オピニオン
2024年5月1日
人が行うから価値がある
昨年、将棋界では藤井聡太八冠が誕生し、大きな話題を呼んだ。しかし、その一方で「所詮、AIには勝てないですよ、人ですから」と、冷ややかな意見もあるようだ。
そんな折、公式の場でプロ棋士として初めてAIと対戦し敗れた故・米長邦雄元名人が、対戦前に語った言葉を思い出す。
米長元名人は「負けるつもりはないが、例え勝ったとしても、いずれ名人をはじめとするトップ棋士が負ける時代が必ず来る」と語るも、「だからといってそれが何ですか」と続けた。「自動車より速く走れる人はいない。しかしマラソンを見て感動する。それは人が行うからです。将棋も同じです。人の懸命さに感動があるのです」と。
何事もそうなのであろう。テープでお経を流すのではなく、人が読む。子どもが音程を外しながらでも、懸命に唱えるお題目。人は、先祖は、そして仏さまはそれを望んでいるのだから。
