論説

2020年11月20日号

核禁止条約の発効と立正安国・お題目結縁運動

核禁止条約の発効
 平成29年(2017)7月7日、国連122ヵ国の賛成で採択された「核兵器禁止条約」の批准国が50ヵ国に達したので、来年1月22日に発効することになった。
 核のない世界に向かっての道が開かれることになる。世界人類の平和のために、この上ない悦びである。
 この条約では、「核兵器のいかなる使用も国際人道法に違法し人道の諸原則・公共の良心に反する」としている。その禁止事項には、核兵器の開発、実験、生産、製造、取得、保有、貯蔵などが挙げられている。つまり核兵器に関する全面的な完全な禁止条約である。
 この条約の成立にあたって、核兵器廃絶運動を推進している国際的連合体(ICAN)の活動が大きな役割を果たしたとしてノーベル平和賞を受賞した。
 世界人類平和のための市民運動が、いかに大きな成果をあげることができるかを私たちに示してくれた。
 しかし残念なことに、この条約には世界で唯一の被爆国である日本が棄権して加入していない。

不戦の誓願を世界へ
 このたびの核禁条約には、核保有国であるアメリカ、フランス、イギリス、ロシア、中国の5大国は入っていない。核の傘の下にあるドイツ、韓国も日本と同様に加入していない。
 核を保有しているといわれるインドもパキスタンもイスラエルも、さらに開発を進めているという北朝鮮も入っていない。
 いまや世界には核弾頭が15万発保有されているといわれ、その新型化、小型化が進められているともいう。
 こういう世界状況の中で、核廃絶を進めていくには、今後大変な努力が求められてくるのではなかろうか。
 筆者も核兵器廃絶を祈る唱題運動を推進している中で、核廃絶のためには、核が要らない世界を目指すことだと思っている。それには核を必要としない不戦の世界・戦争をしない平和な世界をつくることだ。
 第1次世界大戦の昭和3年(1928)に、世界不戦条約が49ヵ国が加入して、パリで調印されている。その時、日本も加入し翌年批准が決議された。その後、日本は満州事変、日中戦争へと突入し、第2次世界大戦へと進んだことは明らかだ。
 かつて人類が実現した不戦条約が、今日ほど要請されている時はない。この不戦条約の体験が日本の憲法9条の戦争の放棄につながっているともいわれている。戦争の放棄は日本だけではできない。世界がこぞってこれに向かっていく時が来ている。

立正安国・お題目結縁運動
 第1次世界大戦後の大正10年(1921)、軍備拡大競争が各国で起きている時、軍縮のための「ワシントン会議」が開かれた。その時、我らが先師・石橋湛山先生は、太平洋問題研究会を設立し、世界平和実現のための絶好の機会だと言われて、6項目の勧告をなされた。その1つに「軍備は撤廃の方針を取るべし」とある。
 軍備を全廃することは不戦を誓うことだ。不戦を誓わなければ軍備の全廃もないし、平和もないとうことだ。
 立正安国・お題目結縁運動は、ご本仏の魂であるお題目を唱えることによって、遍一仏土の平和な仏国土・本門の戒壇の事相を顕現することを目的としている。
 日蓮聖人がこの世に出現された意義はここにある。戦争のない平和な世界、核兵器などはいらない不戦の平和な人類世界を目指して唱題していこう。
(論説委員・功刀貞如)

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2020年11月1日号

行動で法華経と日蓮聖人の教えを体現

 危機管理とリスク管理は違う。危機管理とは眼前に起こる事態が、破局と収拾の分岐点にあるとき、安定・収拾の方へ対応策を操作すること。後者は、近い将来に起こるかも知れないと予測される危険なことに対する備えをいう。
 埼玉県神社庁は、大勢の人出が予想される初詣の混雑時での新型コロナウイルス感染を防ごうと、感染症専門家の監修のもとガイドラインを作成し県知事に提出した。(9月24日『埼玉新聞』)
 同県神社庁では、9月から新年参拝に対し感染防止キャンペーンを開始。ポスターやチラシを作成しホームページでも呼びかけを展開している。全国に先駆けた取り組みに28都道府県の神社庁も賛同しているとのこと。
 参拝者を受け入れる側が感染対策を明示し来訪者も協力し互いに予防を徹底することは、安心して祈りを捧げられる環境の整備であり、リスク管理といえよう。
 小稿執筆の10月1日現在での公的機関における危機管理について、筆者が教誨師として携わる川越少年刑務所の対応を紹介する。同施設では3月中旬から6月上旬まで外部からの来所は中止となり、6月中旬より面接などを再開。収容施設に入る前に全身と手指の消毒を行う。面接時、教誨師はマスク、フェイスシールドを使用。被収容者もマスク着用の上、双方の間には、畳1枚ほどの大きさの、衝立タイプのシールドを立て部屋の窓と扉は開放する。千人近い人数が収容される閉鎖空間での感染の影響は大きく、予防対策は継続されている。
 次に別の角度からコロナ禍での取り組み例と課題をみてみたい。自粛生活あるいは他との接触を控えていた期間中に、筆者は人権擁護委員として「子どもの人権110番」電話相談員を担当した。
 テレワーク勤務とリモート授業で、家族全員がずっと家にいる状況下にあって、次第に親子関係がうまくいかず思い悩む母親からの相談があり傾聴。相談者は、インターネットでこの相談窓口を知ったというが、孤立化が進む社会の中には、相談する相手もなく、相談・傾聴の場があることを知らない人は多い。
 また、社会的認知が広がってきた「子ども食堂」は、厳しい感染防止対策が求められると同時に、人手や資金繰りの問題が生じ、存続が難しいところもある。
 他方『中外日報』(9月9日)、『朝日新聞』(9月19日)は、埼玉県川越市の日蓮宗本応寺と天台宗最明寺による取り組みを掲載した。2ヵ寺は、食品を集め配布する「川越こども応援パントリー」に会場を提供するだけにとどまらず、学習格差の解消をめざし、学習支援教室として寺院を開放している。
 ひとり親家庭等医療費、生活保護費などの受給家庭の子どもたちは、毎週お寺で学生や元教員、塾講師らボランティアの先生からマンツーマンで勉強することが可能となった。パントリーの圓岡徹哉代表者は団体設立当初から「貧困の連鎖を断ち切るためには学習支援が最も有効的だ」と考える。さらに協力寺院が増えることを願っている。本応寺の星光照師に話を伺うと「食料品も学習支援も必要とする人はもっといるはず」と歯痒さをにじませていた。
 身業説法とは我が身、己の行動で法華経と日蓮聖人の教えを体現することから現身説法とも称される。コロナ禍で岐路に立つ現代社会にあって、宗祖ならば今・此処で何を為されるであろうか。それぞれの場、その人でなければできないことがある。
(論説委員・村井惇匡)

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