オピニオン
2024年6月20日
心の声を聴く
夫の7回忌を迎えた夫人がいました。
家族によると夫を亡くした頃の夫人は、外出も笑顔も少なくなり、心配した友だちが旅行や食事に誘うものの仏壇から離れなかったそうです。
そういったなか、コロナ禍が落ち着いたこともあり、2歳の孫と会う機会ができたため、ひさびさに皆で近所の蕎麦屋に出掛けたらしいです。すると蕎麦屋で夫人が突然、笑い始めました。理由を聞くと、若い頃、亡き夫と蕎麦屋に行った時の出来事を思い出したといいます。夫はミョウガが苦手だったのですが、残すのが恥ずかしくて無理に食べたら渋い顔を隠せなかったそうで、2人で大笑いしたのだとか。「お父さんは人を笑わすことが大好きだったの」とも。笑顔を取り戻した一家は、家族皆で7回忌法要を営むことができました。
「聴く」は心の声を傾聴し、ありのままに受容することです。亡き人との思い出話にも悲嘆から人を救う道があります。(埼玉県布教師会長・山口剛道)