オピニオン

2024年5月1日

老いに寄り添う・老いに向き合う

世界有数の長寿国日本。長寿になればなるほど認知症の割合も高くなり、2025年には日本の認知症患者は700万人になると推定されている。認知症予防財団(1990年設立)では、無料の電話相談「認知症110番」や機関紙「新時代」の発刊、シンポジウムなどの啓発事業、調査・研究事業など認知症に対応する活動を通じ、豊かで明るい希望に満ちた長寿社会の実現を目指している。財団では、認知症に関するさまざまな提言を行い、認知症予防についてはバランス良い食事と適度な運動の推進や、好奇心を持ち、いつも若々しくおしゃれを忘れずに明るい気持ちで生活しようと呼びかけている。興味深いのは患者に対する家族の接し方。理屈より気持ちを通わせること、つまり「説得より納得」が重要と指摘している。またどのような状態でも相手のプライドやプライバシーを大切にと「人格尊重」を強調し、些細なことで怒らず相手の気持ちに合わせた「心のゆとり」も大事という。介護の仕方については、相手にできるだけ多くを語らせ、聞き手は応対しながら微笑みうなずく「コミュニケーション」が信頼を築くという。たとえどんな妄想でも、耳を傾け、相手の話にあわせてうなずくことが「精神安定」に繋がるとか。この場合、言葉を「聞く」のではなく、心の叫びを「聴く」ことがポイントとなる。認知症特有の問題的行動には、叱らず受け止めることが「問題行動防止」につながると教える。認知症はあくまで身体的病気。「自尊心尊重」が本人に一番の安らぎを与えるとアドバイスしている。
現在日蓮宗が推進している合言葉は「いのちに合掌」だ。人間は誰しも老いる。互いに日々老いていく状態を認めあい、どのような状態になっても、互いに寄り添い受け止めあい大事にしあうことが「いのちに合掌」の実践だ。
私たちは、生まれた時から死に向かって生きている。「生きていることは、同時に死につつあること」でもある。生まれた瞬間から、老い、時には病になりやがて死んでいく。生老病死のプロセスで私たちは自分の「いのち」を生きている。かつて「オイルショック」をもじって「老いるショック」という言葉が流行ったが「老いること」は自然の姿なのだ。
私たちの「いのち」は、両親や先祖から頂いた「繋がっているいのち」だ。植物や動物のいのちを頂いてる「生かされているいのち」だ。また目に見えないところで仏祖三宝の守護のお陰で「護られているいのち」でもある。そして、死亡率100%の「限られたいのち」だ。しかし魂は永遠に生きつづける「永遠のいのち」でもある。それぞれの「いのち」は、その時々私たちにとってかけがえのない「いのち」なのだ。
日蓮聖人は「命と申す物は一身第一の珍宝なり。一日なりともこれをのぶるならば千万両の金にもすぎたり」(命というものは、人にとって第1の宝であり、1日でもこれを延ばすならば千万両の金にも過ぎる価値のあるもの。『可延定業御書』)とお説きになっている。また「命と申す財にすぎて候財は候はず」(命という財宝に過ぎた財宝はない。『事理供養御書』)と、いのちを大切にすることをお説きになる。
いのちに合掌における「いのち」とは人間はもとより動物や植物、無機物も含めた森羅万象すべての「いのち」を対象にしている。地球上の生きとし生けるすべての存在が、互いに何らかの「縁」で結ばれ繋がって存在していると考えるからだ。「いのちに合掌」を合言葉に僧侶檀信徒一体となって共に精進していこう。 (論説委員・奥田正叡)

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