と呼びかけ、華やかに幕を開けた。
今回の“いのりんぴっく”の新たな試みは、来場者に願いごとを散華に書いてもらい、お経を受けて境内に飾られた“お願い散華”。来場者は何を書くか悩みながらも、思い思いの願いを込め、書き入れていた。
メーンステージではCMソングで活躍し、インドのブッダガヤに小学校を3校持つミネハハさんのコンサートが行われた。ミネハハさんは「歌うことは生きること、生きることは歌うこと」と、ストレートなメッセージに乗せて2ステージ各6曲を歌いあげた。またリズム感が楽しい池上太鼓や法華芸能の善部曲題目演奏、港南警察署や港北警察署の協力による防犯・防災講習も行われた。
イベント会場では、三遊亭神楽師匠の時事と日蓮宗の話題を取り入れた落語が観客を笑わせた。また大道芸人が手練の技で動物の形などを風船で次々と作り出したり、屋外に設置されたミニSLで子どもたちを喜ばせた。平塚所長は、「未信徒教化に繋げるためには、檀信徒の協力が必要。僧侶はもちろん檀信徒のおかげです」と、来場者の楽しそうな表情を見ながら語った。
展示エリアでは全国日蓮宗青年会が核兵器廃絶のための署名活動や、NPO法人・TM良薬センターのチャリティー販売、全国社会教化事業協会連合会の活動紹介など、日蓮宗の各団体の活動をパネルなどで紹介した。
 最後には『立正安国論』奏進750年記念管区法要が平塚所長を導師に執り行われ、メーンステージに作られたご宝前に、会場内のすべての人が祈りの火が灯ったキャンドルを捧げた。法要後、いのりんぴっくの次回開催地である埼玉県の三枝泰英宗務所長にいのりんぴっくのシンボルオブジェが引き継がれた。三枝所長は「日蓮聖人のご意志の、このともし火を末永く繋げていきます」と宣誓。続いて、平塚所長が「2年間の準備を経て、盛大に大会が開催されました。たくさんの人の厚情に感謝いたします」と、述べ閉式。たくさんの祈りの灯りは、夕日が沈むにつれてゆっくりと浮かび上がり、賑やかだった会場を静かに彩った。
次回のいのりんぴっくは来年の6月5日。埼玉県大宮ソニックシティで行われる。

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いのちのシンポジウム「21世紀仏教-危機と挑戦-」

人類の課題解決へ仏教の可能性探る

仏教は現代社会が直面している問題にどのような解決の道筋を示すことができるのかーー。いのちのシンポジウム「21世紀仏教ー危機と挑戦ー」が10月26日、京都市本山立本寺(上田日瑞貫首)で行われ、僧侶・檀信徒・一般参加者約300人が聴講した。ハーバード大学世界宗教研究所所長のドナルド・スウェアラー博士は基調講演で、「諸問題は私たちが足ることを知っていたらあり得なかった」と述べ、解決の糸口として仏教原理の重要性を指摘。続いて、武見敬三氏(日本国際交流センターシニアフェロー)と岡田真美子氏(兵庫県立大学教授)が加わり、柴田寛彦師(秋田県本澄寺住職)をコーディネーターにシンポジウムが行われ、人類の課題解決に向けた仏教の可能性を探った。
本堂で小松浄慎宗務総長を導師に法味を言上し開会。はじめに東洋仏教研究の権威であるスウェアラー博士が基調講演を行った。
スウェアラー博士は、人類が直面している危機を環境・経済・生命の三つの項目に分け、それぞれ仏教的な見地から考察。環境の項目では、草や木、土地自体も悟りに至ることが可能であるという仏教の世界観について述べ「動物も植物も救済されるというのは、人間以外の生命体にも価値があると考えてるから。現在環境を破壊しているのは人間であり、これを解決することが責務」と言及した。
また、「空前の発展を遂げた数10年を経て、私たちは多いこと、過剰さが必ずしもよいことでないことを学んだ。経済成長がもたらす豊かさは、必ずしも私たちを幸福には導かない」とし、「仏教では経済システムがいかに倫理的・精神的な開発にとって有効であるかが問題であり、それが貪・嗔・痴の三毒を成り立たせず、寛容や慈悲、智慧といったものを触発するかが重要。仏教は貧しさを奨励するものでも、富を中傷するものでもない。苦行と富の放縦の狭間にある“中道”とは、単に渇望を満たそうとする私たちの通常の先入観からの解放を可能にする理解と洞察を目的とするもの。人々は競い合い、できるだけ多くのものを得ようとしてきたが、そのことこそ私たちが今日直面している問題をもたらした。私たちが足ることを知っていたならば、それらの問題はあり得なかった。必要なことは、必要以上に得ようとせず、過剰さを慈悲心から分かち合うことができるようにすること」と述べた。
「生命」の項目では臓器移植や堕胎、安楽死、クローンなどの問題について、日系米人仏教学者のウィリアム・ラフルール氏のエッセイを引用。「彼の主張では、欲望が鍵となって人間増強の風潮が高まり、社会経済自体がこの欲望を増長させ、さらに悪化させていくという。仏教徒にとって欲望は人間の根本の問題。欲望の存在を受け入れどう処理するかが心の発展に重要なのです。欲望が人と社会の苦の原因になっているとは、仏教の基本的な教えです。人間改造の場合も、インフォームドコンセントなどのように、特定の倫理的な立場から検討することが望ましいが、仏教の精神修行によって、数ある欲望の中で何を許し何を許さないかの線引きをどこですべきかが求められる」と述べた。
スウェアラー博士は、いずれも仏教の根本的な教えが諸問題解決の糸口になるとし、最後に「横で傍観していてはなりません。21紀の諸問題に積極的にいかなければなりません。これらの解決法は政治家や経済学者、科学者、技術専門家のみならず、宗教的・精神的な考え方を以って人間環境を理解し、繁栄のための生態系を築き上げることを目指す人の力にもかかっている」と締めくくった。
続いて「人類の直面する世界的な諸問題(環境・平和・いのち)の解決に仏教はいかに貢献しうるか」と題しシンポジウム。はじめにパネラーとして加わった武見氏と岡田氏が発言した。
武見氏は、今日の国際課題に対処していくためには、従来の国家を中心に据えた考え方では不十分な時代となり、個々の人間の生存・生活・尊厳に対する広範かつ深刻な脅威から人々を守り、それぞれの持つ豊かな可能性を実現するために、一人一人の視点を重視する「人間の安全保障」という考え方が必要であると発言。その基本単位となるコミュニティーにおいてお寺や仏教が大きな役割を担っていると期待した。
岡田氏は、脳神経倫理学では人の行いを左右する道徳感情が、好きか嫌いかを判断する場所に関係していることを述べ、無理なく繰り返し実践して心に深く働きかけ、私たち一人ひとりが価値基準を転換していくことが必要。それには仏教の役割が大きいと述べた。
次に、コーディネーターの柴田師が、自然と人間の関係、いのちのとらえ方などをそれぞれ問いかけていく形でシンポジウムが進められた。
スウェアラー博士は「仏教はいのちの内面と外面世界の相関性を一貫して即時に確立できる。地球危機の解決へはとにかく原点に帰り、それに新しい解釈を加えて行動すること」と述べた。岡田氏は「欲を一つでも叶えることを良しととする考えから、欲を八分目にして残りを他の人に与える幸せがあるんだという価値の転換をはからなければいけない」と説き、一つの例として自らのダイエット体験を紹介。やせていく姿を見て学生も次々とダイエットを始め、満腹=幸福の価値基準が変わったこと、実践し示していくことの大事さを伝えた。武見氏は「私たちも自然の一部であり、謙虚な気持ちでいること。人類は知力、精神性を持つ生命体。地球全体を考えて生態系を維持する新しい仕組みをもう一度考えていく責任が人類社会にある。人間観の再構成が必要であり、仏教には人類社会で貢献しうる人間観がちりばめられている」とした。
最後にスウェアラー博士が「二つの重要な点を示して締めくくりたい」とし、「一つは、自ら実践して示し人の模範となることは、誰かを変えようと思ったり我々それぞれが思うよりも大きな影響力を持つこと。二つ目は、コミュニティーを形成しそこに属することが大きな力となる」と述べた。
シンポジウムの後には、第二部として「いのちのコンサート」が行われた。小児ガンを乗り越え命と真正面に向き合いながら歌い続けるシンガー・ソングライターより子さんの澄んだ歌声と、二胡奏者ウェイウェイウーさんの琴線を振るわせるメロディーが夕暮れに包まれた本堂で参加者を魅了した。

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2009年12月1日号

管区寺庭婦人会代表者会議 開かれたお寺づくり

管区寺庭婦人会代表者会議が10月29、30日、京都市のホテル京阪京都と本山本法寺(大塚日行貫首)で開かれ、開かれたお寺づくりに向けた寺庭婦人の役割と可能性について72人が研修と意見交換を行った。
はじめに齊藤憲一伝道部長が挨拶に立ち「檀信徒や地域とのコミュニケーションは寺庭婦人にかかっていると言っても過言ではない」と激励。続いて「開かれた寺院づくりのために」と題し、青少年教化・寺子屋・ビハーラの活動に携わる僧侶3人が提言を行った。
日蓮宗青少年教化ネットワーク事務局長の大西秀樹師は、日本人の劣化・幼稚化を指摘した。「日本人の劣化を食い止めるのが青少年教化。お題目に触れていない多くの未信徒・青少年に意識を向けることが必要」とし、ある神父を訪ねたエピソードを紹介。神父はキリスト教が日本で広がらなかったのは日本人が持つ先祖崇拝の心にあるとし「その思想では両親、先祖の命すべてが死なずに自分の中に含まれている。その素晴らしさに日本人は気づいていない。昔は〝先祖に合わせる顔がない〟と叱っていた。これをなぜ僧侶が説かないのか」と諭したという。大西師は「宗教道徳を養うことが宗門運動の根幹。今始めなければ手遅れになる」と危惧した。
全国日蓮宗青年会(全日青)の光岡潮慶会長は、地域密着型寺子屋活動を紹介。光岡会長の地域では信徒・未信徒にこだわらず子どもを集め、神仏への祈りの心を育むため先祖に感謝の手紙を作成したり、日本の文化を伝えるお茶会を実施。その活動に「何か手伝いたい」というボランティアや金銭的・物質的支援の申し出が多数あがり、お寺が世代を超えたコミュニティーの場となっている実体験を語った。また「寺子屋を行う上で、保護者や地域との連携を図るには女性の心配りが必須。寺子屋が和み、子どもが安心する。育児や家庭問題などの相談を受けることもあり、僧侶と寺庭婦人が二人三脚で取り組むことが大切」とまとめた。
日蓮宗ビハーラネットワーク世話人の奥田正叡師は「ビハーラとは安心して悩める場所。今、宗教者に求められているのは、安心して話を聞いてもらえる場を提供すること」とし、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の詩こそ苦しみを負った人に寄り添うビハーラの原点と紹介。「話を聞いて認めてあげる。それができるのは寺庭婦人の力に期待するところが大きい。住職と両輪の輪でがんばって」と述べた。
続いて、「開かれた寺院づくり」をテーマにしたパネルディスカッションが、寺庭婦人5人をパネラー、北山孝治伝道推進委員をコーディネーターに行われた。はじめに北山委員が「公共性を持った活動を考えていかなければ、檀家制度に立脚したやり方は近い将来通用しなくなる」と問題を提起し、パネラーを中心に参加者が管区や寺院単位で行われている活動を発表。若い母親への「子育て応援」、葬儀の席に出かけての「和讃奉唱」、檀信徒や地域住民の特技発表の場となる「お寺の文化祭」、小学校で「茶道の指導ボランティア」、月に一度の悩み事相談「心のクリーニング」、年代別に分かれて礼儀作法やお経を学ぶ「婦人会」など多彩な活動が紹介された。なかには、地元のラジオ番組に出演し神仏やお寺の話を発信している例や、お経をあげたお花を自由に利用できるように設置したところ墓参が倍増した例もあり、行動力と豊かな発想に感心の声が寄せられた。
「身延山で行われていた寺庭婦人研修道場を復活してほしい」という要望もあがり、「資質が向上する」「お寺に嫁いだ自覚を得るためにも必要」と賛同が相次いだ。
翌日は本山本法寺で宝物館を拝観。日蓮仏教研究所の都守基一主任から京都国立博物館で開催中の特別展「日蓮と法華の名宝」の見所を聞いた後、特別展を拝観した。

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新年のご挨拶。

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