オピニオン
2021年5月10日
親に申し訳ない
昨春、私は自分の身体の一部とお別れをした。17年前に医師から「胆石がある」と言われていたが、強い痛みがないためそのままにしていた。否、そのままではない。手術での胆嚢切除を嫌い、「効く」というお茶や生薬を飲んだりもした。しかし、自分の意志に反し、石はどんどん成長した。
覚悟して専門医を訪ねると、「単孔式腹腔鏡下手術で胆嚢を取るので日帰りでも可能」とのこと。医療の進歩に驚嘆し、長年の不安は吹き飛んだ。
〝胆嚢〟と過ごす最後の夜、彼に好物を振る舞い、60年余の労に「今までありがとう」と深謝。ささやかなお通夜、否、お別れ会を独りで営んだ。手術当日入院、翌朝退院。経過は良好である。ただ「父母に申し訳ない」と、今になって思う。親が身を削り、生み育てた〝この身体〟だから…。
コロナ禍の中、お祖師さまの「我が頭は父母の頭、我が足は父母の足」の金言が心に響き、命の継承を痛いほど感じた。そんな出来事であった。
(北海道北部布教師会長・中村啓承)