ひとくち説法
2024年6月1日号
自分も菩薩?
平成25年から当山で写経会を始めました。
毎月16の日、13時から15時の2時間、『法華経』1部8巻28品6万9384文字の写経をします。
現在は約10人が参加しています。私自身は法務などで出席できなかった月もありましたが、約10年を経て写経し終えました。
写経をして特に感じたのは、いろんな菩薩さまがおられ、菩薩という字をたくさん書いたことです。
菩薩さまというと優しいイメージがあり、手を差し伸べてくださる存在です。
よく「あの人は菩薩さまみたいな優しい人だ」という言葉を耳にしますが、実はお題目を唱える私たちも菩薩なのです。
ですから『法華経』の中の菩薩だと自覚して、自分の修養だけでなく、他人を思いやり、お題目で人に幸せを与えられるよう、心がけて生活してまいりましょう。(千葉県北部布教師会長・瀬川観常)

2024年5月20日号
あの世で
あの世が有りや否や、この問いにお釈迦さまは答えません。悟り(完全なる人格完成)を得るにはあの世があろうとなかろうと関係がないからです。これを無答といいます。しかし法華経にはお釈迦さまの前世の話や、未来世にあなたは仏に成りますよ、と授記(確定認証)をされます。
病に倒れ、幼子を残して黄泉の国に旅立つ母親を見送る者は、あの世から幼子を見護ってほしいと願います。あの世が有りや否やの問いに、あの世はないという答えの入る隙間はありません。故人とどのように繋がっているかで、あの世は存在しています。
日蓮聖人は「日蓮より後に来たり給い候はば(中略)霊山へましまして艮の廊にて尋ねさせ給え、必ず待ち奉るべく候」(『波木井殿御書』)とお示し下さいます。あの世で日蓮聖人にお会いしましたら、ただ今戻りましたと元気にご挨拶できるように、より良い生き方をしていきましょう。
(千葉県南部布教師会長・蓑輪顕寿)

2024年5月1日号
人が行うから価値がある
昨年、将棋界では藤井聡太八冠が誕生し、大きな話題を呼んだ。しかし、その一方で「所詮、AIには勝てないですよ、人ですから」と、冷ややかな意見もあるようだ。
そんな折、公式の場でプロ棋士として初めてAIと対戦し敗れた故・米長邦雄元名人が、対戦前に語った言葉を思い出す。
米長元名人は「負けるつもりはないが、例え勝ったとしても、いずれ名人をはじめとするトップ棋士が負ける時代が必ず来る」と語るも、「だからといってそれが何ですか」と続けた。「自動車より速く走れる人はいない。しかしマラソンを見て感動する。それは人が行うからです。将棋も同じです。人の懸命さに感動があるのです」と。
何事もそうなのであろう。テープでお経を流すのではなく、人が読む。子どもが音程を外しながらでも、懸命に唱えるお題目。人は、先祖は、そして仏さまはそれを望んでいるのだから。
