オピニオン

2022年10月1日

仏法の西へ帰るは瑞相なり

「物言えば唇寒し秋の風」。爽やかな秋風にコロナを忘れ、静かに物思いにふけようとしても、世情はそれを許しません。あらゆる分野で不祥事や疑惑が現れ、物言えば揚げ足を取られ、黙すれば不誠実だと詰られ、葬式云々、メディアの狂騒は大切な秋の静寂を壊していきます。この秋風の中、日本の将来を危ぶみながら、日蓮宗の未来にも思いを馳せてみましょう。
地方の過疎はコロナ禍によって加速し、お盆やお彼岸でご先祖に関心の高まる時期に離檀や墓じまいの相談が増加しました。
私の街の長崎県島原市は江戸時代の城下町として、昭和期までは地方の中核都市として大いに栄えていました。しかし、その歴史も今や風前の灯です。
島原半島の島原藩は九州の臍や胃袋と呼ばれ、西国大名の目付と天領長崎の差配を担う重要な役目と格式を負っていました。200年に及ぶ親藩格の松平家の治世は、江戸直結の政治、経済、文化で賑わい、7万石の小藩でありながら、自由闊達な空気の充満する九州西端の城下町だったのです。その証の1つに、各藩では気を使った不受不施への取り締まりを逃れて、明治以後名乗り出た信徒により、島原には九州唯一の不受不施派の寺院が創建されました。キリシタン弾圧の江戸初期、不受不施の日奥上人の対馬流罪も関係あるのかも知れません。島原の隣藩大村藩は切支丹大名として断罪は免れないところでしたが、法華信徒・加藤清正公の力添えもあり、全藩を挙げて法華宗に改宗することで幕末まで存続します。この歴史は教誌『正法(171号)』(秋彼岸・御会式号)の「ぶらり門前町」、大村市本経寺の稿で詳しく紹介されています。この大村法華の本経寺は慶長13年(1608)の開創です。開堂法要には43歳で身延山法主に抜擢され、江戸初期の法華宗の存続に多大な貢献を残した寂照院日乾上人が西下しています。当時の教団の意気込みと、その後の大村法華の発展を示唆しています。西の果て長崎はその頃から文化や経済など日本の玄関口になりました。このことも次号『正法』の同コラムをご参照下さい。
今月8日、十三夜の錦秋、島原城では「島原城薪能」が開催されます。当寺はその事務局を務めています。市民が江戸時代から続く格調高い薪能を復活させ、島原城の歴史を伝える大事な催事として継承しています。今年は「宝生流」の当番で、40回の記念として「宗家」が出演します。祝い能「乱」が上演されます。地方都市での宗家の出演は大きな力となり、縮小していく過疎の街での伝統文化の継続の追い風になります。私たち伝統教団の役割は地域社会の発展に寄与することでもあり、寺院は地域一体となって活動することを求められています。
日蓮聖人は晩年残された『諌暁八幡抄』の文末に「月は西より東に向へり。月氏(天竺)の仏法の東へ流るべき相なり。日は東より出ず。日本の仏法の月氏へ帰るべき瑞相なり。(中略)日は光明月に勝れり。五五百歳の長き闇を照らすべき瑞相なり。(中略)我が弟子ら励ませ給え」と西へ向うことの大切さを述べておられます。長崎には先月やっと新幹線が開通し、西へ向かう日本の方向性が示されました。混迷する世情、力を増す隣国を目前にする西の端から国民は目を離せなくなります。だからこそ、西の果ての寺院の存在意義は多大です。日蓮聖人を心底敬愛し、その歴史と利益を大事に信仰に励む地方の檀信徒のために、お祖師さまも西下して瑞相を示して戴きたいものと切に願っています。
(論説委員・岩永泰賢)

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