論説

2016年8月20日号

広島平和宣言と立正安国・お題目結縁運動

  広島原爆忌
 広島は世界平和・核兵器廃絶を祈る原点である。
 今年も8月6日の原爆忌に、この原点の地に立つことができた。例年にならい8月5日には終日、平和公園の原爆死没者供養塔の前で撃鼓唱題することができた。翌6日の正当には「広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」に参列している。
 猛暑のさ中、全国からの大勢の参列者で会場はあふれた。特に中学・高校生たちが、団体で各地から参加していた姿に接し、日本の平和のために、何か頼もしさを覚えてうれしかった。
 被爆地に立って、原爆の犠牲者の痛みを思って慰霊し、平和の大切さを心の底から涌かして核廃絶を祈る真情に、私たちの生きる目標への誓願が生まれて来るからである。
 今年の「広島平和宣言」もすばらしかった。
 米国の現職大統領の初訪問を受けて後の原爆忌であっただけに、核廃絶への情熱を込めた平和宣言であった。
 「今こそ、私たちは、非人道性の極みである『絶対悪』をこの世から消し去る道筋をつけるために、ヒロシマの思いを基に「情熱」を持って「連帯」し、行動を起こすべきではないでしょうか」と核廃絶への行動を促している。
 そのためには「核兵器禁止の法的枠組み」をつくることであり、オバマ大統領や安倍首相に対して、リーダーシップを発揮するように期待している。

  核廃絶への道
 現在世界には、1万5千発を超す核兵器が存在している。核不拡散どころか核保有国が増え、特に北朝鮮は公然と核開発を進めている。
 広島を訪問したオバマ大統領は、その後「先制不使用」の核政策の再検討を始めたと報じられている。
 先制不使用とは、核を先に使わないと国際社会に約束することで、中国とインドが採用している。
 米国がこの不使用の宣言をすれば、核兵器廃絶への大きな前進になるであろう。
 さらに国連では、非人道的で絶対悪の核兵器を国際法で禁止しようという動きもあるという。
 しかし保有していれば、窮地に立たされた時、使わざるを得ないということがあるかも知れない。だから持たないことが第一である。
 危機管理の難しい不安な時代が到来している。核廃絶を急がねばならない。
 「核のない世界を目指す」オバマ大統領への期待を込めて、ノーベル平和賞が贈られた。大統領退任後も、オバマ氏には平和賞の面目にかけても、人類の先頭に立って核廃絶のために活躍していただきたい。
 私たちも核兵器が一日も早くこの地球上からなくなるように、祈りの行動を盛り上げていこう。

  立正安国・お題目結縁運動
 『立正安国論』に云く。
 「弟子一仏の子と生まれて諸経の王に事う。何ぞ仏法の衰微を見て、心情の哀惜を起こさざらんや」(仏弟子である私は久遠のご本仏の子としてこの世に生を受け、諸経の王である法華経に仕えております。命の尊さを教えている仏法の教えが、世の中で軽視されているのを見て、何で悲しまないでいられましょうか)。
 人類は兄弟であり、同胞である。お互いに敬いあい、助けあい、平和な世界を顕現して、幸せになるためにこの世に遣わされたいのちである。
 殺し殺される武器の最たるもの、核兵器などを存在させていいはずがない。ご本仏の大慈悲のお題目を唱えて核廃絶を祈ろう。
(論説委員・功刀貞如)

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2016年8月10日号

苦難を乗り越え開催 リオ五輪

 8月5日、オリンピックとパラリンピックが、ブラジルのリオデジャネイロで始まった。8月21日まで17日間の熱戦が現在繰り広げられている。
 リオデジャネイロが選ばれるに当たっては、東京、マドリード、シカゴの争いがあった。しかし、南半球の国、経済力をつけつつある新興国ということで、リオが選ばれた。
 これが決まったのは、2009年10月で、この頃のブラジルは、石油資源やサトウキビから作る新燃料バイオエタノールの生産国として、成長が期待される新興国であった。世界の経済の注目を集めていた高度成長期に、ブラジルはオリンピック開催を名乗り出たのである。
 ところが、その後石油の値段が下がり、バイオエタノールの生産も採算がとれなくなって、外国の資本がブラジルから引き上げられることになった。さらに、貿易依存度が高かった中国の経済減速が、ブラジルの足を引っ張り始めた。
 ブラジルの政界は、現在国営石油会社ペトロブラス社の裏金献金疑惑で、揺れている。ルセフ大統領も、職務停止中で、弾劾裁判がこのオリンピック期間中も開かれることになっている。
 そのため、今回大統領の代わりに、ミッシェル・デメル大統領代行がオリンピックの開会宣言をした。
 リオ五輪は、始まる前から、色々の問題が指摘されていた。
 強盗・窃盗・殺人などの犯罪が多発しているため、リオの日本総領事館の情報では、注意度レベル1(十分注意)となっている。盗られないように、人前でスマートフォンを出して見せるななどという注意も出している。
 主競技場、エスタジオード・マラカナン競技場の工事の進捗状況も、IOCのコーツ副会長が「アテネより悪い」と酷評したほどで、地下鉄工事もオリンピックには間に合わないのではないかと懸念されていた。
 ヨットのセーリング競技の行われるグァナバラ湾も、大小のゴミが浮き、セイリングのヨットに傷がついてしまう懸念もあるという。
 7月22日にはイスラム国に共鳴した若者が逮捕されるなど、テロの危険も懸念の材料である。ブラジル政府は、空港・駅・競技場・選手宿舎などに重装備の軍隊、警察官を8万人以上派遣し、治安の維持を図るようであるが、選手や五輪関係者は、宿舎と競技場の往復以外には、出歩くこともできなくなるであろう。
 おまけに、デング熱・ジカウィルス・黄熱病など、蚊を媒介とするウィルス性の病気や、狂犬病などの懸念材料もある。ゴルフ選手の中には出場辞退者も出ているほどである。
 先月の終わりに、選手村に入った日本選手団の中から、選手村の様子などが報告された。
 選手村は24日に開村したが、水道の水漏れがあったり、トイレの水が流れず、シャワーのお湯が突然水になったり、床も汚れていて、選手が拭き掃除をしたという。オーストラリアの選手団は、「住めるような状態でない」とホテルに移ったそうである。
 このような苦難の中でリオ五輪は行われているが、その苦難を乗り越えてオリンピック・パラリンピックが成功裏に終わることを祈りたい。
 日本も、大地震などの不測の災害や、テロの不安はあるが、ぬかりなく2020年の東京オリンピックを成功させてほしいものである。
 東京五輪はなるべく節約した五輪にしてほしい。八万席の固定観覧席は、維持費がかかりすぎ無駄であろう。一年に何度くらいしか使わない巨大な設備に、莫大な維持費をかけるのは愚であろう。小回りがきく実用的競技場にすべきである。
 競技場の設計、エンブレムで躓きもあったが、今後選ばれた選手は、日蓮大聖人が、「おごる者は強敵に値ひて畏るる心出来するなり」(「佐渡御書」)と示されたように、自分の力に奢ること無く、強い相手に向かって恐れず対し、自分の持つ力を十分発揮してもらいたいものである。
(論説委員・丸茂湛祥)

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2016年8月1日号

オバマ大統領のヒロシマ訪問

 今年5月、オバマ米大統領は米国の現職大統領として初めて広島を訪れ原爆死没者慰霊碑に献花した。オバマ氏は献花後の演説で「71年前、死が空から降り世界が変わった。閃光と炎の壁が都市を破壊し人類が自らを破滅させる手段を手にした。私たちはそう遠くない過去に解き放たれた恐ろしい力に思いをめぐらすために来た」と広島訪問の理由を語った。そして「原爆により犠牲となった10万人を超す日本人のみならず朝鮮人、米国人捕虜を含む死者を悼むために広島を訪れた」とことばを続けた。さらに「1945年8月6日(原爆投下の日)の記憶を薄れさせてはならない」、「核なき世界を追求する勇気を持たねばならない」とも語った。
 予定では数分の「声明」であったが、実際には17分に及ぶ「演説」となり、多くの人びとはその話に静かに耳を傾けた。
 この演説で気付かれたのは、原爆投下の謝罪もなく、投下の是非についてもまったく言及していなかったことである。特に「謝罪」については米国世論への配慮もあり、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は、その要求を封印したという。それはなによりもオバマ大統領に広島の地で、核の悲惨さとその現実を肌で感じてもらいたいとの願いから生じた判断であった。
 日本被団協の坪井直(91)代表は、20歳の時に被爆し九死に一生を得た後、あらゆる機会に自らの被爆体験を語ってきたが、その心中には米国に対しての強い憎しみがあるのは当然のことであろう。しかし坪井氏は、米国を責め続けるのではなく、これからの人類のために手を取り合って核廃絶に取り組む道を選択し、被爆地ヒロシマの原爆慰霊碑前でオバマ大統領と握手を交わしたのである。
 当時、私の父も広島市内の寺の住職であったが、その寺は爆心地から1・7㌔の所にあったため、強烈な閃光と爆風により、一瞬にして本堂をはじめすべてのものが崩壊し、家族全員が被爆した。そして当時7歳の姉がその犠牲となった。家族を失った多くの人びとがそうであったように、被爆者の米国への怒り、憎しみは計り知れないものがある。そしてその感情が、相手への攻撃、また謝罪を求める強い怒りとなっていくことも容易に想像できる。
 しかし戦火が止み、時の流れの中で多くの被爆者の心中にあったのは、父もそうであったように、けっして謝罪を求めることではなかったのである。
 戦後71年を経た今日、私たちが目指すのは、相手への攻撃や謝罪ではなく、戦火を交えることのない平和な世界を実現することであり、そのためにこそ「核なき世界」を目指すことが求められているのである。
 坪井氏がオバマ大統領の手を取り「人類のために手を取りあって核廃絶に取り組みたい。被爆者は、あなたといっしょにがんばる」と伝えたこのことばは大変に重いものである。
 この坪井氏のことばをオバマ大統領がどのように受け止めたのかはわからない。また今後のオバマ大統領に何ができるのかも見通せない。しかし今回の「ヒロシマ訪問」が、核なき世界への大きな1ページとなることを心から願うものである。
私たちは、仏教者としてこの世を安穏なる世界、すなわち浄仏国土(清浄な仏の世界)にしていかなければならない使命がある。そのためには、憎しみ、怒りを持ち続け、相手を攻撃し、責め続けるのではなく、まず己の心の在り方をしっかりと見つめてみる必要があると思われる。
71年の時を超え、心あらたに原爆の日を迎えたい。
(論説委員・渡部公容)

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