オピニオン
2021年3月10日
猫の恩返し
彼岸や施餓鬼会に参加しては、多くのご先祖に塔婆供養を重ねてきたSさんは、国道45号線沿いで民宿を営んでいました。Sさんは、行き交うトラックなどに轢殺された猫の遺骸を見捨てて置けず、丁寧に葬っては当山で塔婆供養をしてきました。幾匹もです。ある冬の寒い日、来山してのこと。「お上人さん、今朝、明け方夢を見ました。私が狐の首巻きのようなものをして温もっています。でもよく見ると猫だったのです」。私はこう応えました。「鶴の恩返しならぬ、猫の恩返しですね。Sさん」。「そんなことがあるんですね」。
日蓮聖人は、「丈六の卒塔婆をたてて、其面に南無妙法蓮華経の七字を顕しておはしませば、北風吹けば南海の魚族、その風にあたりて大海の苦を離れ、東風きたれば西山の鳥鹿、その風を身に触れて畜生道を免れて都卒の内院に生まれん」(『中興入道御消息』)と、卒塔婆供養の功徳を述べておられます。
(岩手県布教師会長・三浦恵伸)
