ひとくち説法
2024年1月20日号
クラムボン
表題の「クラムボン」は、宮沢賢治の童話『やまなし』に出てくる不思議な言葉…。
時は5月、クラムボンが漂う水底で、幼いカニの兄弟が突然のカワセミの襲来に驚き、自由に泳ぐ魚の命を奪う姿に恐怖します。暫く経って12月、カニの兄弟は成長して、自分の吐く泡ぶくの大きさで喧嘩を始めます。とそこへ、またドブンと襲来が! 一瞬にして恐怖が蘇ります。でもそれは木から落ちてきた「山の梨」でした。驚いたお陰で喧嘩はおさまり、水の中で山の梨は、いい香りを振りまきながら、父さんカニのお酒になっていきました。
5月は「自利」12月は「利他」のお話。賢治の法華経信仰に基づいた、「奪うことより周りに幸せを与える生き方をしたい」というメッセージが込められています。でもクラムボンは、賢治の創造した言葉。今でも答えが出ず、読者の想像を掻き立てる言葉です。ぜひ原作を味わってください。(東京西部布教師会長・山形教亨)