ひとくち説法
2014年11月20日号
子どもを大切にする国を願って
東京の老舗ホテルで雛まつり展を観た時のこと。一泊した翌朝、病弱な乳児期の長男が突然這い這いをした場所だ。絢爛豪華かつ繊細優美な雛文化に接するなかに、江戸後期の這い這い人形が待ち受けていた。ぐらっとくる感動。私は、子どもを大切にする江戸の時空を遊歩していた。
かつての貧しくも多産多死の時代、人は子どもの発育と健康を願い、神仏にそれを祈った。古い墓石や過去帳に嬰子や孩子が何と頻出することか。這い這い人形も、あるいは無数の悲しみを懐いた祈りの表出だったのかもしれない。
さて、日本は近代以降、江戸文化を否定しつつ何を求めたのか。富国強兵策で戦争を煽り、戦後も経済成長を駆り立てた。そして福島原発事故。子どもが最大の被害者ではなかったか。私たちは太古から次世代の「教主釈尊の愛子」を守ってきたはずだ。完璧なエコ社会で生まれた件の人形は野蛮で愚かな2百年後の今をどう眺めているのか。
(宮城県布教師会長・梅森寛誠)
2014年11月10日号
体・心の栄養 お献立
出家以前、料理の道を志していた時、師匠にいつも言われたことがある。献立を作る時には、法則がある。五味、五方、五色、五季、真心。五味とは苦味甘辛酸塩、五方とは生焼煮揚蒸、五色とは白黒青赤黄、五季とは春夏秋冬土用。これらをそれぞれに取り合わせて食する人のために、真心の旨味を加えて、その人の体調にあった献立を作成する。体の栄養はこの料理で頂くことができるが、心の栄養はどこから頂くか。
それこそ仏さまの法則のお献立、南無妙法蓮華経だ。28品の代表をなす素材と6万9千384あるといわれるお経の文字をもって、四季折々に「とうし和合」し、諸々の経方に依って、如き薬草の色香美味、皆悉く具足せる最高の醍醐味である主食のお題目。心一杯頂いて、日々の信仰に精進し、今日も1日、色も香りも、味わいよき、法華経で作ったお献立。両の手あわせて感謝して、頂きます、お題目。ありがとう、お祖師さま。
(愛知三河布教師会長・河合海延)
2014年11月1日号
想いが現実をつくる
8年前、知り合いがいないお寺に入った頃の私は自己中心的で心が曇っていて、空回ってばかり。お寺を出ようかと師匠に相談すると「お寺は住職のものじゃない、檀信徒や地域のものだ」と一喝され、掲示板に「地域の誇りとなるお寺を目指します」と貼り出し、お題目を唱え始めました。
すると見えなかった町の素晴らしさや、お寺の素晴らしさが見えてきて8年経った今、周りにお題目を唱える笑顔の人が溢れていました。「私はここに呼ばれたんだ。この場所でお題目を弘めることが私の役目なんだ」と受け入れ、想いが変わることで周りの現実が変わって行くということを教えられました。人生は色々なことがあります。でもそんな時だからこそ、心からお題目を唱えて、曇った心を綺麗に磨いて、水の流れのように生き続けて行くと、必ず現実の世界が浄土の世界に変わっていきます。一緒に心を磨くお題目を唱え続けて生きていきましょう。
(宮鹿沖布教師会長・吉田憲由)