オピニオン

2023年7月20日

どうする宗門後継者

日蓮宗総本山身延山久遠寺がある山梨県身延町の人口は、現在、約1万人ほどである。昭和23~24年頃のピーク時には、4万人いた人口が右肩下がりで減少し、35年後には3600人になるという。一昨年度の出生者数は27人。生産年齢人口は約4千人強。身延山の門前町の老舗饅頭屋や旅館も後継者がいないということで店をたたんでしまった。この傾向は今後も続くことが予想される。
日本全国の多くの農山漁村地域では過疎化(身延町・南部町・早川町も過疎地指定)が進み、産業・教育・医療など、その地域における基幹的生活条件の確保に支障を来すような状態になっているという。昨年、過疎地域の数は885の市町村となり、初めて全国の5割を超えたと総務省は発表している。
この事象は、他人事ではない。コロナ禍での宗教儀礼簡素化(例=1日葬の増加、7回忌以降法事の減少)という新たな状況も加わり、少子化による後継者不足は日蓮教団、否、仏教界にとって今後ますます見逃すことのできない大きな課題となってきている。今、全国に仏教寺院は7万7千ヵ寺あり、そのうち住職がいない寺、代務住職の寺は1万7千ヵ寺を数える。15年後には空き寺を含めその数は2万7千ヵ寺になるという。
日蓮宗では、日蓮宗の僧階を得、住職となるためには35日間の必修修行、「信行道場」を修了しなければならない。身延山では今年4回(期)(第4期は外国籍を有した者のみの道場、初めての試み)の信行道場が開設され、修了と同時に僧階が叙任される。新たな日蓮宗教師の誕生ということになる。ところが、ここ10年ほど年間を通して修了者が100人に満たない状況となっている。団塊世代の末に生まれた筆者は昭和48年の夏に第2期信行道場へ入ったが、入場者は156人であった。
また年間総計100人以下の入場者にあって、宗門の僧侶養成機関である立正大学あるいは身延山大学の仏教学部に在籍・卒業者は5割を切っている。両大学仏教学部で所定の僧階を得るための講座の単位を取得した者、卒業した者には無試験検定資格を有して信行道場へ入ることが許される。確かに、日蓮宗宗制では試験検定に合格することが本筋ともいえるが、一番合格率の高い乙種普通試験のみを受け、信行道場のみで修行を終える僧侶(教師)が増えているという。
この状況は致し方のないことともいえる。少子化社会、後継ぎがいないという時代にあって、門戸は広くして僧侶の数を確保し、教団を支える、地方を支えるという考え方は首肯できる。寺の収入だけでは生計が成り立たず他の職業を兼ねながら必死に寺を護持するという住職の真摯な姿勢には本当に頭が下がる。また地方の日蓮宗寺院過密地域では代務住職を数ヵ寺兼務することも多い。
他方、信行道場を出た若い僧侶が志高くしていざ郷里へ帰っても、その地域が過疎化で生計が立ち行かない、あるいは檀信徒の教化、地域への社会貢献といっても人が存在しないからままならない、というケースがあることも仄聞する。
宗門後継者不足への対策例をひとつ考えてみた。仏教、日蓮学に興味を持ち、身延山大学へ社会人(一般企業のOB、小企業経営者、福祉施設経営者など)として編入学し、まさかと思ったが信行道場へ入り、今では立派な僧侶として活躍している人も数人存在する。このような法華篤信の人たちを悠々自適の生活が送れる過疎地へ派遣しては如何だろうか。ますますの少子化社会の到来に、どうする宗門後継者。 (編集委員・浜島典彦)

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