日蓮宗新聞

2007年12月1日号

日蓮宗寶土寺本堂の落慶法要

“韓国の立正安国”の拠点 信徒の篤い思いが結実

 「ナムミョウボプニョンファキョン(南無妙法蓮華経)」――韓国に日蓮聖人の正しい教えを弘めることを志し、平成11年から布教活動を行っている禹法顯師。立正安国の「立正」とは信仰を固めることと、“韓国の立正”の拠点を作るべく奮闘してきたが、この度、その拠点となる念願の本堂が完成し、韓国信徒の熱心な唱題のもと篤い思いが結実した。また今回、はじめて小松浄慎宗務総長の韓国巡教も行われ、今後韓国でのさらなる布教、発展が期待される大きな機会にもなった。

韓国京畿道廣州市にある日蓮宗寶土寺で10月7日、本堂の落慶法要が営まれ、日本からの参拝団、地元信者や近隣住民など約400人が参列した。
法要に先立ち、午後零時半から本堂に掲げられた額の懸板式が行われた。小松宗務総長と平成3年から韓国で布教活動を行ってきた禹師の師匠・影山信雄師(千葉県泰福寺住職)をはじめ地元韓国の曹渓宗僧侶など6人で幕が引かれ、本堂を意味する「大雄寶殿」の額がお披露目された。

 午後1時、信徒の女性2人が灑水散華を行い、堂内を厳浄した。続いて、點燈供養、米・果物・花・茶・香・ロウソクの六種を供養する六法供養が行われるとご宝前が壮麗となり、信徒が宗歌「立ち渡る」の合唱を行った。
稚児が花を播きながら入堂すると法要開始。小松宗務総長を導師、瀬川観照師(千葉県妙照寺住職)、舘岡壽宣師(千葉県行法寺住職)を副導師に、有志僧侶4人が出仕して法要が営まれた。
式中、小松総長が読み上げた慶讃文では、本堂落慶に到るまでの影山師、禹師の韓国での布教の苦労や経緯が語られた。
小松総長は祝辞で「禹上人には自身が機関誌に綴った『法華行者の願いは必ず叶う。私の役目はその信者さんたちに希望を与えること』との思いを胸にさらなる上求菩提下化衆生の精神を精励せられ、法華経の行者たる自覚と確信を求めて、ご活躍されんことを切望いたします」と激励の言葉を述べると共に、影山師や参列の信徒の精進を讃えた。
 次に寶土寺信徒で建設工事を担当した李 基文氏に感謝表彰が行われた。
最後に影山師が謝辞に立ち「多くの人が集まって、このお堂ができました。皆が仲良くするために、私たちはお釈迦さまの教えを信ずるのです。お釈迦さまはこの本堂で教えを説いて下さいます。これから、もっと多くの人々が、お釈迦さまの教えを聞くために、ここにおいでになることを願っています」と韓国語で挨拶。今回、影山師は13年間の布教の中で初めて韓国語での挨拶を行い、多くの信者は盛大な拍手を送り、また感激で涙する姿も見られた。禹師は感極まり涙に言葉を詰まらせながら、影山師への思いと謝辞を述べた。
法要中の読誦はすべて韓国語で行われ、お堂の中には信徒の熱い思いの込められた読経とお題目の声が充満していた。
続いての清興では、信徒による韓国民謡などの合唱と、韓国古来の楽器・伽耶琴の演奏が行われ、堂内は和やかな雰囲気に包まれ、終了した。

 その後、会場を移して祝賀会を開催。増田寶泉師(千葉県妙源寺住職)から持田貫宣千葉県本山藻原寺貫首の「影山上人の行動力と精進、それについて頑張った禹上人精進のお陰です。今後お題目の声が高まることを望みます」と激励の祝辞も披露された。禹師は「韓国で布教を始めて7年になりますが、皆さんの支えがあったからこそ今があります。このご恩はお題目で返して行きたい」と挨拶した。
会場では韓国、日本の信徒が言葉は通じなくともお題目でつながっていることを確かめ合った。

「法華経を弘めることが御恩に報いること」
禹師が現況を報告

 落慶式の翌日、禹師が小松総長に韓国の現況を報告した。
韓国では“お寺”はお釈迦さま、僧侶がいて、本堂がある所という考え方が一般的で、本堂も伝統的な造りをしていなければ認められないのが実情だという。しかし「日蓮宗は韓国では新興宗教と同じ扱いだが、小松総長が巡教されたこと、本堂が建ったことで“仏教のお寺”として認められたと思う」と語る禹師はこれを機に、関心を持つ人も増え、日蓮宗として輪が広がっていくだろうと話した。
現在、韓国での信者は約130人。禹師は「5年もすれば安定もし、強固な組織となる思う」と話し、最近ではホームページを見たという大邱市から連絡もあり、今回の法要にも参列に来たという。「若い人が多く、活気があるので時機を見て力を入れていきたい」と今後のさらなる布教に意気込みを見せた。
禹師はわずか7年で仏像を迎え、お寺・本堂が完成できたことは奇跡だと話し、「お題目を唱えている皆だからこそ、力を出して下さった。この地でお題目を、法華経を弘めることが、皆さんの御恩に報いることだと思っています」と支えてくれた韓国の信者、日本の人々に深く感謝していた。
禹師は今後、「お題目を唱え、お題目と縁を結ぶ人を増やしていきたい」と韓国での活動にさらなる精進を誓った。また、禹師の妻・閔兪美さんも今後、僧侶資格の取得をめざし夫婦一丸となり寶土寺を信徒と共に支えていく。
寶土寺では第1日曜日に先祖供養、第3日曜日に祈祷供養、毎週水曜日に教学の勉強会を行っており、多いときでは信者百人が参列し、熱心にお題目を唱えている。毎月5日間はソウルの信者数人を連れて釜山に通い信行会や信者同士の語りの場を開いている。また大邱に立ち寄り布教活動も行っている。

本堂建立へいばらの道
韓国布教志した 影山信雄師

影山信雄師(千葉県泰福寺住職)が縁あって韓国布教を志したのは平成3年(1991)。その頃の韓国は創価学会や日蓮正宗の信者が多数いる中、影山師はソウルに広宣寺を開堂した。ソウルや釜山で布教活動をしていたが信者の多くは正宗や学会を脱会した人だった。
翌年、新たな布教所・ソウル佛國山寶土寺、釜山実成寺を開いたが、広宣寺の信徒が各地に布教所を開設することに対し不満を唱え、韓国法務部に訴えて、影山師は韓国へ入国禁止となってしまった。しかし1年後、釜山の信徒の努力によって影山師の入国禁止処分が解けた。
その頃、日蓮正宗の信者だった禹師の父親が影山師と縁を持ったことをきっかけに「日本に行って日蓮聖人の正しい教え、正しいお題目を学んで来て欲しい」と禹師に懇願。その意志に応え、平成6年に影山師について得度し、立正大学に入学し、学寮で行学の二道を積んだ。その間、影山師は韓国と日本を行き来し、韓国の信者を導いていた。

平成10年に、5ヵ所の布教所が集まってソウル北部の道峰に新正善寺を設立。翌年、大学を卒業し日本での修行を終えた禹師が新正善寺に住し、信徒の指導を開始した。その傍ら寒壱百日の苦修錬行の荒行を二度成満し、禹師の布教への誓いは一層強いものとなった。
同14年、寺地を求め、京畿道廣州市に新正善寺と寶土寺を合併させ佛國山寶土寺を開堂した。
庫裡の一部にご宝前を整え活動をしていたが、平成18年に本堂建立の気運が高まり、韓国の信徒による募金が始まった。歩いてお寺まで通い、バス代を寄付する信徒がいるなど、本堂建立に向けて一丸となって精進し、お題目を唱え、法華経を信じ続けた。信徒の閔忠根(ミン・チュングン)氏から隣接地60坪の寄進を受け、建立が本格化し、日本からの支援も受けこのたび結実、落慶となった。

韓国の宗派の現状
国民約5000万人に対し、約28%がキリスト教(カトリック20%、プロテスタント8%)、約25㌫が仏教。社会や文化に儒教の影響を強く受けているため、両親への孝養や先祖崇拝などの思いは強い。
韓国で大部分を占めるのが禅宗系の曹渓宗で、他に観音宗や天台宗、華厳宗、太古宗などの宗派が存在する。

喜びの信徒たち
導いていただきたい

◇寶土寺蓮華山岳会の朴 鍾浩会長「落慶法要ができた喜びは言葉で表すことができません。仏さまの教えを受取る本堂を持つことを望み待っていた信徒たちの願いが叶った日でした。これから信徒たちは心を一つにして韓国すべての都市に日蓮宗が広宣流布することができるよう、一生懸命努力していきます。寶土寺は歩きはじめた赤ん坊です。日本の僧侶や檀信徒の方々が私たちの手を握り導いてくださったら、韓国での日蓮宗は成長し、全国にお題目の声が広まると思います」

信徒一丸努力していく

◇毎日お寺に通う崔 琪密さん「本堂建立の資金問題に心を痛めていましたが、今日を迎えることができ心から感謝しています。小松総長が寶土寺に訪れたことは、韓国の広宣流布に大きな発展があると信じています。私たちは仏法僧の三宝が備わった日蓮宗が全国に流布することを信じて、禹上人、信徒一丸となって努力していきます」。

喜びに満ちた心
◇寶土寺婦人部副部長の李 恩在さん「落慶式は涙が出るほど感激し、本堂ができたことで心は喜びに満ち、今までの苦労が消えました。これからも法華経を信じ、仏子となるため努力をして、朝夕の朝勤を一生懸命していきます」。

小松総長の来訪に感激
◇熱心な信者の白 敬子さん「小松総長が来てくださったことにとても感激し有難く思っています。日蓮宗の発展の大きな出発点になると思います。仏さまの教えをもつ仏子として模範になるために一生懸命努力します」。

新興宗教の勢力が強い中、韓国の信徒たちは日蓮宗の広宣流布を信じ、熱心にお題目修行に励んでいる。

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新年のご挨拶。

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