論説

2023年1月20日

「いのちに合掌」を合言葉に

 日蓮宗の布教方針「いのちに合掌」の「いのち」とは、どのような「いのち」でしょうか。基本的には、不軽菩薩が「私は深く汝等(あなた方)を敬います。皆さんは菩薩道を行い成仏します」と但行礼拝した「汝等のいのち」と考えられます。他方、現代社会で日蓮宗の布教を実践する場合、さまざまな「いのち」に合掌していくことが求められます。最新の先端科学により植物や生物の驚くべき「いのちの進化」が紹介されました。
 シロイヌナズナ(キャベツの一種)は青虫に食べられると、別の葉に信号を送り毒物質を作り自分を守ります。さらに別のシロイヌナズナにそのメッセージを送ります。危険を敏感に感じ、離れている別のシロイヌナズナと会話をして危険を伝えていたのです。世界一堅い甲羅をもつクロカタゾウムシは、ナルドネラ菌で甲羅を堅くし、外敵から身を守る一方、ナルドネラ菌が住む場所を甲羅の中に作って共生しています。このように植物や昆虫の進化の過程に心の作用があり、信号で会話していることが解明されました(「NHKスペシャル超進化論」)。
 日本では「いのち」をどのように考えてきたのでしょうか。辞典を紐解いてみましょう。「イは息。ノは格助詞。チはイカズチ(雷)やヲロチ(大蛇)のチと同じで霊力の意。イノチは霊力を表し、自然物のもつ息(=生)の力の意か」(『古典基礎語辞典』)。「いのち【命】と『生の霊』の意であろう。『い』は『生き』『息吹き』の『い』。生命の直接的なあかしの息吹を以て生命の義とする。それは各民族語の間で共通する観念で、spiritやanimalは、みな『いきするもの』を意味した」(『新訂字訓』)。「いのち『息の内の約』」(『大言海』)。このように「いのち」を、「息をしている地球上のすべての自然物や生き物の総称」と考えてきました。
 現在、地球上には哺乳類6000種、植物40万種、昆虫100万種が生息しています。多くは「いのち」をもち息をしています。不軽菩薩が但行礼拝した「汝等のいのち」はもちろん、あらゆる「いのちとその営み」に合掌していくことが布教方針「いのちに合掌」の実践ではないでしょうか。
 仏教では石や草木など自然環境を心情のない「非情世間」、心情をもつ生き物を「有情世間」に分け、「有情世間」のみ成仏すると考えてきました。後に比叡山を中心に「草や木の播種・開花・育生・結実の成長過程も修行成仏の姿である」という「草木国土悉皆成仏論」が展開されました。しかしこの理論には心情のない草木が、修行し悟って成仏することは理解しがたい、という疑問が残りました。対して日蓮聖人は「法華経に内包されている一念三千の仏種でなければ、有情世間の成仏も、木像や画像を本尊とするということも、名ばかりで、真実とはならない」(『観心本尊抄』)と、一念三千の仏種(=お題目)を下種すれば有情世間も非情世間の木像や画像の仏像も成仏し、ご本尊として具現できると述べられ、お題目こそ有情世間と非情世間を一体化する最上の教えと説かれました。
 法華経如来寿量品には「常に此に住して法を説く」とあります。本仏釈尊は、久遠の昔から未来永劫にわたり常に娑婆世界で法華経・お題目を説いています。現世に生きる私たちも、久遠の昔から常に法華経・お題目を受け続けてきました。たとえそのことを私たちが忘失した時でも、仏さまは常に法華経・お題目を授け(下種)続けています。私たちがお題目を唱える時、自ら成仏し、同時に一切の「いのち」にお題目が下種され成仏します。共に救い救われる世界が立正安国の世界です。「いのちに合掌」を合言葉に精進しましょう。 (論説委員・奥田正叡)

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