日蓮宗新聞

2005年7月20日号

人権擁護委員会が研修会

日蓮宗人権擁護委員会(植坂行雄会長)では6月13日、人権研修会を東京・池上の日蓮宗宗務院で開催。僧侶や一般の人約50人が参加した。
青木和雄氏が「子どもの心を聴こう」と題して講演(別項に要旨)。青木氏は長年にわたる教員生活の後、教育カウンセラー、法務省人権擁護委員また保護司として親と子の相談に関わってきた経験から、大人がいま、子どもたちにすべきことを訴えた。
その後、青木氏と共に子育てに悩む親や、青少年の相談に関わっている吉富多美氏が講演。自らも母親である立場から、「環境や状況が変われば、自分も虐待をしていたかも知れない。誰にでも虐待の可能性はある」と警鐘を鳴らした。
青木氏と吉富氏は経堂で、虐待やいじめ、少年犯罪など、子どもの心の問題を浮き彫りにした作品を多数執筆。中でも、『ハッピーバースデー』(金の星社)は、4月の刊行から2ヵ月で20万部を売り上げるベストセラーになっている。

人権とは存在を認めること
昨今、子どもたちに関わる事件が多く、子どもたちは“変わった”とか“キレやすい”と言われています。
しかし、子どもは簡単にはキレません。我慢し、耐えているのです。子どもをキレさせるまで追い込んでいるのは、大人ではないでしょうか。
昔も今も、子どもが未熟であるという本質は変わりません。未熟さゆえの失敗や過ちがあり、失敗を繰り返しながら成熟した大人になっていくのです。しかし、「我慢しなさい」「怒っちゃだめ」と、小さい頃から感情を抑圧されると、表出を押し止めることでストレスが溜まります。それが我慢できなくなった時、火山が噴火するように子どもたちはキレるのです。
キレたり非行に走ったりするのは、子どもたちの「こっちを見てくれよ」という命がけの叫びです。その叫びを、強く罰することだけで切り捨ててしまったら、本当の心は出てきません。子どもの将来をつぶしてしまうことになるのです。
泣きたい時には泣き、悲しい時は悲しんで、悔しい時には悔しがる。感情を抑えつけずに表出させ、大人がそれを肯定的、共感的に受け止めることが大切です。信頼し尊敬する大好きな父親や母親に「私の気持ちがわかってもらえたんだ」そう思えた時、子どもたちには生きていくエネルギーが沸いてきます。
しっかり話を聴いて受け止めた上で、間違っていることには「すごくわかる。わかるけれども間違っているように思うよ。人の道からはずれているようにお父さんは思う」と自分の考えを伝え、失敗を心の糧となるように活かし、導いていくのが大人の役割です。
「僕、どう生きたらいいの?」その答えを、子どもたちは父親や母親に求めています。ですから、自分なりの哲学をもって子育てにあたって下さい。子育てのゴールは「どう生きるか」を伝えることなのですから。

声が出ない子愛せない母親 虐待の連鎖
こんなケースがありました。相談に来たのは、五歳の女の子を連れた母親。「この子はお兄ちゃんと比べてのろまでグズで、どうしようもないんです」そう話す母親を、女の子は恨めしそうな、とても悲しそうな顔で見上げ、自分の喉をギュッとつまんでいます。すると母親は「また喉をつまんでる」と、その手を邪険に振り払いました。手を離した女の子の喉には紫色のしこりができていました。
「お子さんが喉をつまむことで相談に来られたのですか?」母親に聞くと、「いえ。実はこの子、昨日から声が出なくなったんです」と言います。話を聞くと、母親は女の子に向かって「あなたなんか生まなければよかった」そう言ったのだそうです。女の子の声が出なくなったのは、その翌日でした。
よくよく話を聴くと、その母親にも、子どもの時に母親に愛されなかったという心の傷がありました。それが解決されないまま大人になり、子どもを愛することができない母親になってしまったのです。虐待の連鎖でした。
それでも女の子は「お母さんのこと、好き?」と聞くと、うん、とうなずきます。「大好きなの?」ともう一度聞くと、うん、うんと何度も大きくうなずきました。
「私はお母さんのことが大好きなの。でもお母さんは私のことを好きって言ってくれない。それは私が悪い子だから。いい子になるからお母さん、こっちを向いて」。
声にならない女の子の心の叫びが、私の心にびんびん響いてきました。
一人間としての存在を母親に否定され、たった五歳で声を失うほどの辛い思いをした女の子。自分の喉をつまみ、皮膚の痛みを感じることで、心の痛みを癒していたのでしょう。

子どもに愛を注いでください
存在の排除は最悪の人権侵害です。「○○さえいなければいい」そんな心ない言葉で傷ついている子どもたちが大勢います。自分を尺度にせず、人の痛みや辛さを想像する力を持つことが大切です。人権とはその人の存在を認めることだと私は思っています。
そして、子どもに溢れるほどの愛を注いでいってほしいです。愛されたという記憶は、豊かな心の糧となるでしょう。

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