ひとくち説法
2017年3月20日号
心の持ち方次第で
昨年亡くなられた渡辺和子さんの講演を聴き、大変印象に残ったエピソードがあります。
彼女は20代後半、アメリカの修道院に入りました。その時、与えられた仕事は100人以上いる修道女のために食堂の食器を置くだけの単純作業でした。彼女は「なんで私がこんな仕事を」と思いながら食器を置いていました。そこに、修練長がやってきて「ワタナベ。何を考えてやっているの?」と聞くので、「何も考えていません」と答えたところ、修道長は「あなた。時間を無駄にしているわよ。みんなの幸せを祈りながらやってみては?」と言われたのです。そこで渡辺さんは「お幸せに」と祈りを捧げながら置くようにしてみたところ、心の持ちようが変わったそうです。日蓮聖人も「夫れ浄土と云うも地獄と云うも外には候はず。ただわれらが胸の間にあり」と仰っています。私たちも心の持ち方ひとつで地獄にも仏にもなります。お題目を唱え、いつも仏心を持ちたいものです。
(東京都西部布教師会長・吉田教理)
2017年3月10日号
日々の積み重ね
稀勢の里が初優勝、そして十数年ぶりの日本出身横綱になり、日本中が大喜びしました。
稀勢の里は「支えてくれた人への感謝」を最初に述べ、父親はこれまで肝心なところで勝てない時でも、「毎日一歩ずつ成長しているのだ。」と親子で確認しあってきたこと、一喜一憂することなく決して諦めずに常精進することの大切さを重ねて述べていました。
「毎日毎日の積み重ね」。私たちの信仰も同じですね。信仰は水の如くと申します。火が燃えるようにパッと勢いよく燃えても、その時ばかりではいけない。水がさらさらと流れ続けるように、毎日毎日の積み重ねです。変わらぬ心、衰えぬ心が大切です。明けない夜はない。
日蓮聖人のお言葉に、「法華経を信ずる人は冬のごとし。冬は必ず春となる」とございます。この世で一番心豊かな人、この世で一番心清らかな人を目指して、お題目を唱え続けましょう。
(東京都東部布教師会長・小山内 功静)
2017年3月1日号
敬う心
「敬いの心が大切なんだ!」と、テレビを見ていた我が息子が突然叫びました。番組は「介護現場の虐待」を扱ったものでした。高校で福祉を学び、施設実習も経験した息子にとって、この問題は他人事ではありません。否、これは超高齢社会で暮らす日本人全体にとって「見過ごすことのできない大きな問題」と言えましょう。
〝重労働・低賃金・人材不足・高離職率・多岐にわたるストレス〟など、負の面ばかり強調される介護現場ですが、志を持って、前向きに働いている職員も少なくありません。人と人がふれあい、相手の反応が直に伝わる職場のため、「やりがいのある」との声が聞こえてきます。そして、彼らの根底にある「相手を敬う心」を感じるのです。
礼拝行の実践で成仏した常不軽菩薩は「我深く汝等を敬う」と、誰に対しても「敬い」を示しました。私たちも文明の進化に流されることなく、「他を敬う心」を持ち続けなければなりません。
(北海道北部布教師会長・中村啓承)