論説

2017年12月20日号

ノーベル平和賞と立正安国・お題目結縁運動

 ICANへノーベル平和賞
 国際NGO(非政府組織)「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が今年のノーベル平和賞を受賞することになった。
 今月の12月に、ノルウェーのオスロで授賞式が行われる。この授賞式にはICANのメンバーとともに、被爆以来72年間人類の悲願である核廃絶運動をリードしてきた広島・長崎市長や被爆者代表も出席するという。
 この度の授賞理由には、「ICANが国連での核兵器禁止条約採択の強力な推進役を果たした」とある。
 その核兵器禁止条約の成立によって、人類の壊滅的な未来を警告し、核兵器禁止という画期的な努力を行ったとある。
 また核拡散の国が増えて、核兵器の使用の危険が高まっている世界情勢のなかで、核兵器のない世界への真剣な取り組みを核保有国に求めているとある。
 さらに核兵器廃絶に向けての新たな気運も高めて、世界兵のために貢献しているとある。
 現在、北朝鮮の核実験、ミサイル開発による国際平和への不安が広がるなかで、国連で核兵器禁止条約が採択され、それの推進役となったICANがノーベル平和賞を受賞したことは、私たち世界人類にとって、時宜に適していて、本当に悦ばしいことである。
人類民主主義の潮流
 ICANは核兵器廃絶を目指して、2007年にオーストリアのウィーンで発足したNGOの連合体である。平和や軍縮、人権などをテーマに取り組んでいて、101ヵ国470団体で構成されている国際非政府組織である。
 日本のNGOピースボートもその参加団体の1つで、被爆者や日本の他のNGOとも連携して、条約交渉を支えてきたという。
 ICANは、対人地雷禁止条約(1997年成立)や、クラスター弾禁止条約(2008年成立)のために活動した有志国やNGOの活動をモデルにして人類悲願志向の運動を目指してきたという。
 大国主導の国際政治が、人類民主主義の流れに変わってきているのではないだろうか。この流れをぜひとも核兵器廃絶への強い流れにしていきたいものだ。
 それには核兵器廃絶の使命を担っている日本が、その気になって前進していくことだ。
 広島で被爆し、世界中で体験を語り続けているサーロー節子さんは、「新しい章がこれで開ける。また一歩ずつ前進します。すべての核兵器をなくすまで」と語っている。
立正安国・お題目結縁運動
 宗門は降誕八百年を目途に立正安国・お題目結縁運動を展開している。
 日蓮聖人がこの世にお生まれになったのは、人類に法華経の教えに目覚めることを示されるためであった。
 法華経の教えは、私たちにこの世での生き方を示している教えである。ご本仏か尊いいのちをいただいてこの世に生を受けた私たちは、「世のため人のため、世界平和のためになって幸せにあんる」ことが生きる目的である。
 幸せになる原点は何かといえば、この世が平和でなければならない。
 平和であってこそ、世のため人のためになって、私たちの天授の使命を果たすことができる。
 『立正安国論』に説かれている、「汝すべからく一身の安堵を思はば、先ず四表の静謐を祈るべきものか」のお言葉を忘れてはならない。
 立正安国・世界平和の祈りに徹してお題目を唱え、降誕八百年のご聖日を、世界平和・国土安穏のなかで迎えたいものだ。
(論説委員・功刀貞如)

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2017年12月10日号

グローバリズムの復権を祈る

 年の瀬も迫り、あと20日で平成30年を迎える。平成もあと1年と少しで改元されることになった。
 天皇陛下の退位のご意思は、先般開かれた皇室会議で正式に確認され、御退位が平成31年4月30日、改元が5月1日に決まった。
 1つの時代が終わり、新しい時代が始まるのである。平成年間は、後世の歴史から、どういう時代であったと総括されるのであろうか。
本年は、西欧世界に、度重なるテロが起こり、市民が多く命を落とした。シリアで建国を宣言したISIL(イスラム国)と称されるイスラム過激派組織が各国でテロ事件を起こし、社会不安を高めた。
 世界的にナショナリズムの台頭が目立った。民主的グローバリズムという、世界が目指してきた普遍的理念が、後戻りをし始めたのである。
 イギリスは国民投票でEU離脱を決めた。シリアなどから入ってくる難民が、イギリス人の雇用を奪い、医療・年金・教育などの社会保障制度を食いつぶしているとの反移民感情が作用したとされている。
ドイツでは選挙があり、メルケル氏率いるキリスト教民主・社会同盟が第1党を守ったが、中東・アフリカからの難民受け入れを強く反対する右派政党が党勢を伸ばし、一気に第3党になった。
 オランダでは3月の選挙で極右の自由党が第2党になり、ここでもナショナリズムが勢力を伸ばしている。
 フランスでは中道・独立系のマクロン氏と極右政党自由党のルペン氏が決選投票を行い、マクロン氏が勝ったが、ルペン氏が3分の1の票を得た。
 ロシアのプーチン大統領やトルコのエルドアン大統領のような強権的ナショナリストの指導者が支持される傾向が世界に広まっている。
アメリカでは、共和党のトランプ氏が、大統領選に当選し、トランプ旋風を巻き起こしている。「アメリカ・ファースト」をモットーに、周囲の意見を余り聞かずに、政治を進めている。
就任後すぐイスラム圏7ヵ国出身者の入国を禁止する大統領令に署名した。大統領と意見が対立、いったん引き受けた重要ポストを辞任したり、引き受ける人がいなかったりで、政府の中枢がまだ固まっていない。
通商政策ではTPP(環太平洋経済連盟協定)からの離脱を表明、また地球温暖化対策のためのパリ協定離脱も
表明している。
 アメリカは、中国に次いで2酸化炭素排出量が多い国で、地球の温暖化を進めないために、重要な役割を果たすべき国なのであるが、トランプ氏は「米国第一」のもと、グローバルな立場を見失いつつある。
平成29年の国際問題では、何と言っても北朝鮮のミサイル発射と、核弾頭の実験(ことによったら水爆実験?)が大きく取り上げられるであろう。
 ICBM(大陸間弾道ミサイル)の大気圏を出た弾頭が、再び大気圏に突入しても破壊されない技術を完成させたようで、米国の基地のあるグアム島が射程距離に入っているらしい。何度か北海道の上空を横切って実験が行われたことで日本にも不安が広がった。
 大都市では防災無線をつかった「Jアラート」(全国瞬時警報システム)が作動し、都市部では何度か避難を求めるサイレンが鳴り響いた。
金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄の金正男氏がマレーシアのクアラルンプールで暗殺されたり、側近が処刑されたという報道、庶民が大変抑圧された生活をしているという報道を目にすると、自国中心主義の怖さを感じるのである。
  法華経寿量品に「薬発し悶乱して地に宛転す」と有るが、人類何千年の歴史の中で見つけ出した、最大多数の最大幸福、差別のない社会の構築という良薬が、ナショナリズムという怖い薬に変じ、人びとを宛転させないように願いたい。
 来年こそグローバリズムが復権し、世界平和、万民和楽が実現することを祈りたい。(論説委員・丸茂湛祥)

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2017年12月1日号

仏さまの「休息のススメ」

 オリンピックを3年後に控え、再開発が加速化する首都東京では、高層ビルやマンションの建設ラッシュが続いている。また大手企業を中心に徐々に景気回復を見せるなかで、多くの職種で人手不足が叫ばれている。
 このような状況は、活気ある今日の日本の姿として目に映るが、一方では憂慮すべき事態も起こっている。
 実際、新国立競技場の建設工事においては、当初の計画の見直しもあり、着工が予定より1年2ヵ月の遅れとなった。更に人手不足から工程が遅れ、長時間労働を強いられることとなった作業従事者には実に過酷な現場であるという。そんな状況のなか、新人にもかかわらず2倍の業務を任され「身も心も限界」とのメモを残し自殺した若い現場監督があった。
 また、広告大手の企業では、新入社員の若い女性が過酷労働から自殺するという事件が起こり、裁判を通してあらためて企業側のその常態化した雇用体質が問われることとなった。
 このような事件は、まさに氷山の一角に過ぎず、違法残業、長時間労働、パワハラ、過労死といったことばに象徴されるように、現場の労働者に多大な負担を強いて繁栄する姿は、今日の日本の負の一面でもある。 
 個々の労働現場では、その置かれた立場や状況は異なり、経緯もさまざまである。しかし、なかにはこころが疲弊しながらも休むことなく働き続け、がんばり続けた結果、自らを追い込むこととなり、ついにこころが折れてつらい結末を迎える場合も少なくない。
 もとより日本人の勤勉さは世界有数ではあるが、時にそれは「休息」を犠牲にして成り立っているところがある。休日返上での働きが美徳とされ、それを当然と考える社会のなかでの今日の過酷労働の現実がある。
 この休息について、あらためて考えさせられる仏さまの話がある。それは、法華経の喩え話として知られている「法華七喩」の中の「化城宝処の喩」である。
 この話では、真理を求めて長い旅をする旅人の傍に優しく寄り添う仏さまの姿に、その知恵を見ることができるが、この物語は次のように展開する。
 「宝(正しい教え)を求めて旅に出た人たち(我々凡夫)であったが、その道は遠く、また大変に困難なもの(人の世)であった。彼らは長旅の途中で疲れ果て1歩も進むことができなくなってしまう。いくらリーダー(仏さま)が励ましても彼らは歩みを進めようとはしない。そこでリーダーは神通力を使って幻の城を造って見せ、彼らに休息をとらせることにする。人々はその城内でしばしの休息を得て元気を取り戻す。なかにはここが目的地だと思い込む者もいたが、リーダーから本当の宝のある所はもうすぐであると告げられ、その幻の城で元気を取り戻した旅人は再び勇気を持って宝を求める旅に出る」
 これは正しい信仰へと導く喩え話ではあるが、視点を変えると多様な解釈も可能で、長い人生の旅には休息も不可欠という仏さまのメッセージとしても受け取ることもできる。
 私たちは苦しい時、迷った時、進む道を誤ってしまいがちである。現実には非常に難しいことではあるが、まず一旦立ち止まり、休みを取ることも必要ではないか。また私たちも、休むことはけっして罪悪ではないと理解し、自らを追い込んでしまいがちな人からのサインを敏感に感じ取り「がんばらないこと」、そして「休むこと」の必要性を伝えていくことは私たちにもできることであり、それはまた仏の慈悲とはいえないだろうか。
(論説委員・渡部公容)

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