論説

2025年3月20日号

第2次世界大戦後80年にあたって

■被団協にノーベル平和賞
「ふるさとの街やかれ/身よりの骨うめし焼土に/今は白い花咲く/ああ許すまじ原爆を/三度許すまじ原爆を/われらの街に」
私たちの学生時代には、歌声喫茶という喫茶店があった。若者が集い、コーヒーを飲みながら歌を歌って、青春時代の意気を上げていたものだ。
広島で14万人、長崎で8万人があの世界初の原子爆弾で犠牲になって今年は80年になる。その悲惨な情景は、語り継がれたり、書かれたり、描かれたりしていて、その祥月命日には広島・長崎はもちろん各地で追悼供養が営まれてきた。
その追悼式では、犠牲者の霊たちに供養を捧げると同時に、絶対悪である核兵器が、この世からなくなることを願う祈りでもあった。
この願いは、犠牲者だけではなく、世界人類の願いとして、今や世界中に広がっている。
特にこの度、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のノーベル平和賞受賞を契機に核廃絶の気運が世界中で盛り上がっていることは、世界平和を希求する私たちにとって、本当にありがたいことだ。
冒頭の「原爆を許すまじ」の歌を作詩した浅田石二さんは、今年92歳で元気に生きておられ、この歌で戦時のことを呼び覚まし、世界中で平和への願いが強まることを願っていると語っている。
ちなみに、この歌の2番の歌詞は「三度許すまじ原爆を/われらの海に」であり、4番は「三度許すまじ原爆を/世界の上に」で締めくくられている。
この歌は「被団協」の団歌といってもいいといわれている歌である。
■世界万国戦争犠牲者供養の時
私の小学生の時が第2次世界大戦の真っ只中であった。近所や檀徒が応召や志願で出征する時は両親と共に見送りにいった。旗を振り歌を歌って賑やかに見送ったことを覚えている。
「勝って来るぞと勇ましく/ちかって故郷を出たからは/手柄たてずに死なれよか/進軍ラッパ聴くたびに/まぶたに浮かぶ旗の波」
出征した人たちの大半は帰らず1軒で3兄弟が戦死した家もあった。私はこの時みんなで歌った歌を、いつの間にか覚えて、未だに忘れることはない。
戦没者の供養の時は、いつもこの歌を心に響かせて、お国のために尊い命を捧げてくれたことに心から感謝を申し上げている。
■一閻浮提第一の御本尊
時あたかも2022年(令和4年)は、『観心本尊抄』述作・閻浮第一の大曼荼羅御本尊佐渡始顕750年の記念の年であった。
世界は核兵器を廃絶し、世界平和の構築に向かっていくべき時であるにも関わらず、混沌としてきている。
自国第一主義ではなく、人類世界第一主義の下に、共に生き共に栄えていく時である。
一閻浮提第一の大曼荼羅は、宇宙の大霊ご本仏さまの大光明に照らされて、世界人類大和楽の世界が顕現されている姿である。
日蓮聖人は、自国も他国も、生者も死者も、天下万民ご本仏さまの大慈念の下で、お題目を一心に唱えよといわれた。今や一大唱題運動の時がきている。
戦後80年にあたって、まず私たちは戦没者の供養に、お題目を捧げていくことである。
次に原爆犠牲者への供養の唱題運動によって、核兵器廃絶への日本の使命が果たせるようになることを期待したい。
さらに戦没者の供養によって、日本が戦争を放棄したその功徳を頂くことができるのではないかと思う。楽しい日本の国づくりは、ここから生まれてくる。  (論説委員・功刀貞如)

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2025年3月1日号

「いのち」の在り方を問う

日蓮宗では「いのちに合掌」を布教方針として、布教活動を展開しています。布教方針における「いのち」とは、単に生きものだけではなく、地球上に存在する森羅万象のすべてに宿っている「いのち」のことです。人間や動物はもちろん、植物やさまざまな品物、無機質の存在にまで宿るいのちを指します。
すべてのいのちは、大地や海、大宇宙という大きな器に支えられて存在しています。個々のいのちは互いに繋がり、支え合い生死を繰り返しています。いのちは自然のサイクルで循環しています。大自然の営みの中で、殊に人類は自分たちの存在を最優先に考え、自然環境を破壊し、他のいのちを奪って歴史を築いてきました。戦争により多くの人間や大自然のいのちを奪ってきました。その悲劇は現在も繰り返されています。人類中心の考えから、すべてのいのちを大切にし、地球全体の平和な環境作りに向け方向転換すべき時代ではないでしょうか。
日蓮宗が提唱する「いのちに合掌」は、今年4月から開催される「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)の開催理念とも共通します。その理念は「人類は自然環境を破壊し他の集団の犠牲の上に不均衡な社会を作り上げてきた。その反省を踏まえ、地球上に存在するすべてのいのちの共通性と相違性を理解し、共感を育み、文化の多様性を尊重し、今後起こるさまざまな課題に新たな価値を生み出し、持続可能な未来を構築する、〝いのち輝く未来社会のデザイン〟を開催目的とする」(要約)です。
未来に向け「いのち」の在り方を問う大阪・関西万博の開催理念。まさに、日蓮宗が宗門運動「立正安国・お題目結縁運動」のスローガンとして掲げ、現在、布教方針として継承している「いのちに合掌」の精神と合致します。
大阪・関西万博では、その目的実現のため8つのテーマを掲げました。「いのちを知る」・「いのちを育む」「いのちを守る」・「いのちをつむぐ」・「いのちを拡げる」・「いのちを高める」・「いのちを磨く」・「いのちを響き合わせる」です。これらのテーマは、来場者に「いのち」を考える大きなきっかけとなります。各パビリオンでは、開催趣旨に賛同した企業や芸術家たちにより、さまざまなプロジェクトが展開されます。
万博会場の中心に位置する日本の「シグネチャーパビリオン」では、各界で活躍する8人のプロデューサーにより、テーマごとに「いのち」をめぐる催しが展開されます。たとえば3万6千㌔離れた場所から、4㍍の巨大ビジョンに映し出された地球上の卵の中で成長してゆく生命の姿を、超高性能精密映像で映し出します。私たちの日常感覚では捉えきれないスケールの映像を観ることができるでしょう。また、生物の死後、分解されていく過程で微生物などの生命が誕生し成長します。肉眼では観ることができない生命活動の微細なプロセスが解明されます。密かに存在し繰り返されている生命の循環・物質循環の過程を高性能映像で観察できます。「生命の循環」の映像は、いのちの在り方を考える上でとても興味深いものです。
大阪・関西万博の理念「いのち輝く未来社会のデザイン」に魁て、日蓮宗が提唱してきた「いのちに合掌」の精神。不軽菩薩(お釈迦さまの修行時代)が、出会うすべての人びとを「仏さま」と観て、合掌礼拝を続けた「但行礼拝」の精神をバックボーンとしています。私たちもすべてのいのちを仏さまと感じて合掌しましょう。他者のため、自然環境のために1人ひとりが少しの努力をすることにより、すべてのいのちが仏さまとして輝き未来が明るくなるでしょう。「いのちに合掌で輝く未来を」。(論説委員・奥田正叡)

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